経口新型コロナ治療薬が重症化リスク因子のある患者の25.6％に処方されていることがわかった。これは７月８日から14日の１週間の処方結果。重症化リスク因子のある患者に処方された経口新型コロナ治療薬は、ゾコーバが51.6％、ラゲブリオが39.6％、パキロビッドが8.8％――で、これまで最も処方されていたラゲブリオに代わってゾコーバがシェアトップとなり、過半数も超えた。重症化リスク因子のない患者に対して経口新型コロナ治療薬が処方される場合、その９割前後にゾコーバが処方されているが、重症化リスク因子のある患者に対してもゾコーバの処方が拡大しているとみられる。

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新型コロナの感染者数が急増し、第11波に入ったとの見方も出ている。そこでミクス編集部は、エムスリーが独自に構築したリアルワールドデータベース「JAMDAS」を用いて、新型コロナの患者数（＝病医院で新型コロナ陽性と確認された患者数）の推移や、経口新型コロナ治療薬３剤の処方動向を確認した。

◎患者全体　経口新型コロナ薬の処方率は10～11％

この１カ月の週ごとの新型コロナ患者数と、経口新型コロナ治療薬の処方患者数は、６月10日の週は患者数9296人、処方患者数1006人（処方率10.8％）、17日の週は同１万434人、1044人（10.0％）、24日の週は同１万2896人、1340人（10.4％）、７月１日の週は同１万7417人、1909人（11.0％）、８日の週は同２万2572人、2480人（11.0％）――だった。

処方率は10～11％でほぼ変化はなく、患者数及び処方患者数が週を追うごとに増加していることが確認できた。なお、これらの患者数は拡大推計したものではなく、JAMDASで得られた実数となる。

◎重症化リスクある患者　約４人に１人に経口新型コロナ薬を処方　４月以降

次に、▽65歳以上、▽BMI 30以上、▽高血圧・糖尿病・悪性腫瘍などの持病がある――のいずれかに該当する患者を「重症化リスク因子のある患者」として市場動向を見てみる。６月10日の週は患者数2003人、処方患者数527人（処方率26.3％）、17日の週は同2183人、568人（26.0％）、24日の週は同2695人、657人（24.4％）、７月１日の週は同3650人、1012人（27.7％）、８日の週は同4915人、1256人（25.6％）――だった。重症化リスク因子のある患者の約４人に１人に経口新型コロナ治療薬が処方されている状況が見て取れる。

◎ゾコーバの処方シェア拡大　患者負担額も影響か

重症化リスク因子のある患者に、どの経口新型コロナ治療薬が処方されているのかを見てみる。ラゲブリオは、一定の公費負担があった３月末まで６割前後のシェアを獲得。公費負担が終了した４月以降も週によってバラツキはあるものの５割強のシェアを維持していた。

しかし、６月に入ってから４割台となり、６月24日の週にはラゲブリオ41.2％、ゾコーバ46.3％とシェアが逆転。７月１日の週はラゲブリオ43.8％、ゾコーバ47.3％、８日の週はラゲブリオ39.6％、ゾコーバ51.6％――と両剤の差が広がり、直近ではゾコーバが過半数のシェアを獲得するに至った。

新型コロナは４月以降、通常の医療体制に戻った。これにより治療薬の窓口負担額は３割負担の患者でゾコーバが約15000円、ラゲブリオは約２万8000円、パキロビッドは約２万9000円となった。この負担額の違いが処方動向に影響している可能性がありそうだ。また、エムスリーは、「重症化リスク因子のある患者を対象にしたゾコーバの重症化抑制効果に関する研究で、有意に入院イベントを抑制したとの結果が得られており、これもゾコーバの処方増の要因のひとつとみられる」と話している。

◎重症化リスク因子のない患者への処方率は５～６％

一方、重症化リスク因子のない患者に対する経口新型コロナ治療薬の処方率は４月以降、５～６％で、その９割前後にゾコーバが処方されている。直近の７月８日の週の薬剤別処方シェアは、ゾコーバが91.9％、ラゲブリオが6.0％、パキロビッドが2.1％――だった。なお、JAMDASの特性上、喫煙など一部の重症化リスク因子は抽出できないため、喫煙者などもリスク因子なし患者としてカウントされる場合がある。