厚生労働省は9月24日、18製品の適応追加などを承認した。大塚製薬のレキサルティ錠・OD錠に国内初のアルツハイマー型認知症(AD)に伴うアジテーションが追加されたほか、尿路上皮がん1次治療に対するアステラス製薬の抗Nectin-4抗体微小管阻害薬複合体・パドセブ点滴静注用と、MSDの抗PD-1抗体・キイトルーダ点滴静注との併用療法、中外製薬の脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬・エブリスディドライシロップを未発症の段階から使用可能とすることなどが承認された。
適応追加などが承認された製品は次の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)。薬効分類及び投与経路順に記載。
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レキサルティ錠1mg、同2mg、同OD錠0.5mg、同OD錠1mg、同OD錠2mg(ブレクスピプラゾール、大塚製薬):「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。薬効分類117。
抗精神病薬。今回追加された対象疾患は「アルツハイマー型認知症(AD)に伴うアジテーション」のこと。用法・用量は「通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回0.5mgから投与を開始した後、1週間以上の間隔をあけて増量し、1日1回1mgを経口投与する。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日1回2mgに増量することができるが、増量は1週間以上の間隔をあけて行うこと」となり、既承認の統合失調症やうつ病・うつ状態とは異なる。
レキサルティは、日本でADに伴うアジテーションを有する初の治療薬となった。なお、添付文書の「効能又は効果に関連する注意」において、投与にあたっては、臨床試験成績などを踏まえ専門医との連携のもとで投与患者を慎重に判断する旨などが注意喚起されている。
ADに伴うアジテーションは、攻撃的な症状と非攻撃的な症状を含み、国際老年精神医学会において、徘徊や同じ動作の反復などの活動亢進、攻撃的発言または攻撃的行動のうち少なくとも1つ以上の症状からなり、患者の日常生活、社会生活、人間関係のいずれかに支障を来した状態と定義されている。これらの症状は、アルツハイマー型認知症患者の約半数で認められ、介護者の負担を重くし、患者自身や家族、介護者の生活の質を低下させるとともに、患者が家族と同居できず介護施設へ入居せざるを得ない要因の一つとなっている。
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エブリスディドライシロップ60mg(リスジプラム、中外製薬):「脊髄性筋萎縮症」を効能・効果とし、生後2カ月未満の小児用量を追加する新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(令和13年6月22日まで)。薬効分類119。
中枢神経系及び全身のSMNタンパクレベルを増加させるように創製されたSMN2スプライシング修飾薬。運動神経及び筋肉機能をよりよくサポートするため、SMN2遺伝子から機能性のSMNタンパクの産生を増加するように設計されている。
これまでの効能・効果の「脊髄性筋萎縮症(遺伝子検査により発症が予測されるものを除く)」から、「遺伝子検査により発症が予測されるものを除く」を削除して効能・効果を「脊髄性筋萎縮症」とし、脊髄性筋萎縮症(SMA)の未発症の段階から治療を開始できるようになった。なお、SMA未発症の適応を持つ薬剤にはスピンラザ髄注やゾルゲンスマ点滴静注があるが、エブリスディは経口投与の治療選択肢となる。
また、エブリスディはこれまで生後2カ月以上の患者を適応としていたが、今回、生後2カ月未満の患者の用法・用量も追加された。生後2カ月未満に対する用法・用量は、「通常、生後2カ月未満の患者にはリスジプラムとして、0.15mg/kgを1日1回食後に経口投与する」。
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ユバンシ配合錠(マシテンタン/タダラフィル、ヤンセンファーマ):「肺動脈性肺高血圧症」を効能・効果とする新医療用配合剤。再審査期間は4年。薬効分類219。
エンドセリン受容体拮抗薬・マシテンタン10mgとホスホジエステラーゼ5阻害薬・タダラフィル40mgとの固定用量配合剤。用法・用量は、「通常、成人には1日1回1錠(マシテンタンとして10mg及びタダラフィルとして40mg)を経口投与する」。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療では、症状をコントロールするため、作用機序の異なる複数の治療薬を併用することがある。今回2つの治療薬を配合剤とすることで、PAH患者に新たな治療選択肢を提供するだけでなく、服薬の負担軽減という患者ニーズにも応える。
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ジャカビ錠5mg、②同錠10mg、③同内用液小児用0.5%(ルキソリチニブリン酸、ノバルティス ファーマ):「造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」を効能・効果とし、小児用量を追加する、①②は新効能・新用量医薬品、③は新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(令和15年8月22日まで)。薬効分類399。
JAK阻害薬。造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)に対し、ジャカビ錠5mg、同10mgに12歳未満の用法・用量が追加された。服用しやすいように内用液も追加された。これまでGVHDに対しジャカビは成人及び12歳以上を適応としていた。
用法・用量は、6歳以上12歳未満の小児は「ルキソリチニブとして1回5mgを1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。患者の状態により適宜減量する」。内用液のみ6歳未満の用法・用量を持ち、「通常、6歳未満の小児にはルキソリチニブとして1回4mg/m2を1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。患者の状態により適宜減量する」となる。
