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PRASFIT-ACSサブグループ解析 血小板活性化と心血管イベント発生率との相関示す

公開日時 2014/03/25 04:40

日本人急性冠症候群(ACS)患者において、初回負荷投与(loading)後の早期の血小板凝集能抑制により、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行から3日間以内に発生する主要心血管イベント(MACE)の発生を抑制する可能性が示唆された。抗血小板薬・プラスグレルの臨床第3相試験「PRASFIT-ACS」のpost-hoc(後付け)解析の結果から示された。第78回日本循環器学会学術集会(3月21~23日、国際フォーラム)で3月22日に開かれた「Late-Breaking Clinical Trials」セッションで東邦大学医療センター大橋病院循環器内科の中村正人氏が報告した。


血小板凝集能と虚血性イベントとの関連性をめぐっては、複数の臨床試験で検討されているが、関連性の有無については結果が分かれている。血小板凝集能と虚血性イベントとの関連性を示唆するデータはあるものの、安定狭心症では、日常臨床に治療方針に血小板凝集能を活用することの有用性についてはこれまでのところ否定されているのが現状だ。


PRASFIT-ACSは、経皮的冠動脈形成術(PCI)施行予定の急性冠症候群(ACS)患者1363例で、アスピリン併用下でプラスグレル群(loading dose: 20mg/維持用量:3.75mg)685例、クロピドグレル群(loading dose :300mg/維持用量:75mg)687例の2群に分け、24~48週間治療し、効果を比較した。本解析では、主要評価項目のMACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中)の発生について、プラスグレル群9.4%、クロピドグレル群11.8%でプラスグレル群がクロピドグレル群を上回る発生抑制効果を示している。


特にPCI施行から3日間のMACEの発生率に両群間に差がみられ、プラスグレル群5.3%、クロピドグレル群8.3%でプラスグレル群で有意に低率であることが報告されている(ハザード比(HR):0.63、95%CI:0.41-0.95、p=0.026)。一方、VerifyNowを用いて測定された血小板凝集率(PRU)は、ベースライン時の300からプラスグレル群で投与開始2~4時間で欧米のPRUのカットオフ値とされる200まで低下したのに対し、クロピドグレル群では5~12時間後もほぼ横ばいであることが示されている。


今回報告されたpost-hoc解析では、日本人ACS患者を対象にloading後の早期の血小板凝集能とPCI施行から3日間以内の心血管イベントとの関連を検討する目的で実施された。同試験は、これまで実施された同様の研究に比べ、早期の血小板凝集能に着目したのが特徴で、日本人対象の最大規模の研究となった。


解析対象は、loading後5~12時間後のPRU値が得られた660例(プラスグレル群:328例、クロピドグレル群:332例)、CYP2C19の遺伝子多型の情報が得られた441例(プラスグレル群:220例、クロピドグレル群:221例)とした。

患者背景は、プラスグレル群65.2歳、クロピドグレル群65.6歳、留置されたステントはベアメタルステント(BMS)が53.3%、55.4%、薬剤溶出ステント(DES)が47.4%、45.2%、loadingのタイミングについてはPCI施行前が59.7%、60.8%、PCI施行中が5.8%、7.8%、PCI施行後が33.2%、30.7%。CYP2C19については代謝活性正常例が39.5%、37.9%、機能低下例が60.5%、62.1%で、機能低下例が欧米に比べて高率だった。
 

◎PRU値 日本人カットオフ値は262と算出 イベント発生率と相関示す


イベント発生の有無に分け、PRU値をみると、イベントを発生しなかった群(609例)では平均値226.7、中央値236、イベントを発生した群(51例)では平均値257.4だった。ROC曲線を用いて検討した結果、カットオフ値は262が算出された(ACU:0.5761、95%CI:0.5002-0.6519)。


このカットオフ値を用いてPCI施行から3日間以内のMACEの発生率をみると、PRU≤262(363例)は5.2%だったのに対し、PRU>262(297例)では10.8%で、PRU≤262で有意にMACEの発生率が低かった(p<0.01)。180日後のMACEの発生率もPRU≤262では8.8%、PRU>262では15.5%で、有意にPRU≤262でMACEの発生率が低く(オッズ比:0.51、95%CI:0.29-0.90、p<0.01)、初期の血小板凝集抑制が、遠隔期の治療成績の改善に影響することも示唆された。
 

プラスグレル群、クロピドグレル群に分け、PRU値をみると、プラスグレル群では平均値158.3、中央値137、クロピドグレル群では平均値299.0、中央値303だった。Loadingから5~12時間後にPRU≤262に達したのはプラスグレル群79.9%(262例/328例)、クロピドグレル群30.4%(101例/332例)で、プラスグレル群で有意に反応率が高かった(p<0.0001)。MACEの発生率はプラスグレル群5.3%、クロピドグレル群5.0%だった。一方、PRU>262はプラスグレル群20.1%(66例/328例)、クロピドグレル群69.6%(231例/332例)だった。MACEの発生率はプラスグレル群9.1%、クロピドグレル群11.3%でPRU≤262の倍の発生率だった。


CYP2C19の遺伝子多型に分けてPRU≤262を満たす割合をみると、プラスグレル群では代謝活性が正常例で85.1%(74例/87例)、機能低下例で76.7%(102例/133例)で、遺伝子多型の影響を受けなかった。これに対し、クロピドグレル群では代謝活性が正常例では45.0%(36例/80例)だったのに対し、機能低下例で27.5%(36例/131例)で、有意に機能低下例で低率となった(p<0.01)。


ただ、Loadingから5~12時間後のPRU値とイベント発生との関連をみると、イベントが発生したPRU値はプラスグレル群では0~400まで広範囲にバラツキがみられたのに対し、クロピドグレル群が300前後に集中していた。そのため中村氏は、「血小板凝集能はイベントのひとつの要因ではあるけれど、ほかの要因もかなり効いていてイベントを起こすことを示唆するデータ」と述べ、血小板凝集能はあくまでひとつの因子であることも説明した。


試験の限界として中村氏は、同解析がpost-hoc解析として行われたことや症例数が少ないことなどを挙げた上で、「日本人ACS患者において、血小板凝集能とPCI施行から3日以内のMACEとの関連性が示された」と結論付けた。
 

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