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【ESC特別版】WOEST 抗凝固薬治療下のPCI施行患者 クロピドグレルとの2剤併用の治療意義示す

公開日時 2012/08/30 12:30

 すでに経口抗凝固薬での治療を受けているPCIの施行が必要な患者において、クロピドグレル+アスピリンの3剤併用と、クロピドグレルだけを追加投与した2剤併用とを検討した結果、2剤併用は3剤併用と比べて出血リスクが低く、ステント血栓症や心筋梗塞(MI)、標的血管再血行再建術、脳卒中などの血栓性および血栓塞栓性イベントと全死亡のリスクは増加させないことが明らかになった。WOEST(What is the Optimal antiplatElet and anticoagulant therapy in patients with oral anticoagulation and coronary StenTing)の結果から分かった。8月25~29日の日程で、ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州心臓病学会議(ESC)2012のHOT LINEセッションで、オランダ、TweeSteden HospitalのWillem Dewilde氏が28日報告した。(医学ライター・森永知美)


心房細動患者や機械弁のある患者では、長期的な経口抗凝固薬の投与が必要だWillem Dewilde氏が、これらの患者のうち約30%は虚血性心疾患を併発している。冠動脈ステントの留置が必要である場合、ステント血栓症の予防のためにアスピリンとクロピドグレルの併用が必要とされ、これらの患者では、ガイドラインにおいても経口抗凝固薬とアスピリン、クロピドグレルの3剤併用が推奨されている。一方で、大出血リスク増加が課題であり、抗凝固薬を使用する、冠動脈ステント留置が必要な患者にとって、最適な抗血栓症治療は未だ明確になっていない。


そこで研究グループは、経口抗凝固薬の治療下にあり、PCIを施行される患者において、アスピリンを投与せずに、クロピドグレルのみを追加投与することで、クロピドグレルとアスピリンを追加投与した3剤併用に比べ、出血リスクを抑制し、血栓症リスクは増加させないことを検討した。し試験は、無作為化オープンラベル多施設試験で、オランダとベルギー2カ国で実施された。試験期間は、2008年11月~11年11月。


対象は、PCIが必要な冠動脈病変が1つ以上あり、最低1年間の経口抗凝固薬の投与が必要な18歳以上の患者。頭蓋内出血の既往や過去1年間にTIMI基準における大出血がみられた症例などは除外した。登録された573例を①経口抗凝固薬+クロピドグレル75mg 1日1回(以下、2剤併用群)284例②経口抗凝固薬+クロピドグレル75mg1日1回+アスピリン80mg1日1回(以下、3剤併用群)289例――の2群に、1:1に無作為に割り付けた。両群とも、ベアメタルステント(BMS)では、留置から最低1ヵ月、薬剤溶出ステント(DES)では留置後1年間継続投与することとした。追跡期間は1年間。主要評価項目は、1年間の全ての出血イベント(TIMI基準により分類)、副次評価項目は、脳卒中+全死亡+心筋梗塞+ステント血栓症+標的血管再血行再建術の複合エンドポイントと、主要評価項目と副次評価項目の各項目とした。


患者背景は、平均年齢が約70歳、男性が約80%を占め、BMIが約28、高血圧は約70%で、PCI患者の特性を示した。急性冠症候群(ACS)の既往は、2剤併用群で25%、3剤併用群で30.6%だった。PCIは両群ともにBMSは約30%、DESが約65%だった。また、両群ともプロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用は約35%だった。経口抗凝固薬の投与の理由としては、「心房細動」が2剤併用群で69.5%、3剤併用群では69.2%、「機械弁」はそれぞれ10.2%と10.7%だった。


◎出血事象、血栓性塞栓性事象も増加せず


その結果、主要評価項目の発生率は、3剤併用群の44.9%に対し、2剤併用群では19.5%に留まり、2剤併用群が有意に低いことがわかった(ハザード比(HR): 0.36、95% CI: 0.26 – 0.50、p<0.001)。


TIMI 基準における軽微な出血が3剤併用群で16.7%に対し、2剤併用群は6.5%、TIMI 基準における微小出血は、3剤併用群の27.2%に対し、2剤併用群の11.2%で、いずれも2剤併用群で有意に低い結果となった(いずれも、p<0.001)。大出血は、3剤併用群で5.8%、2剤併用群の3.3%で2群間に差はみられなかった。


出血病変(各患者で最も出血度合いが悪かった部位のみ)は、頭蓋内が両群とも3例、挿入部位が3剤併用群20例、2剤併用群16例、胃腸それぞれ25例、8例、皮膚それぞれ30例、7例、その他がそれぞれ48例、20例だった。年齢や性別、ACSの既往の有無、ステントの種類、経口抗凝固薬の投与理由、の影響を検討したサブグループ解析においても、一貫した結果を示した。


副次評価項目の発生率は、3剤併用群の17.7%に対し、2剤併用群は11.3%で、2剤併用群が有意に低かった(HR:0.6、95% CI: 0.38 – 0.94、p=0.025)。


各評価項目の発生率を見ると、MI(3剤併用群4.7% vs 2剤併用群3.2%)と脳卒中(2..9% vs 1.1%)、ステント血栓症(3.2% vs 1.5%)で、2剤併用群で低い傾向を示したものの、いずれも有意差はみられなかった。一方で、全死亡は3剤併用群の6.4%に対し、2剤併用群では2.6%で、2剤併用群が有意に低かった(p=0.027)。なお副次評価項目は、非劣性を示す統計的パワーはない。


Dewilde氏は、冠動脈ステントを留置する経口抗凝固薬治療下の患者において、最適な抗血小板療法を提示した初めての無作為化試験であると強調。経口抗凝固薬+クロピドグレルの2剤併用が3剤併用よりも、主要評価項目である出血の頻度を低率に抑制できたと説明した。その上で、「PCIを受ける高リスク経口抗凝固薬治療下の患者において、アスピリンを投与せずに、抗凝固薬+クロピドグレル併用の治療戦略が適用できる可能性がある」との考えを示した。


◎Discussant・Valgimigli氏 アスピリン投与しない“タブー”打ち破った試験


イタリアUniversity of FerraraのValgimigli氏は、同試験について患者の転帰を向上させるには、「抗血栓療法の強化より、出血予防の方がより効果的であるという概念を証明した」との見方を示した。
また作用機序として、「直接的なCOX-1抑制は虚血予防にあまり関連しておらず、むしろ出血率を不均衡に上昇させている可能性が、同試験から考察される」と述べた。


特にDES留置患者では「クロピドグレルとワルファリンの2剤併用が非常に理にかなった治療法である可能性が示唆され、アスピリンを投与しないというタブーを打ち破った意義の高い試験である」と評価した。


 


 

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