【AHAリポート】PLATO post-hoc解析 PAD合併ACS患者で心血管イベント発生リスク1.9倍に
公開日時 2011/11/22 12:29
末梢動脈疾患(PAD)を合併した急性冠症候群(ACS)患者は、PADを合併しない症例に比べ、心血管イベントの発生リスクが有意に1.9倍高いことが、Ticagrelorの臨床第3相試験(P3)として行われた「PLATO(Platelet Inhibition and Patient Outcomes)」のpost –hoc解析の結果から分かった。Duke UniversityのManesh R Patel氏が、11月12~16日まで、米国・オーランドで開催された米国心臓協会年次学術集会(AHA)2011で11月16日、解析結果を報告した。(望月英梨)
PADとCVDのいずれか一方、もしくは2つの疾患を合併した(polyvascular disease)の急性冠症候群(ACS)患者では、冠動脈疾患のイベント発生率が上昇することが指摘されている。一方で、最適な抗血小板療法が確立されていないのが現状だ。
Ticagrelorは、新たな経口P2Y12受容体阻害薬で、早期に効果を発揮し、クロピドグレルよりも強力な阻害作用を持つなどの特徴があるとされている。すでに報告された本解析では、ACS患者に対し、アスピリンの併用下で、Ticagrelorがクロピドグレルを上回る心血管イベント発症抑制効果を示すことが分かっている。
解析は、PLATOに登録された患者を対象に、①PADを合併したACS患者における治療効果をクロピドグレルと比較する②PAD合併の有無による心血管系イベント発生リスクと違いを比較する――ことを目的に実施された。主要評価項目は、心血管死+心筋梗塞+脳卒中とした。
患者背景では、PADを合併したACS患者(1144例)では、PADを合併していないACS患者(1万7469例)に比べ、高齢で男性が多く、心血管イベントの危険因子(喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病)の合併率や心筋梗塞、PCI、CABGの既往歴が有意に高いなど、有意な差がみられた。
主要評価項目の発生率は、PAD合併群の19.3%に対し、合併していない群では10.2%で、PAD合併群で有意に高い結果となった(HR:1.975 [95%CI:1.710-2.281])。そのほか、血管死+心筋梗塞+脳卒中(HR:1.43[1.21-1.69]、p<0.0001)、全死亡(1.55 [1.22-1.96]、p=0.0003)、PLATO試験の基準による大出血(1.27 [1.05-1.53]、p=0.013)、冠動脈バイパス手術(CABG)によらない大出血(1.52 [1.15-2.04]、p=0.0034)で、いずれもPAD合併群で高い結果となった。
PAD合併群で、Ticagrelor投与群(566例)、クロピドグレル投与群(578例)の2群に分け、治療効果を比較したところ、主要評価項目の発生率は、クロピドグレル群の20.6%に対し、Ticagrelor群では18.0%で、Ticagrelor群で減少する傾向がみられた(HR:0.846 [0.644-1.111]。なお、患者背景は、2群間に大きな差はみられなかった。
これらの結果から、Patel氏は「PADを合併したACS患者では、1年後の血管死、心筋梗塞、脳卒中を含めた心血管イベントの発症リスクが、PADを合併しない患者よりも高い」と結論付けた。その上で、「全ての試験結果から、PAD患者に対するTicagrelorの投与は、大出血を増加させずに、クロピドグレルと似通った臨床イベントの抑制効果を示すことを一貫して示した」との見解を示した。