富士フイルム アルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」の米フェーズ2で有効性確認 日本でも開発
公開日時 2017/07/20 03:52
富士フイルムは7月19日、軽度から中等度のアルツハイマー型認知症患者を対象とした「T-817MA」の米国でのフェーズ2で、罹病期間が短い患者群(患者全体の中央値2.6年以内)において認知機能低下の進行を統計学的有意差をもって抑制したことを確認したと発表した。日本でも開発中でフェーズ2段階にある。フェーズ3は日本を含むグローバル治験を行うことを検討し、米国では2021年の上市を目指す。
同剤は、グループの富山化学が創出した。神経細胞障害の軽減などの機能を有するシグマ受容体の活性化により、神経細胞の保護や神経突起伸展を促進をすることで効果が期待される。日本での上市予定時期は明かしていない。
富士フイルムは2014年から、米国でフェーズ2(プラセボ対照二重盲検比較試験)を行った。ドネペジル塩酸塩やリバスチグミン経皮システムで治療している軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の患者を対象に、高用量(448mg)、低用量(224㎎)、プラセボに分けてを52週投与。認知機能の評価項目「ADAS-cog」などを主要評価項目として、各群のスコアを比較した。有効解析対象は369例だった。
その結果、「ADAS-cog」スコア(数値が大きいほど認知機能が悪化)において、患者全体では有効性に対する仮説の検証には至らなかったが、診断から投与開始までの期間(中央値)が2.6年以内と短い患者群では、プラセボ群(n=73)と比べ高用量群(n=68)が-3.02と、認知機能の進行抑制が認められ、統計学的有意差を確認した。同社は「これは第III相臨床試験に向けて有効性が期待できる対象患者が示唆されたものだ」としている。
ほか、▽脳脊髄液評価対象患者において、主要な原因物質であるリン酸化タウ(p-Tau)の用量依存的な減少▽MRI評価対象患者全体において、大脳の記憶に関連する領域である海馬の萎縮抑制の傾向--も確認。p-Tau濃度(pg/mL)は、プラセボ群(n=18)で0.29増加したのに対し、低用量群(n=17)では3.94、高用量群(n=24)では7.30、それぞれ減少し、高用量群とプラセボ群との間で統計学的有意差を確認した。
海馬の体積変化量(ml)では、プラセボ群(n=89)0.39減少に対し、低用量群(n=79)0.27減少、高用量群(n=75)0.31減少という結果で、統計学的有意差は低用量群とプラセボ群との間で認めた。