富士通 個人識別できないデータ利活用で新薬開発や個別化医療を支援 クラウド型プラットフォーム販売
公開日時 2023/03/29 04:50
富士通は3月28日、診療データや健康データの利活用に向けてクラウド型プラットフォーム「Healthy Living Platform」の販売を開始すると発表した。医療機関の電子カルテシステムに蓄積された診療データを、特定の個人を識別できないデータに変換。製薬企業が行う新薬開発や医療機関における個別化医療の促進などに利活用できるよう支援する。また、患者自身が診療データをスマートフォンで閲覧できるデータポータビリティサービスや、医療機関がプラットフォーム上で共有した診療データを高度に分析するサービスなども展開する。
同プラットフォームは、電子カルテシステムに蓄積された診療データを次世代医療情報標準規格である「HL7FHIR」(Fast Healthcare Interoperability Resource)に変換して標準化した上で集約する。患者個人が持つバイタルデータや歩数、消費カロリーなどの健康データを本人同意のもと保存することも想定している。一方、セキュリティ対策として同社は、厚労省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」など各種ガイドラインに準拠し、Microsoft のクラウドコンピューティングプラットフォーム「Microsoft Azure」を利用している。
◎医療機関における薬剤処方、治療選択など支援 臨床研究や論文作成の効率化にも寄与
医療機関における活用シーンについて同社は、複数の医療機関の診療データや患者の健康データなどを参照し、患者の病歴や日々の体調、アレルギー、体質など、詳細な健康状態やペイシェントジャーニー全体を把握することで、適した薬剤の処方、治療方法の選択といった個別化医療を促進できるとしている。さらに、データ規格の標準化によりデータの収集や加工、クレンジングにかかる時間を短縮できるため、臨床研究や論文作成を効率化に行うことが可能となる。
◎匿名加工データで医薬品の効果や副作用を検証 新薬開発の期間短縮や成功率向上
一方、製薬企業に対しては、治験患者から得ている臨床検査データだけでなく、「実診療の匿名加工されたデータによって、医薬品の効果や副作用といった有効性および安全性の検証をより詳細かつ効率的に行うことができる」としており、新薬開発の期間短縮や成功率向上および承認薬の適用拡大にも応用できるとしている。なお、同社としては、AIやIoTを活用した予防医療にも取り組むほか、保険会社や医療機器メーカーなどの様々なウェルビーイング企業とも連携することにしており、医療データの利活用によって社会に新たな価値を創出するデジタルヘルスエコシステムの実現を目指す方針だ。