【AAN特別版】ラコサミドの追加療法 実臨床でも優れた発作抑制と安全性を示す
公開日時 2012/05/08 05:00
部分発作を伴うてんかん(POS)の成人患者において、抗てんかん薬(AED)単剤にラコサミドの追加療法を実臨床で検討している前向き試験、VITOBAの中間結果が発表された。米UCB PharmaのMatthias Noack-Rink氏らの研究グループが、第64回米国神経学アカデミー年次学会(AAN、4月21から28日まで米国ニューオリンズで開催)のポスターセッションで、26日報告した。(ニューオリンズ発 森永知美)
米国と欧州では、POS成人患者の追加療法としてラコサミドが2008年に承認されている。AEDを最高3剤まで併用する症例にラコサミドを追加した試験の事後解析では、併用するAEDの数や種類に関わらず、ラコサミドが有効性と忍容性を示すことが報告されている。
VITOBA試験は、実臨床の現場でラコサミドが発作抑制に追加的な有効性と忍容性を示すかどうかを調べるもので、AED1剤との併用を検討している。試験期間は6ヶ月間。対象はドイツの患者500例が計画されており、中間報告では109例の分析結果が発表された。
ラコサミドは、試験プロトコルとは関係なく、患者を治療する担当医の決定により追加療法薬として選択されたものであり、投与量や増量計画も担当医が決定している。主な評価項目は、発作状況と発作頻度の変化、臨床全般改善度(CGI-C)、治療中に発生した有害事象(TEAE)である。
また過去の事後解析との比較を可能にするため、AEDのサブグループ(Naチャンネル阻害薬と非Naチャネル阻害薬)による解析も行った。
被験者の平均年齢は44.6歳で、65歳以上の患者が19.3%占めていた。これは過去の治験被験者での高齢者の割合を、大きく上回るものであった(治験被験者では1.4%)。また難治度が低い傾向にあり、これまでに7種類以上のAEDを使用してきた患者の割合は、わずかに6.4%であった(治験被験者では44.9%)。29.4%が1種類、21.1%が2種類、22.9%が3種類のAEDを使用した経験があった。てんかんの疾患年数は13年(治験被験者は23年)であった。ラコサミドの使用日数は185日で、維持用量は1日200mgだった(どちらも中央値)。
試験期間の最後の3ヶ月間で、発作頻度が50%以上低下した割合(50%レスポンダー)は77.8%に至り、75%以上低下した割合(75%レスポンダー)は64.6%に上った。試験終了時に無発作状態に達した割合は43.4%であった。これまでに使用したAEDが1種類の被験者が最もラコサミドの治療便益を得ており、50%レスポンダーの割合は86.7%、75%レスポンダーの割合は80.0%に達した。無発作に達した割合は66.7%であった。
疾患年数別では5年以下の被験者の方が、5年より長い被験者よりラコサミドへの反応が高い傾向にあり、50%レスポンダーは90.6%(5年より長い被験者では71.6%)、75%レスポンダーは84.4%(同55.2%)、無発作が65.6%(同32.8%)だった。また65歳以上の患者の方が65歳未満の患者よりラコサミド治療への反応が良いこともわかった。
AEDの種類別による分析では、非Naチャネル阻害薬を使用する被験者の方が、改善度が高い傾向が見られた。
全被験者におけるTEAEの発生率は50.5%と、治験被験者での割合(81.0%)を下回っていた。疾患期間が5年を上回る被験者では54.1%だったのに対し、5年以下では40.0%だった。ラコサミドの忍容性は良好で、TEAEにより治療を中止した割合は9.2%にとどまった。
これらの結果から研究グループは、実臨床の現場でもAED単剤とラコサミドの追加療法による発作抑制は確かであり、好ましい安全性と忍容性を示していることがわかったと結論した。特に、疾患早期にラコサミドを与えることで、より優れた効果が発揮される可能性があるとまとめた。