新型コロナの抗原検査キットが国内初の承認 30分で検査結果が判明 陰性確定にはPCR検査必須に
公開日時 2020/05/13 04:52
厚生労働省はきょう5月13日午前0時に新型コロナウイルスの抗原検査キット「エスプライン SARS-CoV-2」(富士レビオ)を承認した。国内では初の新型コロナウイルスの抗原検査となる。現在、検査の主流であるPCR検査は4~6時間かかるが、同検査は約30分と短時間で検査結果が判明するのが特徴。一方で、感度はPCR検査ほど高くはなく、症状がある患者で、抗原検査で陽性となった場合は検査結果が確定されるが、陰性の場合は別途PCR検査による確定診断が必要となる。同製品の保険適用の可否については、午前に開かれる中医協総会で審議される予定。
◎製造販売後に臨床性能評価に向け適切な試験実施など承認条件も
同検査キットは、4月27日に申請がなされており、スピード承認となった。使用目的は、「鼻咽頭ぬぐい液中のSARS-CoV-2抗原の検出(SARS-CoV-2感染の診断補助)」。酵素免疫反応を測定原理としたイムノクロマト法により、鼻咽頭ぬぐい液中の SARS-CoV-2 抗原を検出する。検体を含む液をカセットに滴下し、約 30 分後までにカセット上の判定ラインの有無を確認することによって、陽性または陰性を判定する。
感度がPCR検査ほど高くないことから、「重要な基本的注意」として、「判定が陰性であっても、SARS-CoV-2感染(新型コロナウイルス感染)を否定するものではない」として非感染の確定診断にはPCR検査が必要と呼びかけた。
承認時のデータが限られていることから、製造販売後に臨床性能を評価する適切な試験を実施することや、実保存条件での安定性試験を実施することが承認条件に付いた。
◎陽性一致率は約8~9割 PCR検査よりも感度低く
申請に際して提出された国内臨床性能試験では、72例を対象にRT-PCR法と性能を比較した。その結果陰性一致率は98%(44/45例)、陽性一致利率は37%(10/27例)だった。陽性検体の陽性一致率をRT-PCR法テスト試料中の換算RNAコピー数(推定値)に応じて比較すると、100コピー/テスト以上の検体に対して陽性一致率は83%だった。
124例の検査検体を用いた試験でも、陰性一致率100%(100/100例)、陽性一致率66.7%(16/24例)。陽性検体の陽性一致率をRT-PCR法テスト試料中の換算RNAコピー数(推定値)に応じて比較すると、1600コピー/テスト以上の検体で100%(12/12例)、400コピー/テスト以上の検体で93%(14/15例)、100コピー/テスト以上の検体で83%(15/18例)の一致率だった。
このため、厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課は、審査に際し、「一定量以上のウイルスを有する検体に対して約8~9割の陽性一致率(100 コピー/テスト以上で約 80%、400 コピー/テスト以上で約 90%)を示しており、陰性一致率はほぼ 100%であった」ことを評価。「RT-PCR 法と比較して感度は低いものの、一定の症状を有する患者等に対し、陽性判定をもとに感染診断を行うことの臨床的有用性を期待できるものと考えられる」とした。さらに、国内では現時点で、迅速かつ簡便な検出が可能な体外診断用医薬品はなく、検査能力の拡充が求められていることを踏まえ、承認条件を付けることを前提に、検査キットを臨床現場に提供することについて、「許容可能と考えた」と結論付けている。
◎有効期間は「暫定的」 製造販売後に長期安定性試験求める
安定性については、実保存条件での長期安定性試験成績が提出されておらず、同社の類似検査薬から暫定的に有効期間を設定した。そのため、製造販売後に長期安定性試験を実施することを求めている。