協会けんぽ静岡支部 地域フォーミュラリ導入で薬剤削減効果は最大13億5700万円
公開日時 2018/12/26 03:51
全国健康保険協会静岡支部は12月25日、地域フォーミュラリの導入で年間最大13億5692万円の薬剤費削減効果が得られるとのレセプト分析結果を発表した。地域フォーミュラリの導入により、後発品の使用促進だけでなく、標準薬の普及による薬剤費削減効果も見込む。協会けんぽはデータを基に、地域中核病院に地域フォーミュラリ導入へ向けた働きかけを進める。地域中核病院を核に、保険薬局が地域フォーミュラリを管理することで、薬剤費の削減や医療標準化の実効性を高めたい考えだ。
今回公表されたデータは、日本調剤が協会けんぽ静岡支部から受託した「協会レセプトの分析による地域フォーミュラリ策定に向けたデータ作成及び医薬品実績データ作成業務」によるもの。
①高脂血症・スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、②消化性潰瘍・プロトンポンプ阻害薬(PPI)、③高血圧・ACE阻害薬/ARB、④骨粗鬆症、ビスホスホネート製剤―の4疾患・薬効群に絞り、分析を行った。分析対象となったのは、入院、DPC、外来、調剤レセプト95万8630枚(実患者数15万1171人)。分析対象の4疾患群での総薬剤費は35億4270万円、後発品使用割合は数量ベースで57.9%、金額ベースで37.7%だった。
◎PPIでのフォーミュラリの有用性強調
年間最大13億5692万円の薬剤費削減効果が見込めるとした内訳は、後発品への変更による9億37万円に加え、シミュレーション用フォーミュラリの活用で後発品のない先発品を標準薬へ切り替えるなどすることで、4億5655万円の削減効果があるという。
特に地域フォーミュラリの有用性が高い薬効群は、プロトンポンプ阻害薬だった。薬剤費削減効果は年間最大3億3154万円だが、地域フォーミュラリ導入だけで約8割に及ぶ2億7900万円が削減できるとしている。
◎院外処方でのフォーミュラリ発揮でカギ握る保険薬局
地域への波及には院外処方がカギを握る。協会けんぽ静岡支部企画総務グループの名波直治グループ長補佐は、「院外処方が多いなかで、中核病院、さらには地域保険薬局との連携が重要になる」と話す。
データ分析業務を受託した日本調剤グループは、保険者の実態・課題に即したフォーミュラリの策定・実効策を保険者、健康保険組合に提案している。
日本医薬総合研究所の増原慶壮取締役は2018年9月の本誌取材に対し(Monthlyミクス10月号)、日本調剤グループが保険薬局のレセプトデータを有しており、服薬後のアウトカムを把握できるメリットを強調。そのうえで、「地域フォーミュラリをただ策定しただけでは機能しない。病院や診療所の処方箋を薬局薬剤師がチェックし、実効性を高めることが必要だ」と話していた。
地域フォーミュラリをめぐっては、2017年の中医協総会で議論となり、18年6月に政府が策定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」でも、「生活習慣病の処方の在り方を検討する」ことが明記されている。