STAR3試験 1型糖尿病患者の血糖値をインスリン注入ポンプでコントロール
公開日時 2010/07/01 04:00
1型糖尿病患者への治療に際し、インスリン注入ポンプを用いることで、良好な血糖コントロールを保つことができる可能性が示された。1年間のランダム化比較試験「STAR3」の結果から明らかになった。第70回米国糖尿病学会議(ADA)で6月29日に開かれた「Late Breaking Clinical Studies」 の中で、Richard M.Bergenstal氏が報告した。(6月29日 米国・オーランド発 望月 英梨)
試験は、1型糖尿病患者へのインスリン投与に際し、血糖モニター装置のついたインスリン注入ポンプ(SAP)を用いるのが良いのか、従来のペンなどを用いた1日頻回投与(MDI)のどちらが良好な血糖コントロールを保つ上で有用か検討する目的で実施された。
対象は、1型糖尿病患者485人。このうち、329人は成人で、156人は小児だった。インスリンアナログ製剤(遺伝子組換え)を▽インスリン注入ポンプ使用群247人▽1日頻回投与群248人――に分け、専門医の指導の下で1年間投与し、効果を比較した。主要評価項目は1年後のHbA1cの変化率。
その結果、ベースラインでともに8.3%だったHbA1cが1年後には、インスリン注入ポンプ使用群では7.5%、1日頻回投与群では8.1%で、インスリン注入ポンプ使用群で有意に低かった(P値<0.001)。小児に絞って結果をみてみると、インスリン注入ポンプ群は7.9%、1日頻回投与群では8.5%で、有意にインスリンポンプ群で強い血糖低下作用を認めた。
一方、重篤な低血糖は、インスリン注入ポンプ群で13.31イベント/100人・年、1日頻回投与群で13.48イベント/100人・年で、両群間に有意差はみられなかった(P値=0.58)。
そのほか、有意な体重増加もみられなかった。
結果を報告したBergenstal氏は「インスリン注入ポンプを用いることで、すべての年代で、HbA1cの有意な低下を認めた」と有効性を強調。HbA1cは試験開始から3カ月間で低下し、その後1年にわたり、良好な血糖コントロールが持続したとしている。
試験は同日付の「The New England Journal of Medicine」オンライン版に掲載された。