厚労省 後発品ロードマップを改訂 BSの使用促進で「選定療養参考に保険給付ありかた検討」も
公開日時 2024/10/01 04:51
厚生労働省は9月30日、「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」を策定した。副次目標の設定されたバイオシミラーをめぐっては、「バイオ後続品の使用促進のための取組方針」も別添として新たに策定。普及啓発が課題となる中で、バイオシミラーへの処方の切替え等を検討するための情報として、市販後情報を含めてバイオシミラーの有効性・安全性情報を公表する取組みを25年度から開始することなどが盛り込まれた。また、バイオシミラーに対する診療報酬上の対応として、「長期収載品の選定療養も参考にしつつ、保険給付の在り方について検討する」ことも明記された。
◎後発品目標 26年度末を目途に安定供給の状況を点検、あり方検討
「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」は、後発品の使用促進に向けて金額シェアを副次目法に定めるなど新たな数値目標を定めたことを踏まえ、環境整備を進めることを盛り込んだ。ただ、供給不安が続く中で、新目標達成に向けた取組みに加え、品質確保や安定供給についての取組みを明記し、供給不安への対応を基本とすることを前面に打ち出した。2013年5月に策定された「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を改訂。安定供給の確保を重視する観点から名称も変更した。
ロードマップでは、後発品の使用促進が進む中で、「成長過程から成熟過程に入ってきたと考えられる」と指摘。「持続可能な形とするためには、後発医薬品の信頼確保と安定供給が大前提であることから、現下の供給不安の解消に引き続き全力で取り組むことが不可欠」としたうえで、未達成となっている「後発医薬品の数量シェアを23 年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」という現行の目標は、達成後も安定してその水準を保てるように29年度末に延長し、引き続き設定するとした。
さらに、「後発品の使用による医療費の適正化を不断に進めていく観点」から、「後発品の金額シェアを29年度末までに 65%以上」とする金額シェアを新たに設定。骨太方針を踏まえて、バイオシミラーについても、「29年度末までにバイオシミラーが 80%以上を占める成分数が全体の成分数の60%以上」との目標を掲げた。
現在、“29年度”を目標達成年度に掲げているが、安定供給の状況などを踏まえ、「26年度末を目途に状況を点検し、必要に応じて目標のあり方を検討する」ことも明記した。
◎使用促進へ 金額ベースでの後発品置換率情報提供など環境整備進める
「安定供給・国民の信頼確保に向けた取組み」として、品質確保と安定供給についての施策を明記した。品質確保としてはPMDAと都道府県による高リスクの製造所に対する無通告立ち入り検査や、企業による自主点検の実施、日本ジェネリック製薬協会を中心としたクオリティカルチャー醸成に向けた取組みなどを示した。安定供給をめぐっては供給不安報告、供給状況報告の仕組みの開始や安定供給確保に係るマネジメントシステム の法的枠組の検討などを列挙した。
使用促進に向けては、金額ベースでの目標が新たに設定されたことを踏まえ、保険者に金額ベースでの薬効分類別等の後発品置換率情報の提供するほか、都道府県協議会を中心として金額ベースでの薬効分類別等の後発品置換率も参考とした後発品使用促進の実施などの環境整備を進める。医療保険上の事項としては長期収載品の選定療養の導入なども明記した。
◎「バイオ後続品の使用促進のための取組方針」 医療費適正化、バイオ産業育成の観点から
別添として、新たに「バイオ後続品の使用促進のための取組方針」も策定した。バイオシミラーをめぐって副次目標が設定されたことを踏まえたもの。「医療費適正化の観点に加え、我が国におけるバイオ産業育成の観点からも使用を促進する必要がある」とした。
取組方針では、「バイオ後続品の特性や使用状況、開発状況や国民への認知度が低いという実態等を考慮することが求められる。また、他の化学合成品の後発医薬品等に見られるような現下の供給不安の状況やその原因及び使用促進策の効果等をも十分に踏まえたうえで、バイオ後続品の安定供給を確保しながら必要な促進策を策定し、講じていくことが必要」とした。
◎バイオシミラーへの処方切り替えに必要な市販後情報など公表へ 25年度から
