自民党・人生100年時代戦略本部が3師会から意見聴取 日医は雇用延長による税収増や財源確保求める
公開日時 2019/10/10 03:50
自民党の「人生100年時代戦略本部」(本部長:岸田文雄政調会長)が10月9日、党本部で開かれ、日本医師会、日本薬剤師会、日本歯科医師会から全世代型社会保障について意見を聴取した。この中で日本医師会は、社会保障制度を堅持するためには、雇用延長による税収増や社会保障財源の確保が不可欠と強調。若年世代からの予防・健康づくりに対しては、新産業の創出による雇用拡大や経済成長などを通じ、社会保障制度を堅持すべきとの見解を示した。一方、日本薬剤師会は、OTC類似薬の給付範囲の見直しや給付率の変更について反対姿勢を表明した。
この日の戦略本部には日本医師会の横倉義武会長ら幹部が出席した。政府が議論を開始した全世代型社会保障について日医は、「消費税一本足打法からの脱却」を提唱。企業内部留保461.3兆円を給与に還元するほか、被用者保険の保険料率を協会けんぽの水準10%に合わせるなどの施策を総合的に行うことで、賃金上昇や雇用拡大を生み、結果的に共助・公助を増額することで、社会保障を充実させる考えを示した。また、社会保障の充実が国民不安の解消の一助になると指摘した。
◎日医 かかりつけ医を中心とした切れ目ない医療・介護の提供を
日医はまた、全世代型社会保障改革に向けて、➀予防の推進、②地域に根差した医療提供体制の確立-についてもスタンスを表明した。予防の推進については、「健康寿命の延伸は支え手の増加につながる」と指摘。病を防ぐことは医療の大きな役割として、かかりつけ医の役割の重要性を訴えた。そのうえで、かかりつけ医を中心とした切れ目ない医療・介護が提供できれば、適切な受療行動や重複受診の是正につながり、医療費が適正化するとして、地域に根差した医療提供体制の確立の重要性を強調した。
◎日薬 市販後類似薬の給付範囲見直しに反対を表明
一方、日本薬剤師会からは山本信夫会長らが出席した。この席で日薬は「持続性のある社会保障制度改革についての意見」を表明した。まず、高齢者の窓口負担については、患者の受診抑制を引き起こし、重症化につながることが懸念されると指摘。「疾病予防・重症化予防という国の方針に逆行している」とした。外来受診時の定額負担については、「国民皆保険の根幹を揺るがしかねず、安易な導入すべきでない」とした。
薬剤自己負担については、「市販後類似薬であることのみをもって、給付範囲の見直し、給付率を変えることには反対」と表明。給付単位の見直しや給付率を変えることにより、必要な医療が保険給付されるという医療保険制度の原則を変えることになり、「国民は安心して医療を受けられなくなる」とした。また、市販品類似薬を「モノ」として捉え、保険給付外とすることや給付率を見直すことは、国民に対する医療手段の制限にもなり、安易に行うべきでないとも強調した。