20年1~3月の開業医市場 前同比5.1%減 薬価改定前の買い控え、コロナ受診抑制も影響
公開日時 2020/05/27 04:51
IQVIAは5月26日、2020年1~3月(19年度・第4四半期)の国内医療用医薬品市場が薬価ベースで2兆4915億円、前年同期比0.2%増だったと発表した。100床以上の病院市場は同4.3%増だった一方で、100床未満の開業医市場は5.1%減、主に調剤薬局で構成する「薬局その他」市場は1.7%減だった。20年4月実施の薬価改定(薬剤費ベースで平均4.38%引下げ)を前に20年1~3月期に買い控えが起こった。加えて、新型コロナウイルス感染症が感染拡大した3月単月は、緊急性の低い疾患や軽症患者での受診抑制も影響した可能性がある。
文末の「関連ファイル」に19年度の市場規模や売上上位10製品の売上データに加え、四半期ごとの市場規模や製品売上の推移をまとめた資料を掲載しました(ミクスOnlineの有料会員のみ閲覧できます)。
19年度の四半期ごとの伸び率をみると、19年4~6月期は前年同期比2.3%増、7~9月期は8.9%増、10~12月期は0.6%増、20年1~3月期は0.2%増――だった。19年10月の消費税率引上げに伴う薬価改定を前に7~9月期の仮需がみられる一方で、仮需後の数量減の影響も確認できる。20年1~3月期は通常改定前の買い控えなどが起こったとみられる。
市場別にみると、病院市場は同4.5%増、10.5%増、2.7%増、4.3%増――と推移した。高額なスペシャリティ領域製品を扱うため、使用数量を都度納入することが多く、極端な数量減がないことが確認できる。7~9月期の二ケタ増は、10月の消費税率引上げに伴う改定で新薬創出等加算品で薬価が最大1.85%引き上がることを前にした仮需とみられる。
開業医市場は同0.5%増、9.9%増、2.4%減、5.1%減――、薬局その他市場は同0.7%増、6.3%増、0.2%減、1.7%減――とそれぞれ推移した。特に20年1~3月期の市場縮小の大きさがわかる。20年4~6月期は薬価改定後の需要増と、新型コロナによる受診抑制の影響がどのように反映されるか注目される。
■19年度も10兆円超の市場形成 前年度を3000億円余上回る
同社はこの日、19年度(19年4月~20年3月)の国内医療用薬市場データも発表した。19年度の市場規模は10兆6294億円、前年同期比2.9%増で、額では3000億円余り増えた。10兆円超は5年連続となる。病院市場は4兆7925億円(5.4%増)、開業医市場は2兆1117億円(0.5%増)、薬局その他市場は3兆7251億円(1.2%増)――で、3市場ともすべて前年度を上回るのは17年度以来となる。
■製品売上1位はキイトルーダ 再算定あっても2ケタ成長
製品売上上位10製品をみると、1位はがん免疫療法薬のキイトルーダで売上1358億円(前年同期比55.2%増)の大幅増だった。前年度6位から一気にトップにたった。抗腫瘍薬市場でもトップ製品となった。非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、PD-L1陽性なら単剤で、陰性でも標準化学療法との併用でいずれも1次治療から使えるようになったことが急成長の主因となる。
キイトルーダの四半期ごとの売上推移は、19年4~6月期は315億円(64.1%増)、7~9月期は372億円(84.0%増)、10~12月期は346億円(50.0%増)、20年1~3月期は323億円(29.7%増)――だった。19年10月の増税改定で薬価が1.85%上がり、20年2月には特例拡大再算定で薬価が17.5%下がり、20年4月改定では2月の薬価からさらに20.9%下がった。それでも四半期ベースで2ケタ成長を続けている。
■1000億円超に3製品
2位は抗がん剤アバスチンで売上1178億円(0.4%減)だった。前年度は1位だった。19年12月に初のバイオシミラーが登場したが、20年1~3月期のアバスチンは0.6%の減収にとどまった。3位は疼痛薬リリカで売上1007億円(0.0%)だった。前年度の4位から一つ順位を上げた。これら上位3製品が1000億円超の製品となる。
4位はがん免疫療法薬オプジーボで売上984億円(3.0%減、前年度3位)だった。競合薬キイトルーダとの競争が背景にある。5位は抗凝固薬リクシアナで売上952億円(28.0%増、9位)で、抗血栓症薬市場で、イグザレルトに代わってリクシアナがトップに立った。イグザレルトは全体10位で、売上は767億円(3.2%増、8位)だった。
6位は抗潰瘍薬ネキシウムで売上942億円(2.6%増、5位)、7位は抗潰瘍薬タケキャブで売上881億円(24.6%増、10位)、8位は抗がん剤タグリッソで売上857億円(73.2%増、10位圏外)、9位は水利尿薬サムスカで売上812億円(23.6%増、10位圏外)――だった。タグリッソは18年8月からNSCLCの1次治療にも使えるようになったことが急成長の要因とみられる。
■上位10薬効 免疫抑制剤が3位に、順位1つ上げる
上位10薬効をみると、市場規模1位と2位は前年度と変わらず、1位は抗腫瘍薬(1兆4453億円、16.7%増)、2位は糖尿病治療薬(5847億円、5.2%増)だった。
3位は免疫抑制剤(4496億円、9.4%増)で、前年度の4位から一つ順位を上げた。同市場内の売上トップ製品は今回もレミケードだったものの減収傾向にある。その一方で、ヒュミラ、シンポニー、ステラーラ、デュピクセントといった売上上位製品が伸び、同市場自体の9%台の成長をけん引した。
4位は前年度3位の抗血栓症薬(4423億円、2.9%増)だった。5位は眼科用剤(3549億円、2.2%増)、6位は制酸剤、鼓腸及び潰瘍治療剤(3520億円、1.6%増)、7位はレニン-アンジオテンシン系作用薬(3122億円、7.4%減)で、5~7位は前年度と順位は同じ。8位は前年度10位の「その他の中枢神経系用剤」(3085億円、0.8%増)、9位は前年度と同じく脂質調整剤及び動脈硬化用剤(3058億円、0.5%減)、10位は10位圏外からランクインした喘息及びCOPD治療薬(3015億円、2.1%増)――だった。前年度8位でC型肝炎薬などで構成する全身性抗ウイルス剤は今回10位圏外となった。