ミクス編集部「MR数調査2021年版」 MR数1年で1000人以上減 コール数より生産性重視にシフト
公開日時 2021/06/01 04:53
ミクス編集部が行った「MR数調査2021年版」で、MR総数はこの1年間で1000人以上減ったことがわかった。有効回答57社のうち、前年20年調査と比較可能な54社の合計MR数を比較した。編集部の調査では、18年度薬価制度抜本改革後の19年、20年と2年連続でMR数は各2000人以上減っていた。21年版の調査結果をみると、減少幅は直近2年間に比べて縮小したものの、MR総数の減少傾向に歯止めがかからない状況も明らかとなった。
コロナ禍で大学病院や地域基幹病院のMRに対する訪問自粛要請は継続しており、昨今のMR活動はWeb会議システムを活用したリモート面談や、Web講演会などのデジタルツールを活用した情報提供活動のインパクトが増している。ただ一方で、MRのリアル面談が減ったことで新薬の口座開拓や新規処方の獲得でパワー不足を指摘する見方も浮上している。今回の調査でも、かつてのようなコール数やリアル面談件数をMRに課す企業は明らかに減っているが、一方で、MR数の最適化と生産性のバランスを再検証する動きを各社とも強めており、「デジタル×リアルMR」をハイブリッドした、新たな情報提供活動を模索する動きが活発化の様相を呈している。
◎54社のMR数 21年は3万1914人 20年は3万2921人
ミクス編集部は毎年、原則4月1日時点のMR数(新卒入社MR含む)を調査・集計している。今回、前年調査と比較可能な製薬企業54社のMR数をみると、21年のMR数は計3万1914人で、前年(20年)の計3万2921人と比較すると、この1年でMRは1007人減った。
ただ、前年調査で国内トップクラスの2100人のMRを抱え、20年度に早期退職と転進を支援する「フューチャー・キャリア・プログラム」を導入した武田薬品は、今回の回答が「非開示」だったほか、同じく国内トップクラスのMR数をほこり、20年度に特許切れ製品を扱う部門を分社化したファイザーはアンケートを辞退するなど、実際の減少幅がさらに上振れしている可能性は高い。
なお、20年調査ではMRは前年から約2300人減(53社を比較)、19年調査では同約2500人減(50社を比較)だった。
◎「活動量に見合った適正な人員数」
21年調査を企業別にみると、MR数が前年から1人でも減ったのは39社あった。このうち100人以上減ったのは塩野義製薬(150人減)、日本イーライリリー(100人減)、MSD(100人減)―の3社となる。3社はそれぞれ本誌取材に応じ、20年度に早期退職者募集を行ったかどうかについて、塩野義製薬とMSDは募集しておらず、自然減と説明している。日本イーライリリーは、「組織変更があったのは事実」とのみ回答した。
では、自然減を穴埋めしない理由は何か。塩野義製薬は、「コロナ禍を契機に本格化した医師との面談数の減少、e-ディテールやWeb講演会など医療関係者のニーズにマッチした情報提供体制が整備されてきた」ことから、「MRの情報提供活動の現状を鑑み、活動量に見合った適正な人員数にした」と答えた。コロナ禍の中でのMRの活動量や生産性、医療関係者の情報収集手段のデジタル化を理由に挙げた格好だ。
MSDは、「市場環境、開発パイプラインに合わせて組織を最適化している」、日本イーライリリーは、「変化の激しい市場。今後も開発品や製品ポートフォリオを踏まえて適切な組織体制を構築していく」とそれぞれコメントした。コロナ禍に加えて、この数年の新薬の薬価に厳しい市場環境や、新薬開発動向が要員計画に影響していることをうかがわせる。
◎50~99人減 エーザイ、武田テバ、日本ケミファの3社
MRが50~99人減員となったのはエーザイ(86人減)、武田テバファーマ(80人減)、日本ケミファ(66人減)―の3社だった。エーザイは18~20年度まで毎年、早期退職者を募集する一方、新卒採用も多く、20年度は本調査で唯一100人超を採用した。デジタルソリューションを軸にした情報提供活動を強化しており、この方向にマッチした人財を揃えているとみられる。武田テバとケミファは、後発品市場の競争激化、コロナ禍による市場環境の変化――による収益悪化に伴う人員減となる。ケミファは20年度に早期退職者を募集した。
10~49人減は23社で、多くが自然減となる。今回、MRが減員となった企業に話を聞いたところ、「社内異動や退職者を新卒や中途採用で全て補うことなしない」(内資系企業)、「市場環境が変わり、今回は自然減を補充しなかった」(外資系企業)といった声が複数聞かれた。
一方で、MRが10人以上増えたのは6社、20人以上増は杏林製薬(20人増)、大塚製薬(23人増)、東和薬品(27人増)、帝人ファーマ(75人増)―の4社あった。このうち帝人は、19年度に医薬事業と在宅医療事業を有機的に連携させた帝人ヘルスケア社として事業を開始し、在宅医療事業の営業担当者にもMR資格を取らせている。これが今回のMR増の主な理由となる。
以下の「関連ファイル」に、21年4月のMR数の資料を掲載しました(会員のみダウンロードできます。14日間の無料トライアルはこちら)。
6月号では、薬価制度抜本改革が実施された18年4月と21年4月のMR数比較、21年の新卒採用MR数、専門MR数、メディカル部門の人員数などのほか、コロナ禍におけるMR活動やMR評価(KPI)などに関する調査結果も紹介しています。ミクスOnlineでの閲覧はこちら。