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薬価制度抜本改革を契機に各社とも社内改革断行へ MR・営業リソースの見直しも視野

公開日時 2017/12/21 03:52

「薬価制度の抜本改革にかかわる骨子」が12月20日の中医協総会で了承されたことを受け、製薬各社は4月以降の経営への影響分析に着手した。この間の議論で製薬団体が再考を求めた新薬創出・適応外薬解消等促進加算は、政府・与党間で修正協議が行われ、製薬企業へのダメージは一部緩和された。とは言え、同日付の日米欧製薬団体が発表したステートメントを見る限り、影響は甚大だ。一方で、長期収載品の薬価見直しは先発企業のビジネスモデルそのものを直撃する。MRなど営業リソースの配分の見直しは必須で、人財・組織の社内改革が迫られる。製薬企業の構造転換は、薬価制度改革を機に動き出そうとしている。

「長期収載品依存モデルから脱却し、革新的新薬の創出を促進するための効率的・効果的な仕組みへと抜本的に見直す」-。薬価制度の抜本改革骨子案に込めた製薬産業へのメッセージだ。ゼロベースでの抜本的な見直しを迫られた新薬創出等加算だが、議論の過程では、日米欧の製薬団体からイノベーション創出を阻害するとして強い口調での反発もあり、最終段階で品目要件、企業要件を見直した。

これまでの新薬創出等加算の品目要件は、平均乖離率を上回ることを条件としてきたが、今回はこれを撤廃した。新たな品目要件として、①希少疾病用医薬品、②開発公募品、③加算適用品(画期性加算、有用性加算Ⅰ・Ⅱ、営業利益率の補正加算、真の臨床的有用性の検証にかかわる加算)、④新規作用機序医薬品、⑤新規作用機序医薬品の収載から3年以内に収載された品目(3番手以内に限る)であって、当該新規作用機序医薬品が加算適用品であるもの又は別に定める基準に該当するもの(有用性と革新性の程度が当該新規作用機序医薬品と同程度のものに限る)-とした。

一方、企業要件は、①国内試験(日本を含む国際共同試験を含む、実施数)、過去5年間の新薬収載実績(成分数)、②開発公募品、③世界に先駆けた新薬の開発(品目数)―をポイント化し、上位25%は加算係数が1.0、最低点数を0.8とし、それ以外を0.9とした。


◎対象品目は減少 価格維持グループへの該当は15~20社


12月13日の中医協薬価専門部会で、厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は、対象品目が2016年度の823品目から540品目程度に減少するとの見通しを示した。また該当企業は、2016年度実績で約90社が対象になっているとし、価格を維持できるトップグループの企業は15~20社と見通した。企業要件の影響もあり、該当品目以上の影響が製薬企業に出るとみられる。

新ルールに照らし、生活習慣病市場の該当品目を検証する。一例だが、DPP-4阻害薬のファーストインクラスであるジャヌビア(MSD)/グラクティブ(小野薬品)は薬価収載時に有用性加算Ⅱを取得した。これまでの新薬創出等加算では、当該薬剤の薬価乖離率が平均を下回っていたために、加算対象から外れていた。ところが新ルールでは乖離率の考え方が撤廃されたため、品目要件を満たすことになる。同様に、新ルールに照らし合わせると、後続の製品も「3番手ルール」により該当する可能性もある。SGLT2阻害薬は16年度改定で、スーグラ(アステラス)、フォシーガ(AZ)、ルセフィ(大正製薬)、デベルザ(興和)、アプルウェイ(サノフィ)、カナグル(田辺三菱製薬)、ジャディアンス(NBI)――の全製品で同加算が適用されたが、新ルールに照らし合わせると、品目は絞り込まれるとみられる。ジャディアンスは、真の臨床的有用性を検証したデータ公表による加算を取得しており、6番手ではあるものの加算品に該当すると見られている。

ただし、新ルールでは加算額に上限が決められており、平均乖離率を超えた製品については「市場実勢価改定後の価格×(平均乖離率-2%)×0.5」とされており、仮に加算品目に該当しても価格への影響は限定的との見方もある。一方で、ARB・アジルバやPPI・タケキャブのような製品は該当品目から外れると見られている。

◎平均乖離率の撤廃は流通政策にも影響か


新薬創出等加算の要件から、平均乖離率が撤廃されたことで、流通政策にも影響を与えると見られる。これまでは新薬創出等加算品の価格防衛策のひとつとして、高仕切り価を設定する動きも見られた。流通当事者間では新薬創出等加算品の取り扱いについて、これまで積み重ねた経験と実績などで一定の理解が得られたが、今回のルールで平均乖離率基準が撤廃されたことにより、仕切り価設定についての考え方に微妙な変化を与えるとの見方もある。


◎長期収載品の委譲、撤退は加速との見方 これに伴うMR再編も必須


一方、長期収載品については、薬価を段階的に後発品の薬価まで引き下げることが決まったことから、ジェネリックメーカーを交えた価格競争が激化するとの見方が広がっている。これまで先発企業は、長期収載品の情報提供義務の役割を担ってきた。このため当該製品を市場に供給する企業のMRがマーケットに配置され、これが「後発品よりコストのかかる主要因である」と指摘されてきた。今回の新ルールでは、後発品が市場参入したマーケットのローコストオペレーションを推進するため、「先発企業自らが市場からの撤退を判断できる」という概念を導入する。


今回の薬価制度改革では、「長期収載品ビジネスからの脱却」を強く謳っているが、早くも先発企業が自社の長期収載品を別会社に委譲する動きみ見られた。これに加えて市場から撤退も可能になり、こうした動きが加速するとの見方が有力だ。あわせて、先発企業にとっては、革新的新薬を創出するビジネスへの転換が求められることになり、経営者は「集中と選択」というカードを切った人財・組織の再編に踏み切ることになる。こうした動きは自社MRの数をどの程度に再編するかにも通じる。欧米製薬団体のトップは、今回の薬価制度改革を通じ、R&D費用の配分見直しなどに着手する考えを示唆している。長期収載品比率の高い国内内資についても同様に、組織再編は避けられないだろう。まさに製薬ビジネスの大転換は待った無しの状況に追い込まれてきた。

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