バイエル 新規機序の慢性心不全薬ベルイシグアト 日欧で承認申請
公開日時 2020/06/08 04:49
バイエル薬品は6月5日、新規の慢性心不全治療薬ベルイシグアトを日本と欧州で承認申請したと発表した。心不全の標準治療と併用して、1日1回の経口投与で用いる。承認されれば、ファースト・イン・クラスの可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬と呼称する新クラスの薬剤となる。独バイエルと米メルクがグローバルで共同開発している。
sGCは血管および心臓の両方の機能にとって重要だが、心不全患者では一酸化窒素(NO)の利用能の障害のために十分にsGCが刺激されず、結果として心不全や血管障害を引き起こす。ベルイシグアト(開発コード:BAY1021189/MK-1242)は現在の治療法では対処されていないNO-sGC-cGMP経路に作用し、機能を回復させる。
日欧での承認申請は、フェーズ3試験「VICTORIA」の結果に基づく。欧州、日本、中国、米国を含む42か国の600以上の施設で実施した同試験は、非代償性イベント(心不全による入院または外来での心不全に対する利尿薬の静脈投与)後の、左室駆出率が45%未満の症候性慢性心不全患者5050人を登録。心不全の標準治療に併用してベルイシグアト1日1回投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けた。
主要評価項目は心血管死または心不全による入院の複合エンドポイントの初回発現までの時間とした。主要評価項目の年間イベント発現率がこれまでの他の心不全のアウトカム試験の対象集団と比較してプラセボ群では2倍を超えたことなどから、同試験の被験者は他の心不全アウトカム試験の被験者と比べて、入院または死亡の発現リスクが高い状態にあったと考えられるとしている。
試験の結果、ベルイシグアト群は、心血管死または心不全による入院の複合エンドポイントの発現リスクをプラセボ群と比較して10%有意に低減させた(相対リスク低下;HR0.90、95%CI[0.82-0.98、p=0.019]、絶対リスク減少率[ARR] 4.2/100患者年)。ベルイシグアト群の忍容性は良好で、ベルイシグアトのこれまでの試験で認められた安全性プロファイルと一致したとしている。
独バイエルの研究開発責任者のヨルグ・メラー氏は、「VICTORIA試験は、心不全増悪の既往を有する左室駆出率の低下した症候性慢性心不全患者集団のみを対象として、初めて良好な結果が得られた試験」と紹介。そして、「VICTORIA試験で得られた知見は慢性心不全の治療において新たな可能性の扉を開くものだ」として、早期の承認取得に向けて取り組む意向を示した。
【訂正】下線部に誤りがありました。訂正しました。(6月8日13時50分)