中外製薬・奥田社長 レナリスファーマ買収で腎領域パイプライン強化 sparsentan「26年申請目指す」
公開日時 2025/10/27 04:50
中外製薬の奥田修代表取締役CEOは10月24日の第3四半期決算説明会で、レナリスファーマの買収について、「腎領域は以前から強い領域であり、他の開発品もある中でパイプラインの充実を図る」と意義を強調した。レナリスファーマはIgA腎症治療薬候補・sparsentanを有している。同社は、IgA腎症を予定適応症とする核酸医薬品・sefaxersen(開発コード:RG6299)を有しており、sparsentanの追加によってIgA腎症に対して作用機序の異なる複数の治療選択肢を提供することを目指す。奥田社長は、「IgA腎症治療薬候補・sparsentanの2026年の国内申請を目指しており、ファーストインクラスの治療薬を一日でも早く患者さんに届けられるよう努めていく」と意欲をみせた。
◎買収一時金は150億円、マイルストーンに応じて最大160億円
中外製薬は同日、日本のバイオベンチャー・レナリスファーマを買収し、完全子会社化すると発表した。買収により、中外製薬は欧米でIgA腎症を適応症として承認されているsparsentanの日本、韓国、台湾における独占的な開発・販売権を取得する。sparsentanは、経口投与可能なエンドセリン受容体とアンジオテンシンⅡ受容体の双方に対して拮抗作用を有する二重拮抗薬。国内ではIgA腎症の第3相臨床試験において、25年10月に全評価対象症例の主要評価項目データ取得を完了し、25年第4四半期中にトップラインデータを公表する予定としていた。
今回の買収により、中外製薬は株式取得時の一時金として150億円に加え、株式譲渡契約に基づく価格調整を反映した金額を支払う。またsparsentanの承認進捗に応じた複数のマイルストーンにより、最大160億円や準売上高に連動した対価を支払う。
奥田CEOは「中外製薬は日本における開発や販売、マーケティングで非常に力をつけてきている。その力を活かすべく、今回の買収とsparsentanの獲得に至った。腎領域は以前から強い領域であり、他の開発品もある中でパイプラインの充実を図る意味合いもある」と意義を強調した。
◎レナリスファーマがコメントを公表「新しいビジネスモデルの可能性を提供」
レナリスファーマも同日、コメントを公表した。BTスリングスビー代表取締役会長CEO兼共同創業者名で、「レナリスファーマでのsparsentanの国内開発と中外製薬とのパートナーシップは、日本およびアジアの患者さんの医薬品アクセスの加速において新しいビジネスモデルの可能性を提供した」とのコメントを公表した。同社の島崎竜太郎最高開発責任者は「IgA腎症、FSGS、アルポート症候群といった開発プログラムの進展を通じ、希少腎疾患に苦しまれている患者さんへのアクセスを加速させる」とのコメントを寄せた。
レナリスファーマは、腎疾患領域の治療薬開発を通じて、日本やアジアにおけるドラッグ・ラグ/ロスの解消に向けて、ベンチャーキャピタルのキャタリスパシフィックとSR Oneが2023年4月に設立。米バイオベンチャーのTravere Therapeuticsからsparsentanを導入し、開発を進めていた。