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【ESC特別版】TRA 2゜P – TIMI 50サブ解析 PAR-1阻害薬・vorapaxar上乗せでMI患者への有効性示す 出血リスクは増加も

公開日時 2012/08/28 15:44

心筋梗塞(MI)の既往がある患者の二次予防において、アスピリン±チエノピリジン系薬剤による標準療法に加え、新規抗血小板薬・PAR-1阻害薬・vorapaxarを上乗せした結果、心血管死+心筋梗塞(MI)+脳卒中の複合エンドポイントの発生を抑制することが分かった。ただし、出血リスクは増加することも分かった。「TRA 2゜P(Thrombin Receptor Antagonist in Secondary Prevention of Atherothrombotic Ischemic Events) – TIMI 50」のサブグループ解析の結果から分かった。米Harvard Medical SchoolのBenjamin Scirica氏が8月25日から独・ミュンヘンで開催されている欧州心臓病学会(ESC)2012で26日に開かれた、「Clinical Trial &Registry Update」で発表した。


心筋梗塞患者は、血栓イベントの再発リスクがある一方、アスピリンに、クロピドグレルなどのチエノピリジン系薬剤を長期間併用することの意義は分かっていない。TRA2°P-TIMI50の本解析では、MI、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患(PAD)の既往歴があるアテローム血栓症患者2万6449例を対象に、アスピリン±チエノピリジン系薬剤の標準療法にvorapaxarを上乗せすることの意義を検討した。その結果、心血管死+心筋梗塞+脳卒中の発生を有意に抑制した一方で、出血リスクを増大させた。ただ、試験結果からは、心筋梗塞患者で他のアテローム血栓症患者と異なるベネフィットを示したことから、今回の解析はMI患者を対象に、vorapaxarの有効性・安全性を検討する目的で実施された。


対象は、本試験に登録された67%に当たる1万7779例(全被験者の67%)のMI既往患者。Vorapaxar群(8898例)、プラセボ群(8881例)の2群に分け、治療効果を比較した。臨床転帰向上の可能性がある、出血リスクの低い被験者1万4909例(脳卒中/TIA既往 歴がなく、体重60 kg以上、75歳未満)も特定し、解析した。主要評価項目は、①心血管死+MI+脳卒中の複合エンドポイント②心血管死+MI+脳卒中+緊急の冠動脈再灌流の施行――の2項目とした。追跡期間は、平均2.5年間。


平均年齢(中央値)は59(51-66)歳、ベースライン時の併用薬は、アスピリン98%、チエノピリジン系薬剤78%、脂質異常症治療薬が96%だった。


◎発症からの時間、併用薬やステント既往の有無などの影響見られず


その結果、主要評価項目(心血管死+MI+脳卒中)の発生率は、プラセボ群の9.7%に対し、vorapaxar群では8.1%で、ハザード比(HR)は0.80で、vorapaxar群で有意に低いことがわかった(95% CI: 0.72 – 0.89、p<0.001)。各評価項目も、心血管死(.4% vs 2.0%,HR: 0.84、p=0.12)、MI(7.0% vs 5.7%, HR:0.79、p<0.001)、脳卒中(1.6% vs 1.3%, HR:0.77、p=0.06)で、vorapaxar群で低い傾向が見られた。


MI発症から無作為化までの時間で解析すると、3カ月未満(7801例)ではプラセボ群の10.4%に対し、vorapaxar群は8.9%(HR:0.82、p=0.011)、3~6ヶ月(5151例)では9.4%に対し7.5%(HR:0.79、p=0.023)、6ヶ月を上回る被験者(4703例)では8.8%に対して7.1%(HR:0.78、p=0.026)で、一貫してvorapaxarの方が有効な傾向を示した。


ランダム化の時点でのチエノピリジン系薬剤の併用の有無に分けてみると、併用している場合(1万3033例)は、プラセボ群の9.6%に対し、vorapaxar群では8.0%(HR:0.81)、併用していない場合(4746例)ではプラセボ群の9.9%に対し、vorapaxar群では8.3%で(HR:0.78)で、併用の有無による差はみられなかった(P for interaction=0.73)。


そのほか、ステントの治療歴の有無(P for interaction=0.30)、MIの分類(ST上昇型心筋梗塞(STEMI)、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)、不明)(P for interaction=0.22)などと結果との間の関連性もみられなかった。



◎高リスク群では出血頻度増加も 適切な患者選択が重要に



懸念された安全性については、出血は、GUSTO基準における中等度/重度の出血は、プラセボ群2.1%に対し、vorapaxar群では3.4%(HR:1.61、p<0.001)、TIMI基準で臨床的有意とされる出血は、プラセボ群の10.4%に対し、vorapaxar群で15.1%(HR:1.49、p<0.001)、TIMI基準で非CABG大出血は1.6%に対して2.2%(HR:1.29、p=0.033)で、いずれもvorapaxar群で有意に高い結果となった。また、頭蓋内出血はプラセボ群の0.4%に対し、vorapaxar群で0.5%(HR:1.54、p=0.076)、致死性出血はプラセボ群の0.1%に対し、vorapaxar群で0.2%(HR:1.56、p=0.30)だった。


Kaplan-Meierカーブから算出した3年後のネットクリニカルベネフィット(有効性から安全性を引き、算出)は、複合エンドポイントである全死亡+MI+脳卒中+GUSTO基準における重度出血(HR:0.86、p=0.003)、心血管死+MI+脳卒中+GUSTO基準における中等度/重度の出血(HR:0.91、p=0.038)は、vorapaxar群で有意に良好な結果となった。


サブグループ解析で、出血リスクの危険因子である高齢(75歳以上、プラセボ群:4.6%、vorapaxar群:7.1%)、低体重(60kg未満、プラセボ群:3.1%、voraqpaxar群:6.0%)、脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)の既往(プラセボ群:3.4%、vorapaxar群:8.0%)は、いずれもvorapaxar群で高い結果となった。


一方で、出血の高リスクとなる臨床的特徴がない場合は、プラセボ群1.8%に対し、Vorapaxar群で2.7%と低い値に抑制されている。また、これら出血リスクが少ない患者でも、本解析と同様の有効性についての傾向を示す結果となった。


Scirica氏は、MI既往の患者において、アスピリン±チエノピリジン系薬剤による標準治療にvorapaxarを追加投与することで、心血管死+心筋梗塞+脳卒中の発生は抑制したが、中等度/重度の出血は増加したと説明。これらを加味した、ネットクリニカルベネフィットは、向上すると説明した。「これらのベネフィットは、発症時期やチエノピリジン系薬剤併用の有無によらず、一貫して見られた」とした上で、「適切に選択された患者では、MI既往患者の長期的な二次予防としてアスピリン±チエノピリジンに追加された場合、PAR-1抑制による抗血小板治療は、長期的治療ベネフィットを示す」と述べた。

なお、同試験の結果については、同日付の「THE LANCET」のOnline版に掲載された。


 

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