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リンヴォック錠7.5mg、同15mg、同30mg(ウパダシチニブ水和物、アッヴィ):「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量医薬品。再審査期間は、残余(2028年1月22日まで)。薬効分類3999。
JAK阻害剤。アトピー性皮膚炎に対する用法・用量が「通常、成人及び12歳以上かつ体重30kg以上の小児には15mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて30mgを1日1回投与することができる」に変更され、12歳以上かつ体重30kg以上の小児に30mg1日1回投与の選択肢が追加された。
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タフィンラーカプセル50mg、②同カプセル75mg、③同小児用分散錠10mg(ダブラフェニブメシル酸塩、ノバルティスファーマ):「BRAF遺伝子変異を有する低悪性度神経膠腫」を効能・効果とする①②新効能医薬品、③新効能・新用量・剤型追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(2033年11月23日まで)。薬効分類429。
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メキニスト錠0.5mg、②同錠2mg、③同小児用ドライシロップ4.7mg(トラメチニブジメチルスルホキシド付加物、ノバルティスファーマ):「BRAF遺伝子変異を有する低悪性度神経膠腫」を効能・効果とする①②新効能医薬品、③新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(2033年11月23日まで)。薬効分類429。
タフィンラーはBRAF阻害剤。メキニストはMEK阻害剤。新効能の「神経膠腫」は、最も多い小児中枢神経系腫瘍で、小児脳腫瘍全体の約半分を占める。神経膠腫は、低悪性度(グレード1および2)または高悪性度(グレード3および4)のいずれかに分類される。BRAFV600E変異陽性の小児低悪性度神経膠腫(pLGG)は、生存転帰(OS/PFS)の不良と関連し、pLGGの約15%~20%に認められる。
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アラグリオ顆粒剤分包1.5g、②同内用剤1.5g(アミノレブリン酸塩酸塩、SBIファーマ):「経尿道的膀胱腫瘍切除術時における筋層非浸潤性膀胱がんの可視化」を効能・効果とする新用量・その他の医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は①②残余(2027年9月26日まで)。薬効分類729。
光線力学診断用剤。用法・用量をこれまでの、膀胱鏡挿入「3時間前(範囲:2~4時間前)」から「2~8時間前」に変更し、投与できる時期が広がった。手術前の投与タイミングが柔軟になり、利便性の向上が期待される。
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ロゼバラミン筋注用25mg(メコバラミン、エーザイ):「筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制」を効能・効果とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類119。
メコバラミンの高用量製剤。用法・用量は、「通常、成人には、メコバラミンとして50mgを1日1回、週2回、筋肉内に注射する」。
メコバラミンのALSの病態における作用機序は解明されていないが、非臨床研究の結果から、神経保護作用、神経軸索再生作用により有効性を示す可能性が示唆されている。
承認申請は、徳島大学の梶龍兒特命教授(主任研究者)、徳島大学大学院の和泉唯信教授(治験調整医師)、千葉大学大学院の桑原聡教授(治験調整医師)らの研究チームが医師主導治験として実施した、発症早期のALS患者に対する高用量メコバラミンの有効性の検証と安全性の確認を目的とする、高用量メチルコバラミン(メコバラミン)のALSに対する第3相試験(JETALS)の結果に基づく。エーザイは15年5月にALSを対象疾患に高用量メコバラミンの新薬承認申請を行ったが、追加試験が必要との判断により、16年3月に申請を取り下げた。その後、JETALSで良好な臨床試験結果が得られたことを受け、エーザイが承認申請した。
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キドパレン輸液(-、大塚製薬工場):「経口・経腸管栄養補給が不能又は不十分で、経中心静脈栄養に頼らざるを得ない慢性腎不全患者(高カリウム血症、高リン血症の患者又はそのおそれのある患者に限る)に対する水分、電解質、カロリー、アミノ酸、ビタミン補給」を効能・効果とする類似処方医療用配合剤。再審査期間なし。薬効分類3259。
用法・用量は、「用時に上下2室の隔壁と上室内にある黄褐色の小室を同時に開通し、十分に混合して使用する。通常、成人には1050mLの維持量を24時間かけて中心静脈内に持続点滴注入する。本剤は、高濃度のブドウ糖含有製剤なので、特に投与開始時には耐糖能、肝機能等に注意する。低速度(目安として維持量の半量程度)で投与開始し、徐々に1日当たりの投与量を漸増して維持量とする。なお、症状、年齢、体重に応じて適宜増減する」。
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イノソリッド配合経腸用半固形剤(-、イーエヌ大塚製薬):「一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用すること」を効能・効果とする類似処方医療用配合剤。再審査期間なし。薬効分類3259。
用法・用量は「通常、成人標準量として1日900~1500g(900~1500kcal)を胃瘻より胃内に1日数回に分けて投与する。投与時間は100g当たり2~4分(300g当たり6~12分)とし、1回の最大投与量は600gとする。また、初めて投与する場合は、投与後によく観察を行い臨床症状に注意しながら増量して数日で標準量に達するようにする。なお、年齢、体重、症状及び栄養状態により投与量、投与時間を適宜増減する」。
