【AAN特別版】レボドパ/カルビドパ合剤 ジェルの腸内継続投与によりパーキンソン病のオフ時間が有意に短縮
公開日時 2012/05/08 05:00
進行期パーキンソン病に対し、レボドパ/カルビドパ合剤ジェルの腸内継続投与(LCIG)と、同合剤の即放性錠剤(LC-IR)とを比較検討した第3相試験の結果、LCIGはオフ時間を臨床的意義を持って、有意に短縮したことが明らかになった。米Mount Sinai School of MedicineのC. Warren Olanow氏が、第64回米国神経学アカデミー年次学会(AAN、4月21から28日まで米国ニューオリンズで開催)のエマージング・サイエンス・プログラムで、25日報告した。またLCIGは、ジスキネジアを伴わないオン時間を有意に延長したこともわかった。(ニューオリンズ発 森永知美)
オフとは、薬剤の効果が徐々に薄れ、振戦やこわばり、歩行困難などの症状が起こる状態である。一方オンとは薬剤が効いている状態であるが、経口レボドパによる長期的な治療によって、オンの状態ではジスキネジアといった運動障害が発達する。断続的なレボドパの投与による、線条体ドーパミン受容体の非生理的な脈動刺激が原因とされており、継続的に注入することで、より生理的にレボドパが脳に到達し、運動障害リスクが低減するのではと指摘されてきた。
LCIGは、経皮内視鏡的な胃空腸瘻チューブでレボドパ/カルビドパ合剤ジェルを継続的に投与するシステムである。
レボドパによる至適治療にも関わらず、オフ時間が1日3時間以上あるパーキンソン病患者71例を、LCIG(37例)かLC-IR(34例)を与える被験者群に無作為に割り付け、12週間治療した(二重盲、ダブルダミー)。主要評価項目に、ベースラインから12週目までのオフ時間の変化を据え、副次項目は、困難なジスキネジア(TD)を伴わないオン時間の変化とした。
平均年齢は、LCIG群が63.7歳、LC-IR群が65.1歳、パーキンソン病疾病期間の平均はそれぞれ10年、11.8年、1日当たりの平均オフ時間はそれぞれ6.3時間、6.9時間、TDを伴わないオン時間の平均はそれぞれ8.7時間、8.0時間、TDを伴うオン時間の平均はそれぞれ1.0時間、1.1時間であった。
治療の結果、LC-IR群では1日あたりのオフ時間が平均2.14時間短縮されていたのに対し、LCIG群では4.04時間短縮されており、LC-IR群と比べ有意に短くなっていた(LS平均差 -1.91時間、p=0.0015)。また、TDを伴わない1日あたりのオン時間は、LC-IR群で平均2.24時間延びたのに対し、LCIG群は4.11時間延長し、有意差が認められた(LS平均差 +1.86時間、p=0.0059)。
有害事象の発生率はLCIG群94.6%、LC-IR群100%。有害事象の多くは器具挿入時に発生したもので、挿入時の合併症(それぞれ56.8%、44.1%)や、腹部の痛み(51.4%、32.4%)などであった。これらは一過性のもので、軽度から中等度であった。重篤な有害事象はそれぞれ13.5%、20.6%だった。
Olanow氏は、パーキンソン病患者にとってオフ時間が短くなるということは、レボドパ/カルビドパ療法により得られる有意義な時間が増えることを意味し、QOLの向上につながると結論した。またLCIGによる治療便益は、深部脳刺激術といった他の治療法と同等で、頭蓋内脳神経外科的処置の必要性を回避出来るの可能性があるとコメントした。