そのうえで、施策を明記。柱の一つである「普及啓発活動」については、「バイオシミラーはがんなどの特定領域での使用が中心であることから、特定の使用者を念頭に置いた取組みが必要」とした。高額療養費制度の対象となることがあり、自己負担額が変わらず患者にメリットがないことがあるため、医療保険制度の持続性を高める観点の周知も含め継続的な啓発活動の必要性を指摘した。
医療機関においてバイオ後続品の採否や先行バイオ医薬品からバイオシミラーへの処方の切替え等を検討するための情報として、バイオシミラーの有効性や安全性等に関する情報を市販後の情報も含めて整理し公表するという取組みを25年度からスタートすることも盛り込んだ。また、国民の理解を深め、バイオシミラーの認知度向上を目的として、啓発資材や各種調査結果等を掲載した一元的な情報サイトを厚生労働省ホームページに構築する方針も示した。
また、保険者インセンティブ制度において 保険者によるバイオ後続品の普及啓発についての指標を追加することを検討し、25年度中に結論を得ることも明記した。このほか、「安定供給の確保」、「使用促進に向けた制度上の対応」、「国内バイオ医薬品産業の育成・振興」も柱に据えた。
◎バイオシミラー「長期収載品の選定療養も参考にしつつ、保険給付の在り方について検討」
バイオ医薬品は10月からスタートする選定療養の対象となっていないが、「有効性評価が十分でない最先端医療等についての保険外併用療養費制度の見直しとあわせて、バイオ後続品について、国民皆保険を堅持しつつ、患者の希望に応じて利用できるよう、令和6年10 月から施行される長期収載品の選定療養も参考にしつつ、保険給付の在り方について検討を行う」ことも明記した。
◎北川委員 バイオシミラーの普及啓発「国をあげた取組みを」
厚労省は同日開かれた社会保障審議会医療保険部会にロードマップの改訂を報告した。渡邊大記委員(日本薬剤師会副会長)は、「今まで現場においては、金額シェアを考えてこなかった。具体的な施策をあわせてご提示いただくことによって対応していきたい」と述べた。
バイオシミラーについて渡邊委員(日薬副会長)は、「後発品の置換という考え方はしにくい部分がある。今後新しく使っていく患者さん等々に関してドクター等と連携した中でバイオシミラーを使っていくという部分を推進していかなければならないと思う。今後の取り組みに関しては行政と医師、薬剤師と施策を図っていく必要があるのではないか」と述べた。
北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は、「後発品は医療費適正化の観点から大変重要で、協会けんぽとしても大変力を入れて普及に努めてきた。ただ、普及啓発は関係する国、自治体、医療関係者含めた協力が不可欠。供給不足もあるが、この流れは一層加速していかなければいけない」と強調。特に、バイオシミラーについて言及。「まだまだ国民の理解が足りていない。バイオ医薬品に関しては高額な製品、重篤な治療現場でのお話になってしまうことから、なかなかメリットというものを患者の皆様に体感していただくというのが、後発品一般に関してよりも一段。二段段難しいと認識している。こうした点も踏まえて、医療費適正化に向かうような普及啓発活動を、国を挙げて考えて進めていっていただければ」と述べた。医療費適正化に向けてはフォーミュラリ活用の有用性にも触れた。
◎第4期医療費適正化基本方針 リフィル処方箋の具体的な指標の設定検討を
同日の社保審医療保険部会では、第4期医療費適正化基本方針をめぐり、リフィル処方箋について「具体的な指標の設定を検討し、必要な対応を速やかに行う」ことを追記することも報告された。今年6月に開催されたデジタル行財政改革会議で、岸田首相から「リフィル処方(中略)のKPI(重要業績評価指標)の設定と進捗モニタリング・改善に取り組む」よう指示があったことを踏まえたもの。「“リフィル処方箋については、保険者、都道府県、医師、薬剤師などの必要な取組を検討し、実施することにより活用を進める必要がある”と記載されていることを踏まえたうえで、今後、具体的な指標の設定を検討し、必要な対応を速やかに行う」とする。
佐野雅宏委員(健康保険組合連合会会長代理)は、「普及に向けた第一歩としては評価するが、デジタル行財政改革会議においてリフィル処方のKPI設定と進捗モニタリング・改善に取り組むと指摘されていることについて重く受け止め、具体的な普及のための取り組みをぜひ加速をさせていただきたい」と述べた。
城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「薬の処方は、通常の処方、リフィル処方、さらには分割調剤、そして長期処方がある。ただし患者さんは、それぞれの処方がどういう役割をしているのか、その正確なご理解はまだまだであろうと思っている。まずは正確な情報の周知の検討を考えていかれるのがよろしいのではないか」と述べた。