骨太方針・素案 地域医療構想の具現化で病院の診療実績データ公開 18年度改定で病床転換や連携を後押し
公開日時 2017/06/05 03:50
政府の経済財政諮問会議が6月2日に公表した「骨太方針2017・素案」(一部速報・薬価制度編)では、47都道府県が今年3月末までに策定した「地域医療構想」を具現化するため、病床の役割分担や転換を支援する診療実績データを国が都道府県に提供する方針を盛り込んだ。都道府県はこのデータを基に、個別の病院名や転換する病床数を明示し、高齢化のピークを迎える2025年度にむけて医療提供体制を再構築する。各都道府県とも、高度急性期、急性期病床を削減、回復期を増床する計画を打ち出している。骨太方針では、都道府県の権限を強化し、財政面から病床転換を支援するほか、2018年4月実施の診療報酬・介護報酬同時改定において、病床の転換や医療機関の連携を後押しする報酬水準、算定要件を盛り込む方針を示した。
骨太方針における社会保障制度改革の柱は、高齢化に伴う医療費の伸びの適正化だ。ポイントはデータへルスの実現。国が有する診療情報をデータベース化し、地域の政策担当者、医療関係者、施設経営者、保険者などの当事者に共通データを「見える化」することで、医療費の地域格差、施設格差の是正にむけた“医療費適正化”についてオープンで議論する場を整える。保険者に対しては、健康づくりや予防などについて、データへルスを通じて支援する方針も盛り込んだ。都道府県別保険料を含めたインセンティブの強化なども視野に入れている。
◎「保健医療データプラットフォーム」を構築 データを都道府県に提供
具体的な施策では、2025年の高齢化のピークに向け、地域包括ケアシステムの導入を視野に、地域単位で医療提供体制を再整備する。素案では、都道府県の保健ガバナンスを強化する方針を示した。具体的には各都道府県に権限と予算などを移譲するというもの。各都道府県が策定した「地域医療構想」について、地域ごとに設置した「地域医療構想調整会議」で具体的な議論を行う。病床の役割分担を進めるためデータを国から提供し、個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応方針の速やかな策定に向けて、2年間程度で集中的に議論するとした。
厚労省は各地域の議論を側面的に支援するため、「保健医療データプラットフォーム」などのビッグデータを提供する。同プラットフォームは、健康、医療、介護の各種ビッグデータを統合するもの。医療分野では、病院の機能分化や構想区域(2次医療圏)内における地域完結型の医療提供体制の議論に応用できる。実診療データ(ビッグデータ)には、レセプトなどの実診療データ以外に、脳卒中患者の治療後の医療・介護サービスの傾向や、抗生物質の処方や重複投与の状況などに関するデータも含まれる見通し。地域の医療ニーズを分析を通じ、医療費の適正化や住民に対する医療サービスの検証、施策立案に役立てるよう促す考え。このため、医療政策やビッグデータに対応できる人材を国が養成し、都道府県に派遣するなどの連携策も盛り込んでいる。
◎選定療養による定額負担の対象については見直し
このほか、かかりつけ医を普及させる観点から、まずは病院・診療所間の機能分化の観点から、医療保険財政の持続可能性の観点等を踏まえつつ、病院への外来受診時の定額負担に関し、現行の選定療養による定額負担の対象の見直しを行う。関係審議会等において具体的な検討を進め、年末までに結論を得るとした。
2018年度診療報酬・介護報酬同時改定については、地域医療構想の実現に資するよう病床の機能分化・連携を更に後押しするため、患者の状態像に即した適切な医療・介護を提供する観点から、報酬水準、算定要件、入院基本料のあり方について検討する。