中所得国 医薬品の価値向上にはアクセス改善を:IFPMA
公開日時 2014/02/20 03:50
国際製薬団体連合会(IFPMA)は、中所得国(MIC:BRICS=ブラジル、ロシア、インド、中国=および南アフリカ)における患者のベネフィット向上と医療費削減にはこれら国々でのヘルスケアシステムの充実や医療インフラ整備が必要なことを指摘した「中所得国における主要疾患領域でのバイオ・医薬品イノベーションの価値を評価する」(Assessing the Value of Biopharmaceutical Innovation in Key Therapy Areas in Middle-income Countries)と題する調査報告書をまとめた。IFPMAが1月29日に発表した。
IFPMAが、調査会社チャールズリバーアソシエイツ(Charles River Associates:CRA)が委託研究させた。CRAでは、MICにおける罹患率・死亡率の減少、医療費削減の状況などの観点から医薬品価値を明確にするために、MICにおける冠動脈疾患(CHD)、うつ病、糖尿病、HIV/AIDS、ロタウイルス感染症の5つの疾患領域における国としての疾患対策の有無・同治療薬の使用状況・治療ガイドラインの有無や患者のベネフィットと医療費削減の実態などを調査・分析した。
一例として、CHDの状況をみると、IFPMAのエデュアルド・ピサニ事務総長は、「MICでも早い死亡や後遺症の主原因はCHDとなっているが、現在までに国家的な非感染症対策としてCHDを組み込んだのは、ブラジル、インド、中国の3か国である。しかし、これら国々でもその対策を導入したのは僅か3年以内だ」と指摘したが、「かつてないほど新薬が普及すればより健康上のメリットが獲得できる機会を見ることができる」との見方を示した。
同調査結果では、MICでもCHD治療薬の基本的薬剤クラスの少なくとも1剤は使用できることが分かったが、ピサニ事務総長は、、薬剤が存在することは必須だが、薬剤へのアクセスはプライマリケア機能のような医療インフラが十分に整備されているかに依存していることを示唆した。
高所得国(HIC)およびMICともに小児の重篤な下痢の主病原であるロタウイルス感染症については、最近、ロタウイルスワクチンを導入したブラジルとオーストラリアの場合を比較した。
CRAのTim Wilson副社長は、両国を比較した結果について、「両国で示されたベネフィットは入院コストの減少だったが、特にブラジルでは、ロタウイルス関連の死亡率が大きく減少したことが示された」と述べ、両国での医薬イノベーションでの価値が示されたのと同時に、ブラジルのようにロタウイルス感染症多発地域では一層その価値が高いことが示されたことを示唆した。
同調査報告書は、以上のほか、ロタウイルス感染症、うつ病、HIV/AIDSの結果から、MICでイノバティブな医薬品を供給することは、国民の保健衛生向上と医療費削減に医薬品の価値をもたらすことができるとしたが、十分にその価値を生かすには、まだアクセス面では障壁が散見されると指摘した。MICでの医薬品アクセス改善には、各国政府の疾患対策の確立、診療所・病院・薬局などインフラ整備などにかかっていることが示されたとしている。
IFPMAのピサニ事務総長は、「我々は、MICにおいて、イノバティブな医薬品が、薬価や保険償還の問題をはるかに超越し、重要な価値を生み出す可能性を持つというエビデンスを見た。医薬品のいかなる価値をも評価する場合には社会的・経済的ベネフィット両方を考慮すべきである」と医薬品価値を評価する場合に現在主流になっているかのような経済面偏重の傾向をけん制した。