がん検診・健診の受診者数が20年度は大幅減 コロナ影響で 厚労省・がん検診あり方検討会
公開日時 2021/08/06 04:50
初めての緊急事態宣言が発出されていた2020年4~5月のがん検診と健診の受診者数が、前年同月と比べ、大幅に減少していたことがわかった。8月5日に開催された厚労省の「がん検診のあり方に関する検討会」で、国立がん研究センターの高橋宏和氏が明らかにした。
高橋らは、この日の検討会で研究の中間結果を報告。聖隷福祉事業団と宮城県対がん協会のがん種ごとのがん検診受診者数の推移、日本総合検診医学会と全国労働衛生団体連合会の健診受診者数の推移を紹介した。その結果、がん検診・健診ともに、初めての緊急事態宣言が発出されていた20年4月~5月の受診者数が大幅に減少。特に5月は、いずれの調査でも前年同月比で5割以下となっていた。6月以降はおおよそ同程度に回復した。がん検診については、対2019年度比で、職域検診では89.7%~103.7%だったのに対し、住民検診では83.7%~96.7%と減少幅が大きかった。
◎中山委員が問題提起 「精密検査の受診につながっていないのでは」
中山富雄委員(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部部長)は、「受診率の低下は予想より小さいが、精密検査の受診につながっていないのではないか」と問題提起した。「胃や大腸の内視鏡検査は、県庁所在地や都市部に受けに行かないといけない。こうした地域は感染が拡大していた場所でもあるので、受診に影響が出ていないか不安に思っている」と指摘した。
また松田一夫委員(公益財団法人福井県健康管理協会副理事長)は、「蜜を避けるため集団検診の受診者が減っている。実態を把握するために数字をしっかり集計する仕組みが必要」と述べた。
なお、研究は、厚生労働行政推進調査費補助金がん対策推進総合研究事業「新型コロナウイルス感染症によるがん診療及びがん検診などの受診状況の変化及び健康影響の解明にむけた研究」として実施されている。
◎子宮頸がんの検診受診率低く 10代から啓発の重要性も
このほか同日の検討会では、がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針に、がん検診の利益・不利益を受診者に説明することの重要性の周知に関する記述を記載することや、子宮頸がん検診の受診促進について意見を交わした。子宮頸がんの検診受診率は、20~25歳の受診率が15.1%で、全体の43.7%を下回り、突出して低い。委員からは大学生をターゲットとした受診勧奨や10代のうちからの教育や啓発が重要などといった意見があがった。