ACCORDサブ解析2型糖尿病のがんリスクとインスリンとの関連みられない可能性【ADAリポート】
公開日時 2011/07/07 04:00
2型糖尿病患者のがんリスクとがんによる入院は、ベースラインのBMIと年齢、喫煙が関連するものの、インスリンの利用には関連していない可能性が、ACCORD試験の解析の結果明らかになった。6月24~28日まで米カルフォルニア州・サンディエゴで開催された第71回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA)で、米クリーブランド・クリニックのMarwan Hamaty氏が、27日のオーラルセッションで報告した。
ACCORD試験は、心血管リスクが高い2型糖尿病患者1万例以上を対象に、厳格な血糖管理、厳格な血圧管理、スタチンにフェノフィブラートを追加投与することの3つの臨床的意義を同時に検討するfactorial研究として実施された。平均5年間追跡した結果、インスリンは一般的に投与されている現状が分かった(厳格な血糖管理群79%、標準管理群61%)。
今回の解析では、基礎インスリン、インスリングラルギンの投与、食前のインスリン補充の各因子が、がんに関連した入院と死亡と独立した関連性を持つか検討することを目的に実施。1万146例(厳格な管理群5076例、標準管理群5070例)のデータから、一日の平均インスリン投与量を算出し、ベースラインと治療中の共変量を調整因子とした回帰分析を行った。ベースラインの共変量は、年齢、性別、BMI、喫煙の有無、飲酒の有無、ベースラインでのインスリン利用の有無、心血管疾患の既往歴とし、治療中の共変量はBMIの変化、最新の平均A1cとした。
がんは304例で発生し、そのうち101例は入院したが死亡はせず、203例は死亡に至った。
解析の結果、ベースラインの患者背景では、BMIと70歳以上であることが、がんイベントと有意に関連していた。血糖インターベンションの影響を含めた場合と、除外した場合でハザード比を解析したが、どちらの場合もBMIは1.03(p=0.016)、年齢は1.06(p<0.001)となった。現在喫煙していることも有意に関連しており、そのハザード比を1とした場合、全く喫煙したことがない場合のハザード比は0.35(p<0.001)、以前喫煙していた場合は0.5(p<0.001)であった。飲酒とインスリンの利用には、がんイベントとの関連がなかった。
またベースラインの特性に、体重の変化と最新の平均A1cとを加えて解析した結果、最新の平均A1cが1%増加するごとに、がんリスクが30%上昇していた。ハザード比1.30 (p=0.001)で、血糖インターベンションによる影響を調整した場合のハザード比は0.18(p=0.020)。体重は、5kg未満の低下に対して5kg以上増加していた場合に、がんリスクとの有意な関連性が見られ、ハザード比は3.61(p<0.001)、血糖インターベンションの調整後は3.34(p<0.001)だった。
インスリンへの暴露に関する解析では、インスリンの利用全体や基礎インスリン、グラルギンと、がんリスクとの間に有意な関連性はなく、唯一、食前インスリン補充との関連性だけが示された(血糖インターベンションによる影響を除外した場合のハザード比2.30、p=0.03、含めた場合のハザード比2.39、p=0.02)。
Hamaty氏は、同試験ではがんのイベント数が比較的少なかったことや、他の薬剤やインターベンションが影響を与えた可能性があるなどの制約が存在すると指摘。その上で、今回の解析からは、がん死とがん関連の入院のイベント増加は、ベースラインでの高値のBMIと高齢、喫煙が有意に関連していたが、全体のインスリン暴露や基礎インスリン利用、グラルギン利用は関連していなかったとし、食前インスリン補充がリスク上昇と関連してい可能性があるが、今後ACCORDIONの拡大研究で、更なるデータ解析をする必要があると結論した。