機能解剖学から読み解く頚動脈疾患とアテローム血栓症
公開日時 2011/01/27 04:00
血小板をターゲットとした治療を
第26回日本脳神経血管内治療学会学術総会
機能解剖学から読み解く頚動脈疾患とアテローム血栓症
機能解剖学からみた、アテローム血栓性脳梗塞の再発予防において求められる最適な治療とは何か。11月20日の日本脳神経血管内治療学会学術総会のランチョンセミナー「機能解剖学から読み解く頚動脈疾患とアテローム血栓症」での亀田総合病院脳神経外科部長の田中美千裕氏の講演内容を紹介する。
アテローム血栓性脳梗塞は、“血栓性”という言葉からも血栓が原因と考えられがちだが、実際は“塞栓”が原因のケースが大半を占める。
発症機序は、①血栓性(thrombotic)②塞栓性(embolic)③血行力学性(hemodynamic)――があるとされるが、塞栓性は95~98%を占めるとされている(図参照)。
血栓は、プラークの破たんをきっかけに、血管内皮細胞が損傷され、血小板の粘着と凝集により凝集される。血小板は、炎症性モジュレーターを産生し、アテローム硬化性病変の進展において重要な役割を果たすと指摘されている。
これらのことから、田中氏は「血小板は血栓形成における“司令塔”」と述べ、血栓形成における血小板が果たす役割の大きさを強調。「アテローム血栓性脳梗塞の内科的治療は、血小板をターゲットにすることが重要」とした。
CLAIR試験、CARESS試験でみられた
アスピリン+クロピドグレル併用の効果
その上で、抗血小板作用が強いアスピリン+クロピドグレル2剤併用の有用性を検討した「CLAIR」試験の結果を紹介した。
試験では、急性症候性の頭蓋内動脈または頚動脈に狭窄がある患者に対する塞栓抑制作用をアスピリン単独群(53例)②アスピリン+クロピドグレル2剤併用群(47例)――の2群間で比較した。主要評価項目は、経頭蓋超音波ドップラー法(TCD)による微小塞栓シグナル(MES)。
その結果、主要評価項目の発生頻度は、投与開始2日後で2剤併用群(14例/45例)は、アスピリン単独群(27例/50例)に比べ、有意差をもって低下させた(P値=0.025)。その相対リスク(RR)低下率は42.2%にもおよんだ。投与開始7日では、2剤併用群(10例/43例)は、アスピリン単独群(26例/51例)に比べ、相対リスクを54.4%低下させた(P値=0.0006)。
さらに、症候性頚動脈狭窄患者を対象に、MESの発生頻度を2剤併用群と、アスピリン単独群とで比較した「CARESS」試験と「CLAIR」試験の結果からメタ解析を行った結果も提示した。
解析の結果、投与開始7日後には相対リスクを46%低下させたほか、脳卒中の再発が、アスピリン単独群(108例)では6例報告されたのに対し、2剤併用群(97例)ではみられなかった。
これらの結果から田中氏は、「MESの検出は、薬物療法の有効性を評価する代替マーカーとして実用的であることを実証した」とした。
その上で、薬物療法でプラークのコントロールができる可能性を示唆し、「エビデンスに基づく抗血小板療法、内科的管理と全身の血管評価が重要」との考えを示した。