厚労省・がん全ゲノム解析推進部会 DB構築は「先行解析」を経て本格解析へ
公開日時 2019/11/21 04:50
厚生労働省は11月20日に開かれた「第2回がんに関する全ゲノム解析等の推進に関する部会」に、対象とするがん種と数値目標に関する考え方(案)を示した。当面は希少がんなど4類型を対象にバイオバンクに保存された既存検体を活用し、先行解析を行う。実施に際しては、過去の研究に基づく必要症例数とともに、検体数および優先順位等を考慮して実施するとした。日本人対象の全ゲノムデータベース(DB)確立について同省は、「ゲノム医療基盤の視点から欠かせず、がんの本態解明を通して研究開発、創薬など産業利用の基盤構築が必要」と指摘した。
この日の部会で同省は、全ゲノム解析の本格解析に先立ち、既存検体を利用した「先行解析」を行う考えを提示した。対象となるがん種は、①罹患数の多いがん、②希少がん、③小児がん、④遺伝性のがん-の4類型で、それぞれに必要症例数を設定する。ゲノム解析等を行う検体については、過去の研究実績や統計学的な観点も踏まえて優先順位を検討するとした。
一方、本格的なゲノム解析の実施にあたっては、体制整備や人材育成の状況を考慮しつつ、既存検体の解析状況や国内外の研究動向を踏まえ、新規検体を収集・解析する。このほか数値目標については、新規検体の収集を開始した後も随時必要に応じて見直すとした。
◎「DB整備遅くなると利用価値が低くなる」―早期の本格解析求める意見も
先行解析では、国立がん研究センター、静岡がんセンター、がん研有明病院のバイオバンクに保存された既存検体の活用を想定している。また本格解析で新規に収集する検体数については、年間2万4500症例が可能とするシミュレーション結果も提示した。これに対し天野慎介委員(全国がん患者団体連合会理事長)は、「希少がんが埋もれてしまうようなことはあってはいけない。研究グループと提携して検体の収集を進めてほしい」と指摘した。
大津敦委員(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 病院長)は、「より効果的な予防・治療方法の開発促進という目的と、創薬などの産業利用という目的では、対象症例や必要な臨床データが異なる」と指摘。「ヘルスケアの視点がクローズアップされているなか、網羅的にやる部分と創薬に使う部分を区分けしないと、無駄が生じてしまう」と訴えた。
また安川健司委員(日本製薬工業協会副会長)は、「データベースの整備が遅くなると利用価値が低くなる。先行解析と本格解析で、並行してできる準備はどんどんしてほしい。なるべく早く本格解析がスタートできるようにしてほしい」と危機感をあらわにした。そのうえでデータの利活用について、「企業がアクセスしたいのは、FASTQの生データ、BAM(SAM)の塩基配列VCF変異情報のすべてだ」と強調した。