上市迫る薬剤耐性グラム陰性菌の新規抗生物質 変わる抗生物質市場
公開日時 2014/03/07 03:50
薬剤耐性グラム陰性菌感染症の治療薬である新規抗生物質の開発が後期ステージに入り、2014年後半から15年前半には市場に参入する見通しだ。
現在、中期から後期ステージにある薬剤耐性グラム陰性菌感染症に対する抗生物質を開発している製薬企業は、Cubist Pharmaceuticals、Forest Laboratories/AstraZeneca、The Medicines、Tetraphase Pharmaceuticals、Achaogenなどだ。
薬剤耐性グラム陰性菌感染症は、生命を脅かす危険性があり、アンメット・メディカルニーズが高いことが知られている。さらに、無効な治療の減少や、集中治療室の在院日数を短縮、早期の退院を可能にし、結果として再入院率の低下など、患者のQOLや医療費削減の観点でも注目される。このような状況から、製薬企業にとっては、保険償還された上で高薬価となる可能性もある。
政府や保険担当行政官は、過去数年間にわたり、停滞する抗生物質開発に製薬企業に対して何らかのインセンティブを与え、その促進を図るための手段を講じてきた。
12年には、「いま、抗生物質開発へのインセンティブを生む法律」(The Generating Antibiotic Incentives Now Act)が連邦議会を通過。迅速審査、販売独占期間の延長、承認審査データの要件を明確にしたガイダンスなどのインセンティブを組み入れ、製薬企業が新規抗生物質の開発に取り組みやすい環境整備を進めた。
連邦議会では現在、「患者治療を前進させる抗生物質開発」(The Antibiotic Development to Advance Patient Treatment)と称する法律の制定も進める。患者数が少なく、アンメット・メディカルニーズの高い疾患の製品について、少数例のデータでも承認申請を行えることも内容に含んでいる法律案だ。
開発へのインセンティブだけでなく、製薬企業や投資家が期待するのは、市販後のインセンティブとも言える高薬価だ。製薬企業の中では、新規治療薬は、既存薬の最高価格を上回る価格の値付けの好機ととらえられている。
Cubistの既承認の重篤なグラム陽性菌感染症であるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症治療薬Cubicin(daptomicin)は、1コース(7~14日投与)で数千ドルの治療費となる。
一方、新規治療薬がすでに審査や開発後期にある中で、病院や保険支払者は、バンコマイシン静注のジェネリック医薬品(GE)がMRSAに比較的有効であることや複数の異なる先発品がすでに上市されていることから高薬価に反発することも予測される。
MedicinesのMichael Dudley研究開発担当副社長は、「新規治療薬は、グラム陽性菌治療薬と違い、MRSAのようにカルバペネム産生菌に対する適切なGEの代替品がない」と指摘しており、新規治療薬の市場での有利性に期待感を示す。
実際、CDC(米国疾病管理予防センター)の保健衛生担当官は、グラム陰性菌の脅威は、現在より重大になっていると指摘している。「薬剤耐性グラム陰性菌はほとんどすべての薬剤に耐性を持っているので、特に憂慮している」と述べている。薬剤耐性グラム陰性菌治療薬の発売後の状況が注目される。
(The Pink Sheet 3月3日号より)