【中医協薬価専門部会 7月26日 議事要旨 24年度薬価改定について「新薬その2」の質疑】
公開日時 2023/07/27 04:50
中医協薬価専門部会は7月26日、2024年度薬価改定に向けて各論の議論を行った。この日は、収載後の評価、収載後の価格調整(市場拡大再算定など)について事務局の説明を受けて、診療・支払各側委員が発言した。本誌は質疑の内容を議事要旨として公開する。
安川部会長:それではただいまの(事務局の)説明に関して、ご質問等ございましたらお願いいたします。はい、長島委員よろしくお願いします。
長島委員:はい、ありがとうございます。資料45ページの論点にある2つの矢羽根についてコメントいたします。1つ目の矢羽根です。薬価改定時の加算について、小児適応、希少疾患などは資料8ページにありますように、ルール上、加算率に2.5%から15%などの幅が設けられています。一方、資料10ページの「薬価改定時の加算の実績」の下側の評価の内訳を見ますと、5%という低い加算率が適用されているケースが大部分であり、それを超える加算はほとんどないという実態が見てとれます。
以上を踏まえますと、例えば希少疾病の中でも極端に患者数が少ない適応が追加された場合や、小児適用の追加のために大規模な小児適応の治験を実施した場合など、しかるべき場合においては、現行ルールの範囲内で、もう少し高めの加算率を適用するなどの運用を検討してもよいのではないかというふうに考えます。
二つ目の矢羽根です。市場拡大再算定につきましては、薬価収載時からの条件の変化を補正するという意味で合理的な制度であると理解しております。一方、上市された後に必要な効能効果を追加していく方向性については、研究開発を健全に行っていくことを支える観点から一定程度許容せざるを得ないことではあります。
しかし、国民皆保険の維持の観点も非常に重要でありますので、これらが両立する視点を十分に持った上で、類似品の範囲や、それに対する引き下げ率の考え方について再度整理して議論すること自体は否定いたしません。
ただし、繰り返しになりますが、議論した上で、国民皆保険の維持という姿勢についてきちんと向き合うことが重要であるということを強調させていただきます。
今後、市販後に集積されるエビデンスに基づいて、薬価の引下げも含む見直しを行うことが必要となる再生医療等製品を含む医薬品は増えてくると思われますので、将来に向けて、その仕組みについて、具体的な議論を始める時期に来ていると考えます。私からは以上です。
安川部会長:森委員お願いいたします。
森委員:はい、ありがとうございます。論点に沿っていくつかコメントさせていただきます。1つ目の論点は薬価改定時の加算についてです。8コマ目に加算等その各算定ルールが示されていますが、イノベーションの評価やメリハリの観点から加算率の適応、幅を広げていくことは一つの方法かと考えます。
また、同じく8コマ目の5ポツで、市販後に真の有用性が検証された場合の対応については、薬事承認時はデータが限られていることもあり、市販後に示された臨床的有用性について評価することも一つと考えます。その際、客観的なデータが示されるということが前提であり、どのようなものであれば、それが満たせるのか検討していくべきものと考えます。
関係業界から評価の対象となるデータ、エビデンスの範囲を拡充することが要望されていますが、どのようなデータ、エビデンスを新たに評価すべきと考えているのか、今後の議論の際には、具体的な品目の例なども含めて、業界側から詳細なご説明をいただきたく思います。
また1ポツから4ポツについては算定不可となっていますが、イノベーション評価の点から、何かしらの配慮ができれば良いと考えるものの、全ての場合に算定可能にすることは議論が必要な点と考えます。
関係業界からは異なる効能がそれぞれ異なる改定時加算の対象となる場合は加算の併算定が認められるようにすべきと要望されていますが、今後の議論の際には、具体的な品目例や優先度、想定される影響、現在受けている不具合などの詳細なご説明をいただきたく思います。これは要望になります。
次に2つ目の論点にある市場拡大再算定についてです。22コマ目に示されている再算定おける補正加算ですが、先の薬価改定時の加算のときの考え方と同様に、よりメリハリのある形で、イノベーションの評価に値するものは、再算定の際に評価していくことは重要な視点と考えます。
再算定における補正加算については、再算定による引き下げ幅を緩和するという意味合いもありますので、特に医療上の必要性の高い効能を追加したことで、再算定の対象となる場合には、追加された効能の価値は評価されるべきと考えます。
25コマ目に示されている通り、原価計算方式と類似薬効比較方式とで価格を見直す条件の考え方が異なります。市場拡大という考え方については、現状の課題等に応じ、考え方を整理することは一つかと思います。
また、39コマ目に示されている、いわゆる“共連れルール”については、薬理作用が類似であっても、効能が異なるものも対象となっており、導入当初、想定していなかったものが対象となっています。今後このようなケースの増加が考えられますが、それはすなわち類似薬効比較方式で算定された品目であっても、その類似性の程度や考え方が、以前とは異なってきているということでもあると思いますので、類似品への影響を丁寧に見た上で、どのような仕組みとしていくのか、市場拡大再算定の全体の考え方を整理する中で判断していくべきものと考えます。
薬事承認された範囲のものが基本的に保険適用される前提に立つのであれば、関係業界からの要望などを踏まえつつも、公的保険制度における薬剤費の適正な配分メカニズムとしての機能を失わないよう、今後丁寧な議論が必要と考えます。私からは以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございます。他にございますでしょうか? それでは佐保委員お願いいたします。
佐保委員:はい、ありがとうございます。患者の利益につながるイノベーションの促進や医薬品の安定供給の観点から、革新的新薬や希少疾病用医薬品等を積極的に評価する必要があるとともに、薬価改定過程の透明性、信頼性を高める検討が必要と考えます。私からは以上です。
