ミクス編集部がまとめた「製薬企業CM好感度ランキング・2023年10～12月期」（協力：CM総合研究所）によると、「ＡＩ創薬への挑戦」を印象付けた中外製薬が企業イメージ部門の第1位となった。“創造で、想像を超える”というメッセージが見事に企業イメージとマッチした。疾患啓発系CMでは、帯状疱疹をテーマにしたグラクソ・スミスクラインがランクインした。一方、OTCを中心とした医薬品関連ランキングでは、アリナミン製薬の「ベンザブロック」が人気を集めた。

「製薬企業CM好感度ランキング」では、製薬企業のビジョンやメッセージが込められたCMを通じて、視聴者への浸透をランキング形式で分析した（前回23年7-9月期はこちら）。23年10-12月期調査の対象期間は23年9月20日～12月19日、放送母数3522商品、モニター数延べ9000人のデータを集計した。

◎企業イメージ部門　抗体創薬支援技術をモチーフにした新バージョンも

企業イメージ部門1位の中外製薬のCMは俳優の松坂桃李さんを起用し、スローガンの「創造で、想像を超える。」を訴えた。抽象的な空間と現実が交差するアート性の高い映像や音楽が印象的で、23年11月からは「AI創薬」をテーマにした新たなバージョンのCMを公開。荒野にそびえるモノリスに無数の配列が浮かび上がる―という展開で同社独自のAIを用いた抗体創薬支援技術をモチーフに、AIと研究員、デジタル技術と創薬技術の融合を表現した。

◎企業イメージ２位　ADC技術をテーマにした第一三共　定番CMも上位に

2位の第一三共は11年ぶりとなる企業CMを制作し、23年10月から放映開始した。同社が強みとする抗体薬物複合体(ADC)技術によるがん治療の未来を描く。「家族の日々」編では、がんの治療に臨む母親と、帰りを待つ父と娘の日常を通じて、医薬品や治療の先にある患者とその家族の姿を伝え、サイエンスの力で届けたい希望を表現。音楽の展開とともに現れるスローガン「サイエンス。それは、希望。」が力強く訴えかけた。

定番のCMソングや出演者が登場する作品もランク入りした。３位のニプロは「♪きみの元気は僕の元気さ　ファイト！」の耳に残るCMソングをバックに医療現場の働き方改革や医薬品研究を支える取り組みを紹介。４位の東和薬品は04年からイメージキャラクターを務めるタレントの黒柳徹子さんと、21年に加わったプロフィギュアスケーターの羽生結弦さんのコンビでアピール。製造工程や品質試験の徹底した管理体制や、独自のサプライチェーンによる安定供給を掲げる「東和品質」への思いを訴えた。

◎疾患啓発系CMでは帯状疱疹啓発がランクイン　患者目線で疾患の早期発見促す

疾患啓発系CMでは帯状疱疹啓発をテーマにしたグラクソ・スミスクラインがランクイン。これまではアニメCMが中心だったが、23年7月から俳優の風吹ジュンさんと井上真央さんが親子役で出演。バージョンによって母親と娘それぞれの目線で物語が展開して「家族で話そう、帯状疱疹。」のメッセージを訴える。好感度アンケートでは「通院していなければわからないような情報がCMで流れているのは良い」(50代女性)との意見が寄せられた。

医療機器メーカー・エドワーズライフサイエンスの心臓弁膜症の疾患啓発もランク入り。俳優の梅沢富美男さんが息切れや動悸、胸の痛みを訴える高齢者に「心臓弁膜症じゃないか？」「かかりつけ医で心音チェック」と促す。健康な心音と心臓弁膜症の心音を聞き比べるバージョンもあり、60代以上の女性に支持された。

◎OTCは「ベンザブロック」がトップ　風邪薬が上位で季節の変わり目に訴求

OTC医薬品を中心とした医薬品関連では「あなたの風邪はどこから？」と鼻、のど、熱の風邪の諸症状に合わせたラインナップをそろえる「ベンザブロック」(アリナミン製薬)が首位に。冬の定番ともいえるCMで、放送回数でも圧倒した。俳優の綾瀬はるかさんを筆頭に、人気の声優や俳優、アイドルが共演して評価を集めた。

若い世代を中心に人気を集めたのは2位の「ジキニン」(全薬工業)。アイドルグループ・なにわ男子の大橋和也さんがコミカルに「ジキニンでスー」のポーズを決め、18～24歳の独身女性が支持した。落語家の立川志の輔さんが出演する「龍角散」は６０歳以上の女性から多く支持され、３位に入った。

今回の調査期間は秋から冬にかけて風邪が流行する季節と重なり、トップ３のほか４位「ルル」(第一三共ヘルスケア)や６位「パブロン」(大正製薬)など、トップ10で風邪薬のCMが目立った。また、乾燥する時季を象徴して、保湿クリームやリップクリームのCMも上位に食い込んだ。