国がん 卵巣がんの早期検出実現へ 血液中マイクロRNAの組み合わせ診断モデル作成と発表
公開日時 2018/10/18 03:50
国立がん研究センターは10月17日、血液から高い精度で卵巣がんを検出する診断モデルの作成に成功したと発表した。着目したのは、血液や唾液などの体液に含まれるマイクロRNAだ。卵巣がんで有意に変化する複数のマイクロRNAを同定。それらの組み合わせを利用した統計的解析によって、早期から判別を可能にする診断モデルを作成した。国がんでは「早期診断が困難とされる卵巣がんの早期発見と治療成績向上に寄与することが期待される」としている。
マイクロRNAは、22塩基程度の小さなRNAで、近年の研究では、がん等の疾患にともなって患者の血液中で種類や量が変動することがわかっている。また血液中のマイクロRNA量は、抗がん剤の感受性の変化や転移、がんの消失等の病態の変化に相関するため、新しい診断マーカーとして期待されている。
今回の研究では、▽卵巣がん428例、▽その他のがん859例、▽がんを有さない2759例-の計4046例の血液中のマイクロRNAを網羅的に解析。卵巣がんで有意に変化する多くのマイクロRNAを同定した。そのうち10種類のマイクロRNAを組み合わせることで、患者を判別するという診断モデルを作成した。精度を検証した結果、卵巣がん患者全体の98.8%を正しくがんだと判別できたという。ステージ別にみると、ステージⅡ-Ⅳの患者群は100%、ステージⅠの患者群でも95.1%の精度で陽性と診断できたという。
卵巣がんは、年間約1万人が罹患し、約半数が命を落とす予後の悪いがん。卵巣は骨盤内に位置しているため、がんの発生初期では自覚症状に乏しく、早期診断が極めて困難であるのが現状だ。発見時にはすでに転移を伴う進行症例が6割を超えているという。このため、非侵襲的かつ簡便な早期診断方法の確立が課題となっていた。