SABCS 2022 カミゼストラントがER陽性HER2陰性の進行性乳がんで無増悪生存期間を有意に延長
公開日時 2022/12/16 04:51
次世代型の選択的エストロゲン受容体抑制薬(SERD)・カミゼストラントが、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性の閉経後進行性乳がんにおいて、フルベストラントに比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に延長させた。カミゼストラントの第2相試験「SERENA-2」の結果から明らかになったもの。「サンアントニオ乳がんシンポジウム2022」(SABCS 2022)においてスペインのVall d’Hebron University HospitalのMafalda Oliveira氏が12月8日のGeneral Sessionで報告した。(メディカルライター/ヘルスケアビジネスコンサルタント 森永知美)
ホルモン受容体陽性HER2陰性の乳がんでは、多くの場合、選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)やアロマターゼ阻害薬(AI)など、腫瘍の増殖を促進するERの活性を阻害する治療薬が用いられる。しかし殆どの腫瘍が最終的に内分泌療法に耐性を獲得し、ER遺伝子のESR1に変異が起こる。フルベストラントなどのSERDは、このような場合にER活性を阻害することが可能とされる。
本試験の対象は、ER陽性HER2陰性の閉経後進行性乳がんで、フルベストラントによる単剤療法の候補患者であった。主な適格基準は、①1ライン以上の内分泌療法後に再発または進行、②進行性乳がんに対するフルベストラントまたは経口SERDの治療歴がない、③進行性乳がんに対する内分泌療法が1ライン以下、④進行性乳がんに対する化学療法が1ライン以下-など。
2020年5月~2021年8月までに240例が登録され、カミゼストラント75 mg群(74例)、カミゼストラント150 mg群(73例)、カミゼストラント300 mg群(20例)、フルベストラント群(73例)の4群にランダム化された(カミゼストラント300 mg群は早期中止。毒性の問題ではない)。層別化因子はCDK4/6阻害薬の治療歴有無、および肺/肝転移の有無であった。なお、本試験はカミゼストラントとフルベストラントとを比較するものであり、カミゼストラントの各用量間の優劣を検討するものではない。
◎主要評価項目はPFS 副次評価項目はCBR24、ORR、OS、安全性
主要評価項目はPFS(RECIST v1.1で治験担当医師が評価)、副次評価項目は24週目の臨床ベネフィット率(CBR24)、奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、安全性であった。またトランスレーショナルの評価項目として、ESR1遺伝子変異を含む経時的ctDNA解析、経時的CTC解析を行っていく。
ベースラインの患者特性は、年齢中央値が60.0歳、94.2%が白人、58.3%が肺/肝転移を伴っていた。ESR1遺伝子変異を同定した割合は全体で36.7%だったが、フルベストラント群は47.9%と、カミゼストラントの2群より高い傾向があった。進行性乳がんにおける治療歴は化学療法が19.2%、AIが63.3%、SERMが5.0%、CDK4/6阻害薬の治療歴を有する割合は49.6%だった。
◎PFSはカミゼストラント75 mg群、150 mg群とも有意に延長
PFSは、カミゼストラントの75 mg群および150 mg群の両群がフルベストラント群と比べて有意に延長した。PFS中央値はフルベストラント群が3.7カ月だったのに対し、カミゼストラント75 mg群は7.2カ月(ハザード比[HR] 0.58、95% CI: 0.41 – 0.81、p=0.0124)、カミゼストラント150 mg群は7.7カ月(HR 0.67、95% CI: 0.48 – 0.92、p=0.0161)だった。感度解析として行った盲検下独立中央判定(BICR)の評価においても、カミゼストラントの2群はフルベストラント群より有意に延長していた。
◎サブグループ解析でもカミゼストラントの両群は高リスク集団においてPFS延長を示す
サブグループにおける解析の結果、カミゼストラントの両群は高リスクの集団においてもPFSの延長を示した。CDK4/6阻害薬の治療歴を有する集団では、PFS中央値がフルベストラント群で2.1カ月だったのに対し、カミゼストラント75 mg群5.5カ月(HR 0.49、95% CI: 0.31 – 0.75)、カミゼストラント150 mg群3.8カ月(HR 0.68、95% CI: 0.44 – 1.04)で、カミゼストラントは2群ともフルベストラント群より延長する傾向が示された。
肺/肝転移を有する集団においても、PFSはカミゼストラントの両群がフルベストラント群より長い傾向があった(PFS中央値:フルベストラント群2.0カ月、カミゼストラント75 mg群7.2カ月[HR 0.43、95% CI: 0.28 – 0.65]、カミゼストラント150 mg群5.6カ月[HR 0.55、95% CI: 0.37 – 0.82])。一方、肺/肝転移がない集団では群間差は観察されなかった。
ベースラインでESR1遺伝子変異が同定された集団のPFS中央値は、フルベストラント群が2.2カ月だったのに対し、カミゼストラント75 mg群は6.3カ月(HR 0.33、95% CI: 0.18 – 0.58)、カミゼストラント150 mg群は9.2カ月(HR 0.55、95% CI: 0.33 – 0.89)で、カミゼストラント群はいずれも延長していた。