ディオバン臨床研究不正 ノバルティスと白橋被告に無罪判決

公開日時 2017/03/17 03:52
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ARB・ディオバンをめぐる医師主導臨床研究でデータを改ざんし、論文に掲載させたとして医薬品医療機器等法(薬機法)違反に問われた事件で、東京地裁は3月16日、ノバルティスファーマと同社・元社員の白橋伸雄被告に無罪判決を言い渡した。検察側は、被告会社に罰金400万円、被告人に懲役2年6か月を求刑していた。辻川靖夫裁判官は、心血管イベントの水増しなどについて「意図的な改ざんであった」などと不正を認定した。ただ、論文掲載の過程自体は通常の過程と同様であり、「それ自体が購入意欲を喚起・昂進させる手段としての性質を有するとは言い難い」として、旧薬事法(現・医薬品医療機器等法)第66条1項の誇大広告に当たらないと判断した。


この事件は、京都府立医科大で実施された医師主導臨床試験「KYOTO HEART Study」のサブ解析を会社の広告資材に用いるため、白橋氏がデータを改ざんしたこと、虚偽のデータに基づいて執筆させた論文を医学誌に掲載させ、Webなどを通じて医学界に広く伝播させたことが、旧薬事法66条1項の「効能、効果に関連する虚偽の記事」に該当するか、争われた。ノバルティスファーマは、元社員への監督が不十分であったとして両罰規定により、罰金刑が求刑されていた。

問題となった試験のサブ解析では、日本人高リスク患者を対象に、Ca拮抗薬単剤群(非ARB群)とディオバンを併用する群(ARB群)を比較し、ARB群の有用性を検討した。争点となったのは、①非ARB群のイベント数の水増しの有無、②意図的な改ざんの有無、③イベント数水増しによる臨床研究結果への影響、④恣意的な2群間の割り付けと、データ解析の図表の提供の有無、⑤P値など、意図的に改ざんを加えたデータを記載した図表の提供の有無――の5点の事実認定。さらに、旧薬事法66条1項で示された「効能、効果に関する虚偽の記事」に該当するか、また被告人が改ざん業務に及んでいた場合、ノバルティスの業務に関連するか、などの法解釈が争点となった。


◎イベント数を水増し「意図的な改ざん」


判決では、心血管イベントの発生について非ARB群のイベント数を水増ししたもので、意図的な改ざんであったと認定。通常ランダムに行う投与群の割り付けも恣意的に実施。それを隠して、P値の算出や図表の提供などを行っていたとした。

その上で、論文の記載が旧薬事法66条1項で言う広告に該当するか、が争点となった。広告とは、顧客を誘引するための手段として広く世間に告げ知らせる行為とされる。66条1項では、「虚偽または誇大な記事を広告し、記述し、または流布してはならない」と記されている。

今回問題となった論文を作成、学術雑誌への投稿、掲載した一連の行為について、判決では「同雑誌の性格や掲載に至る経緯、論文の体裁、内容等を客観的にみると、研究成果の発表行為として理解される一般の学術論文の学術掲載と異なるところはなく、それ自体が購入意欲を喚起・昂進させる手段としての性質を有するとは言い難い」と説明。Webを通じた情報発信が「記述」に該当しないと判断した。


◎ノバルティス「問題の本質は医師主導臨床研究で適切な対応をとらなかったこと」


ノバルティスファーマは、「この問題の本質は、医師主導臨床研究において、弊社が適切な対応を取らなかったことにあると認識している」とし、「日本の医学・医療の信頼を大きく失わせてしまったことに対して社会的、道義的責任を感じている」と謝罪した。

すでに同社では、医師主導臨床研究での奨学寄附金による研究助成を廃止し、契約方式に改めるなど、社内改革を実施しているところ。「今後も社会的責任を果たしていくためにも企業風土・文化の改善を継続して行っていく」とした。


◎厚労省 臨床研究法案の成立で「臨床研究と製薬企業の活動の適正性確保を」


この事件について原告、被告ではないものの、刑事告発を行った経緯のある厚生労働省は、「個々の判決についてのコメントは差し控えたいが、我が国の臨床研究に対する国民の信頼を回復することが大切であると考えている。厚生労働省としては、臨床研究と製薬企業の活動の透明性確保のため、臨床研究法案を提出しており、引き続き臨床研究と製薬企業の活動の適正性の確保に努めたい」との談話を出した。
 

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