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ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ、同160mgオートインジェクター(ビメキズマブ(遺伝子組換え)、ユーシービージャパン):「化膿性汗腺炎」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(2030年1月19日まで)。薬効分類399。
ヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体。IL-17AのみならずIL-17Fも選択的に阻害することが特長で、IL-17Aのみの阻害よりさらに大きな炎症抑制が期待されている。
今回追加された化膿性汗腺炎に対するその用法・用量は「通常、成人には、1回320mgを初回から16週までは2週間隔で皮下注射し、以降は4週間隔で皮下注射する。なお、投与間隔は患者の状態に応じて適宜2週間隔又は4週間隔を選択することができる」。
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リツキサン点滴静注100mg、同500mg(リツキシマブ(遺伝子組換え)、全薬工業):「難治性のネフローゼ症候群(ステロイド抵抗性を示す場合)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(令和6年8月28日まで)。薬効分類429。
抗CD20モノクローナル抗体。リツキサンはこれまで、難治性のネフローゼ症候群に対し、「頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合」で承認されていたが、今回、「ステロイド抵抗性を示す場合」にも使えるようになった。
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パドセブ点滴静注20mg、同30mg(エンホルツマブベドチン(遺伝子組換え)、アステラス製薬):「根治切除不能な尿路上皮がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。優先審査。再審査期間は残余(2029年9月26日まで)。薬効分類429。
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キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「根治切除不能な尿路上皮がん」を効能・効果とする新効能医薬品。優先審査。薬効分類429。
パドセブはネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体(ADC)。キイトルーダはがん免疫療法薬の抗PD-1抗体。今回、根治切除不能な尿路上皮がん(1次治療)に対し、両剤の併用療法が可能になった。アステラス製薬は承認取得にあたり、「本併用療法は、根治切除不能な尿路上皮がんに対する1次治療における標準治療である、白金製剤を含む化学療法に代わる、日本で最初の治療選択肢となる」とし、治療にパラダイムシフトをもたらす可能性があるとしている。
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献血ヴェノグロブリンIH10%静注0.5g/5mL、同2.5g/25mL、同5g/50mL、同10g/100mL、同20g/200mL(ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン、日本血液製剤機構):「下記の臓器移植における抗体関連型拒絶反応の治療:腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類634。
今回追加された効能の用法・用量は、「通常、人免疫グロブリンGとして、1日あたり1回1000mg(10mL)/kg体重を2回点滴静注する。ただし、患者の年齢及び状態に応じて適宜減量する。なお、必要に応じて追加投与する」で、直接静注する場合は「きわめて緩徐に行うこと」。
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ノボセブンHI静注用1mgシリンジ、同2mgシリンジ、同5mgシリンジ(エプタコグアルファ(活性型)(遺伝子組換え)、ノボノルディスクファーマ):「グランツマン血小板無力症患者の出血傾向の抑制」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。薬効分類634。
遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤。本剤はこれまで、グランツマン血小板無力症に対し、「血小板に対する同種抗体を保有し、血小板輸血不応状態が過去又は現在みられるグランツマン血小板無力症患者の出血傾向の抑制」で承認されていた。今回、「血小板に対する同種抗体を保有し、血小板輸血不応状態が過去又は現在みられる」の部分が削除され、限定がなくなった。
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トレプロスト吸入液1.74mg(トレプロスチニル、持田製薬):「間質性肺疾患に伴う肺高血圧症」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類219。
プロスタグランジンI2誘導体製剤。今回追加された適応の用法・用量は「通常、成人には、1日4回ネブライザを用いて吸入投与する。1回3吸入(トレプロスチニルとして18μg)から投与を開始し、忍容性を確認しながら、3日以上の間隔で、1回1吸入ずつ、最大12吸入(トレプロスチニルとして72μg)まで漸増する。忍容性がない場合は減量し、1回最小量は1吸入とすること」で、既承認の肺動脈性肺高血圧症とは異なる。
トレプロストは注射液と吸入液があるが、利便性の高い吸入液は22年12月に肺動脈性肺高血圧症の適応で承認された。間質性肺疾患に伴う肺高血圧症が承認されれば2つ目の適応となる。
なお、
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