生成AIで「何もかもガラガラポン」 会社変えないと生き残れない オレンジテクラボ・宮崎代表取締役
公開日時 2023/09/11 04:52
日本ファーマビジネス研究会の設立記念公開シンポジウムが9月9日、東京都内で開催され、オレンジテクラボの宮崎淳代表取締役が「生成AIとgraph neuralが変える製薬業界のビジネスプロセス」をテーマに特別講演した。宮崎氏は、2022年10月以降に巻き起こっている「第4世代・生成AI」について、「隕石が落ちた!」と表現し、教育、学習、ビジネスを含めて「何もかもがガラガラポンになる」と強調した。製薬会社向けのプロンプトを実際に例示(デモ)しながら、創薬開発やメディカルなど様々なビジネスへの影響を予測した。
特別講演した宮崎氏は、慶応義塾大学大学院で「AI並列マシンの研究」で1989年に博士(Ph.D)を取得。その後、富士ゼロックス社に28年間在籍し、早期退職後は産業総合研究所(AIST)で招聘客員研究員として従事、この間、東京工科大学、武蔵野大学等の非常勤講師を歴任した。2017年5月にAIと技術経営コンサルティングのオレンジテクラボを設立した。現在は産業技術大学院大学の非常勤講師を兼任、新潟総合学園でAIをビジネスに活用する新規大学設立プロジェクトのディレクターも務める。
宮崎氏は、大学教育における授業計画(シラバス)の作成を、生成AIで実演(デモ)してみせた。わずか数分でPC画面にシラバスが表示されることを示しながら、「大学教育も全部変わるだろうし、大学教員の質や学生の学習も変わる。小中学校の教育も変わる」と強調した。さらに、米シリコンバレーで何千という生成AIのスタートアップができている状況を紹介しながら、こうした流れは様々な産業にも波及し、製薬業界にも到達することになると見通した。
◎製薬産業が期待する創薬や薬学化合物などへの応用「今後大きな力を持ってくる」
現在の生成AIの概観については、大規模言語モデル(LLM)による「文書やコードなどのテキストを生成するAI」を軸に社会変革を起こしていると説明。製薬産業が期待する創薬や薬学化合物などの分子データを生成するAIについては、「いまのところディープマインド社のアルファフォールド(AlphaFold=タンパク質の構造予測データベース)しか見えていない」と述べながらも、「これも来ている。今後大きな力を持ってくると思う」との見解を示した。
◎トップダウンで会社を変える 「生成AIを使ってはダメ」では生き残れない
一方で現時点での生成AIの活用について宮崎氏は、「トップダウンで生成AIを使って会社全体を変えないと日本の会社は生き残れない」と指摘。「顧客情報が漏洩するから生成AIを(社内業務で)使ってはいけないというのではダメ。そうではなく、“Sandbox環境”(企業のユーザーが通常利用する領域から隔離され、保護された空間に構築された仮想環境)を使って生成AIの実験環境を作るべき。やらない手はない」と提案した。そのうえで生成AIの成果・効果については、業種・業態の効率化や事業部ごとの業務フローの見直しにより生産性が向上すると指摘。「社内データのファインチューニングを今日から始めないと追いつかない」とも述べ、ビジネス変革の必要性を訴えた。
さらに製薬企業向けのプロンプト例にも言及した。一例として、研究・新規医薬品候補の探索や創出に役立つコートを生成するとし、「抗がん剤として有望な低分子化合物を探すと指示すると、ChatGPTの機能である“Code Interpreter”に化合物の構造や活性を予測するコードを生成する」と説明。また、メディカルアフェアーズが医療関係者への情報提供やエビデンス発信に役立つコードを生成するとし、「自社製品の最新の臨床研究成果をパワーポイントにまとめると指示すると、“Code Interpreter”は学術論文や医学雑誌から情報を抽出し、スライドのテンプレートに沿って要約や図表を作成するコードを生成する」ことも例示した。
◎「Active-T」会員 日本ファーマビジネス研究会のメンバー資格得られる
なお、日本ファーマビジネス研究会は、武田薬品の在籍中は国内営業や経営戦略、製品戦略に従事し、退職後は専修大学商学部教授の高橋義仁氏、ジャフコグループ産業・ライフサイエンス投資グループプリンシバルの小林泰良氏、明治大学グローバル・ビジネス研究科専任教授の藤岡資正氏の3氏が発起人を務める。武田薬品のOBらで構成する会員制ビジネスコミュニティー「Active-T」の会員は、日本ファーマビジネス研究会のメンバー資格が得られる。