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ファーマ・インサイト MRとコンペティティブ・インテリジェンス

公開日時 2009/11/06 04:00

 製薬会社のMRの仕事は、いわゆる「一般的な営業の仕事」とは異なります。病気を抱える患者様に必要な薬が処方されるようドクターに対して、適切に情報を提供することで、ひいては社会に貢献するという、専門的かつ知的な、担当者にとっても充分に満足いく業務であることでしょう。

私は体育会系の営業出身ですので、他社と日々競争する、苦しくも楽しい小人数チームの雰囲気を良く理解しています。毎日自分の限界と戦いながら、数字を上げるよう必死で努力する中、どうやって自分の担当エリアの競争相手を乗り越えるか…と考えながら仕事をしていると、また改めて元気が出たものです。MRの皆さんも、ドクターや患者様への貢献によって得られる達成感に加えて、「競争相手がいるからこそ日々の仕事がもう一段楽しくなり、明日のやりがいにつながっている」と感じたことはないでしょうか。

もし「競争相手がいるからこそ面白い」と意識するならば、その競争相手に関する情報は充分得られているでしょうか? 孫子の有名な兵法に「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」とありますが、これは企業間競争でも通じることだと思います。競争相手のポジショニング・メッセージングがどう表現されているかを知らなければ、自社の差別化は出来ません。相手企業の内部事情をある程度分かっていないと、チャンスを逃してしまうこともあります。もし相手企業が合併・リストラ・組織、担当変更などをしているなら、必ず混乱が起きる時期があるはずです。自社で何か大きなイニシアチブを開始するときは、そのタイミングに合わせて戦略を実施するのです。 

ここで 『コンペティティブ・インテリジェンス』についてお話しましょう。初耳の方は、CIAやジェームズボンドのMI6を想像するかもしれませんね。残念ながらそこまで格好良いことは書けませんが、コンペティティブ・インテリジェンスは、営業でもマーケティングでも非常に重要なものです。これは違法行為やスパイ活動のような特別なことに限らず、既存のルートから上がってくる「インプット」や「データポイント」をきちんと整理されたプロセスで処理し、「使える情報に変換すること」を意味します。 営業支店レベル、エリアマネジャーレベル、あるいは本社のブランドマネジャーレベルにおいても、明日から少しでも有利な立場になるために、『コンペティティブ・インテリジェンス』の導入を考えてみてはいかがでしょうか? 
そのためのステップとして、下記の3つを推奨したいと思います。

■ポイント1:競争相手を特定する
まずは一社、競争相手を選びます。しかし相手企業が大手であればあるほど、自分の担当エリアと関連性の低い情報も沢山存在しています。そちらに時間をとっても仕方ありませんので、たとえばある疾患領域、製品群及び担当者など、注目する範囲を限定してそこに集中しましょう。

■ポイント2:WEBを活用する
競争相手となる企業を決定したら、その会社のWEBサイトにRSSフィードが設定できれば設定してみて下さい。まず最新のIR情報(発表資料)をチェックすることが基本です。グーグルなどの検索オプションでファイルタイプをPPT(=パワーポイント)及びPDFに絞り、企業名などを入れてみてください。アナリスト会議や業界の集まりなどで公開されるプレゼン資料も見つけられるはずです。

■ポイント3:散在する情報を整理・共有するプロセスを作る
大げさな取り組みは必要ありません。A4のファイルを一冊用意し、片方に相手企業が出版する資材、ハンドアウト、新聞や業界紙の記事などをまとめておき、もう片方にはフィールドから聞いた「噂」やドクターのコメント、形にはなっていないが長い目で見たトレンドから読み取れる情報などのインプットを時間軸に沿って手書きでメモしておきます。これを週一の会議で10分だけチームで話し合い、共有します。

スタートは以上の3つです。アメリカの医薬品企業の中には、その組織で働いている何万人の社員から徹底的にデータを集めて分析する『コンペティティブ・インテリジェンス』の担当部署を設置している企業もあります。 そこまでは至らなくとも、せっかく競争相手を意識するなら、自分の手元にあるデータをもう少し整理して活かせる情報にしてみてはどうでしょうか?


 セミナー風景ジェフリー・シュナック(Jeffrey B. Schnack) 1967 年米国生まれ。 米国とヨーロッパの大学院で国際政治経済学修士およびMBAを取得。1990年来日。外資系コンサルティング会社にて欧米企業のアジア戦略プロジェクトを 実行。その後JR東日本初の海外子会社代表などを務める。スリーロック株式会社は2004年より、製薬企業を対象に営業・マーケティング分野のコンサル ティング及び能力開発プログラムを実施している。
スリーロックHP http://www.3rockconsulting.com 本人ブログ http://blog.3rockconsulting.com/

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