安川部会長:安藤委員から手があがっております。安藤委員お願いします。
安藤委員:はい、ありがとうございます。市場拡大再算定について意見を述べさせていただきます。本年2月のゾコーバに関する議論の際も申し上げましたが、アルツハイマー病の新薬であり、相当な市場規模が予測されるレカネマブが今後議論の俎上に載せられる予定であることを踏まえれば、慎重な議論が必要であるというふうに考えている。
ゾコーバにつきましては、議論の結果、市場拡大再算定の適用について、COVID-19の感染状況、本剤の投与割合、出荷量等の情報により市場規模を推計したデータに基づき判断するとの方針になったところであり、こうした薬剤の特徴を踏まえたきめ細やかな判断がどこまで可能であるのかという点も含めまして検討をしていくべきであるというふうに考えております。以上です。
安川部長会長:はい、ありがとうございます。松本委員お願いします。
松本委員:ありがとうございます。資料45ページにあります論点沿ってコメントします。まず薬価改定時の補正加算の範囲および算定方法については、新規収載時と改定時で評価のあり方が異なるというは資料6ページの説明にある通りでございますけども、効能追加や新たなエビデンスによって、医療現場で評価されること自体が企業の収入あるいは利益増につながりますので、市場規模というのも非常に重要な視点であるというふうに考えております。
したがいまして、仮に評価対象となるデータの拡大や加算の適用方法を変更する場合には、市場規模さらには医療保険財政への影響を踏まえて議論する必要があると考えます。そうした議論に資するデータを提出いただいた上で、どのような対応が必要なのか、市場拡大再算定のあり方とセットで判断させていただきたいというふうに考えます。
また資料21ページ、資料41ページにあるような再算定のあり方については業界から“共連れルール”の廃止の要望が出ておりますけども、前回の改革で特例再算定から4年間は1回に限り類似品から除外する取り扱いになったばかりです。まだこの影響について検証も行われていない中で、ルールの廃止まで踏み込むというのは少し難しいのではないかというふうに感じている次第でございます。私からは以上になります。
安川部会長:はい、ありがとうございます。先ほどから加算の問題について適用範囲を決める際のエビデンス、あるいはデータという点が議論になっております。また、前回のルール改正から、それほど経過していない中で、再度またルールの変更に近いご提案が出てきていることについて、しっかりとした理由というものが欲しいといった意見がいくつか出ていたように思います。
このあたりについて専門委員から意見がございましたら頂戴できればと思います。いかがでしょうか? はいお願いいたします。
石牟禮専門委員:ありがとうございます。専門委員の石牟禮でございます。ただいま加算に対する発言あるいは市場拡大再算定の“共連れルール”についての業界の見解につきましてのご質問、ご意見を賜りました。
その前にドラッグ・ラグ/ロスの要因等につきましても、現在、業界の方で準備を進めているところでございますので、その点はご理解賜りたいと思います。
まず加算の点でございます。加算につきましてはこれまでなかなか真の臨床的有用性を判断いただくこと、それを証明すること自体、非常にハードルの高いものでございます。そういったものが認められた場合には、ぜひとも加算で評価をいただきたいというのが趣旨でございます。
小児・希少疾病、市場拡大再算定、加算時の課題につきまして一つ意見を述べさせていただきたいと思います。前回の小児の議論の際に申し上げましたけれども、開発促進とかイノベーションの推進というインセンティブとして、こういった加算が設けられていると承知しておりまして、なかなか市場規模自体は小さいものというふう認識しております。
長島委員からご指摘いただきましたように、適用される率が低いということと共に生産性が認められない場合があるということがございます。また、市場拡大再算定の加算におきましても、実際評価されたにもかかわらず緩和がなされなかったという事例もございます。これは運用上の課題として、きちんとその企業が汗をかいた結果が見える形となるような運用に改善していただく必要があると考えておりますし、また加算率につきましては、もし低値にとどまる理由が加算率の幅にあるのであれば、新薬収載時の加算率と同じレベルに広げるということを検討いただくのも一案ではないかというふうに考えている次第でございます。
市場拡大再算定の類似品つきまして一点コメントさせていただきます。資料にもこれまでの経緯等を記載した資料を出していただいております。企業の方から見ますと、再算定の類似品につきましては、どれが対象品となるのか、また類似薬の効能追加の情報を正確に把握するというのが非常に困難な状況が近年起こっております。それが資料でもこのようなものが示されていると存じます。
平成24年に市場の競合性が乏しいものにつきましては、類似品から除外するということが決定されましたように、同様の観点で、この類似品の扱いについて見直す必要があるというふうに考えております。また、類似品撤廃につきましては、今後の陳述の方で、業界から、なるべくご理解賜れるようなデータ等を準備したいと存じます。以上でございます。ありがとうございました。
安川部会長:はい、ありがとうございます。いま専門委員からもご説明がございましたが、それらを踏まえて追加でご質問ご意見等ございましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか? 意見、ご意見ご質問等ないようでしたら、本件に係る質疑はこのあたりといたします。もし事務局の方で何かコメントがございましたらよろしいですか。はい。では今後、事務局におきまして、本日いただきましたご意見も踏まえ、対応いただくようお願いをいたします。本日の議題は以上です。次回の日程につきましては、追って事務局より連絡をいたします。それでは本日の薬価専門部会は、これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。