【ACCリポート】PRECOMBAT 左冠動脈主幹部狭窄病へのPCIの治療成績 CABGへの非劣性を示す
公開日時 2011/04/05 15:00
左冠動脈主幹部狭窄病変(ULMCA)を有する患者において、シロリムス溶出性ステント(SES)を用いた経皮的冠動脈形成術(PCI)施行術の治療成績は、冠動脈バイパス術(CABG)に非劣性を示すことが、「PRECOMBAT」試験の結果から分かった。韓国・University of Ulsan医学部の心臓血管部門のSeung-Jung Park氏が4月4日、米国ニューオリンズで開催されている第60回米国心臓病学会議の「Late-Breaking Clinical Trials」セッションで報告した。(4月4日 米国・ニューオリンズ発 望月英梨)
左冠動脈主幹部狭窄に対する治療としては、PCIの施行が増加する一方、依然としてCABGは治療選択肢として残されている。
RECOMBATは、左冠動脈主幹部狭窄病変を有する患者における最適な血行再建術は、シロリムス溶出性ステント(SES)を用いたPCIか、CABGか、比較検討する目的でオープンラベルで実施された。
左冠動脈主幹部狭窄病変(50%以上の狭窄)を有する患者600例をランダムに、①CABG施行群300例②PCI施行群300例――の2群に分け、前向きに治療効果を比較した。追跡期間の2年間を終了したのは、CABG施行群266例、PCI施行群270例。主要評価項目は、重大な心臓、脳血管有害事象(総死亡+心筋梗塞+脳卒中+虚血による標的血管(target vessel)の血行再建術の実施)の複合エンドポイントとした。なお、PCI施行後6カ月間は抗血小板療法の2剤併用を行い、いずれの群もそのほかの標準治療を行った。
その結果、主要評価項目の1年後の発症率は、PCI施行群で8.7%(26例)に対し、CABG群では6.7%で、事前に設定されたマージン(7%)を下回り、非劣性を証明した(相対リスク差:2.0ポイント、95%CI:-1.6~5.6、P値=0.01)。
2年後の主要評価項目の発症率は、PCI施行群で12.2%(36例)、CABG施行群で8.1%(24例)で、差はみられなかった(ハザード比:1.50、95%CI:0,90~2.52、P値=0.12)。また、死亡+心筋梗塞+脳卒中の複合エンドポイントは、PCI施行群で4.4%(13例)、CABG施行群で4.7%(14例)で、差はみられなかった(ハザード比:0.92、95%CI:0.43~1.96、P値=0.83)。ただ、虚血による標的血管(target vessel)の血行再建術の実施は、PCI施行群で9.0%(26例)、CABG施行群で4.2%(12例)で、CABG群で有意に少ない結果となった(ハザード比:2.18、95%CI:1.10~4.32、P値=0.02)。
2年後の症候性のグラフト閉塞は、PCI施行群で0.3%に対し、CABG群では1.4%で、有意差はないものの、PCI施行群で少ない結果となった(P値=0.18)。
左冠動脈主幹部以外の病変数に応じて結果を検討したサブグループ解析では、左冠動脈主幹部+3枝以上の病変がある患者で、CABG群(5.8%)に比べPCI施行群(12.2%)で 、2群間に有意差がみられた(P値=0.0008)。
これらの結果から、Park氏は「SESを用いたPCIが、CABGの代わりの治療選択肢となる可能性がある」と指摘した。ただし、同試験は非劣性試験であることから、マージンが大きいと試験の限界も説明し、「この試験の結果が臨床的な方向性を決めるものではない」との見解も示した。なお、同様にPCIとDESの治療成績を比較した「SYNTAX」では、PCIのCABGへの非劣性が証明されておらず、CABG群で有意に良好な治療成績であることが報告されている。
同試験の結果は同日付の医学誌「The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE」のOnline版に掲載された。