【秋アレリポート】喘息の管理指標に呼気NO濃度が有用
公開日時 2011/11/24 06:02
和歌山県立医科大学第三内科講師の杉浦久敏氏は11月10日、第61回日本アレルギー学会秋季学術集会のシンポジウム「喘息コントロールの向上ための課題と対策」で講演し、喘息の管理指標として、「呼気NO濃度測定は、非侵襲的で好酸球湿潤やステロイドの反応性を予測できる優れた方法である」と述べ、呼気NO濃度測定が有用との考えを示した。
喘息は気道の慢性炎症性疾患であることから、杉浦氏は、気道へのモニタリング法として、気道への好酸球浸潤の評価が重要であるとした。
現在、非侵襲的気道炎症モニタリング法として、呼気ガス検査、呼気凝縮液検査、誘発喀痰検査があるが、それぞれに長所、短所があることが知られている。
杉浦氏は、理想的な気道炎症マーカーとは、簡便で低侵襲性で、かつ高再現性があることと説明。気道炎症の度合いは、喘息の増悪回数とほぼ比例するとの見方を示した。
その上で、誘発喀痰検査については、海外でエビデンスが構築されていることを紹介。誘発喀痰中の好酸球数を指標として喘息管理を行った場合は、ガイドラインを用いた管理に比べ、有意に増悪回数を減少させられるとのデータを示した。
ただ、誘発喀痰検査は、他の検査に比べ、手技に熟練度が必要であり、侵襲度がやや高いこと、再現性に不確実性があることなど課題が残っていると指摘した。
これに対し、呼気NO濃度測定は、「低侵襲、簡便でリアルタイム性があり、再現性も高い」と有用性を強調。すでに、喘息患者で呼気NO濃度が上昇しているほか、コントロールが不良・増悪した症例でも濃度が上昇するなどのエビデンスが構築されているとした。特に、喘息コントロールが悪化する際の指標としての感度・特異度も他の検査に比べて高いとの認識を示した。また、気道炎症である好酸球性炎症と正の相関があるとのデータを示し、理想的な気道炎症マーカーであるとの認識を示した。
◎喘息管理の指標としての確立にはさらなる研究を
喘息管理の指標として呼気NO濃度測定を用いた場合は、増悪回数減少やステロイド使用量減量につながる可能性を示唆する報告があることを説明し、期待感を示した。ただし、有用性が報告された研究では症例数が少ないなどの課題もあり、これに否定的な報告もあることも紹介。「呼気NO濃度を指標とした喘息管理の有用性についてはさらなる検討が必要」と述べた。
ただ、現行では特異的バイオマーカーはないとされている難治性喘息に関する海外での研究では、難治性喘息患者の中でもNO濃度高値例では、NO濃度低値例に比べ、FEV1の可逆性が高く、気道過敏性も亢進しており、救命救急室やICU利用頻度が有意に高いことなどが報告されている。また呼気NOはFEV1の経年的変化との相関が示されていることから、難治性喘息での予後予測、および治療強化の必要性の予測なども含め、新展開が期待されているとした。
杉浦氏は、「現状では喘息の管理指標に用いるにはまだ検討の余地が残っているものの、難治性喘息では有用な可能性がある」と結論付けた。