【ESC特別版】ARISTOTLEサブ解析 アピキサバンからワルファリンへの切り替えで中止から7日以降にリスク増加
公開日時 2012/09/03 07:00
臨床試験終了時に、第Ⅹa因子阻害薬・アピキサバンの投与を中止し、ワルファリンへ切り替える際に、投与中止から7日目以降で、脳卒中+全身性塞栓症、出血のいずれのリスク増加もみられることが分かった。ARISTOTLE(Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation)のサブグループ解析の結果から分かった。8月25~29日までドイツ・ミュンヘンで開催された欧州心臓病学会 (ESC)2012で、28日に開かれたセッション「Balancing stroke prevention versus bleeding risk in atrial fibrillation」で、Chirstopher Granger氏が報告した。(望月英梨)
同試験は、脳卒中の危険因子を1つ以上もつ心房細動患者における、脳卒中(虚血性、出血性)発症抑制効果について、アピキサバンのワルファリンへの非劣性 を示すことを目的に、日本を含む世界39カ国、1034施設で実施された。①75歳以上②脳卒中、一過性脳虚血性発作(TIA)、全身性塞栓症(SE)の 既往③心不全または左室駆出率(LVEF)≦40%④糖尿病⑤高血圧――のうち、少なくとも1つ以上満たす心房細動患者1万8201例を対象に、二重盲検 下、ランダム化、ダブルダミー法で実施された。
すでに報告された本解析では、心房細動患者へのアピキサバン投与により、ワルファリンに比べ、脳卒中+全身性塞栓症、死亡の、大出血の発生を抑制したことが分かっている。
一方で、治験薬の投与中止後、ワルファリンへと切り替える間に、イベントの発生リスクが高まることも指摘されている。
今回実施された解析は、治験薬の投与中止後早期のイベント発生率を検討する目的で実施された。本解析の有効性カットオフが行われた2011年1月30日以 降、治験薬の投与は中止され、オープンラベルでのビタミンK拮抗薬(ワルファリン)の投与が推奨された。アピキサバン群(実薬投与、プラセボ投与)では、 オープンラベルのワルファリン投与が行われる前の2日間は投与を継続することとした。
解析対象は、同試験に登録された1万8201例のうち、治療を完遂したアピキサバン群6791例、ワルファリン群6569例。主要評価項目は、脳卒中+全身性塞栓症。
最終投与から1~30日後の主要評価項目の発生率は、アピキサバン群で4.02%/年(21例/6791例)、ワルファリン群で0.99%/年(5例 /6569例)だった。最終投与からの日数に分けて比較してみると、1~2日では、アピキサバン群の2.69%/年(1例/6791例)、ワルファリン群 で2.78%/年(1例/6569例)で大差はみられなかった。一方で、8~14日目ではアピキサバン群の3.85%/年(5例/6780例)、ワルファ リン群で0.80%/年(1例/6569例)、15~30日目では、アピキサバン群の4.18%/年(11例/6771例)に対し、ワルファリン群では 1.18%/年(3例/6548例)で、7日目以降ではアピキサバン群で発生率が高い傾向を示した。
また、対象患者の85%に当たる、試験終了後にビタミンK拮抗薬を投与されている患者に絞ってみると、主要評価項目の発生率はアピキサバン群で 3.19%/年(14例/5273例)、ワルファリン群で0.47%/年(2例/5570例)で、同様にアピキサバン群で高い傾向を示した。
一方で、ISTH基準による大出血は、アピキサバン群で4.97%/年(26例/6791例)、ワルファリン群で1.97%/年(10例/6569例)で、同様に7日目以降で、アピキサバン群で頻度が高い傾向を示した。
Granger氏は、試験開始時のワルファリン群のデータを提示。ワルファリン導入から30日以内のイベント発生率を、ワルファリン未治療 (naïve)と既治療で比較すると、主要評価項目の発生率は、既治療群では1.42%/年、未治療群では5.41%/年で、未治療群で高い発生率を示し た。
その上で、ワルファリン“未治療”であるアピキサバン群で、発生率が高い傾向を示したデータと、「似通ったパターン」とGranger氏は指摘。試験終了 時の投薬中止によるリスク増加がアピキサバン群でみられるとの考えを示し、「アピキサバンの投与継続を2日かそれ以上にすれば、治療成績は向上するかにつ いては明確に分かっていない」と述べ、さらなる検討の必要性を強調した。