日本人低リスク閉経後女性へのロスバスタチン投与の有用性示唆
公開日時 2012/07/30 12:00
低リスクであるものの脂質異常症が認められる閉経後女性に対してロスバスタチンを1年間投与した結果、アテローム性動脈硬化のサロゲート(代用)マーカーである頸動脈内膜中膜肥厚度(CIMT)、頸動脈剛性β、脈波伝播速度(PWV)を有意に低下させることが分かった。5月22~25日にポルトガル・リスボンで開かれた第21回欧州脳卒中学会議(esc)で24日に開かれたポスターセッションで、愛媛大学医学部加齢制御内科学の伊賀瀬道也氏らの研究グループが報告した。
アテローム性動脈硬化症の一次予防において、スタチンによる脂質低下療法の有用性は、これまでにいくつかの大規模臨床試験で検討され、有用性が示されてきた。一方で、比較的低リスク症例、特に閉経後女性を対象としたスタチン投与の有用性については、これまで十分検討されていないのが現状だ。ただし、閉経後のエストロゲン値の低下は、LDLコレステロール(LDL-C)値の上昇、さらには脳血管疾患発症に関連する可能性も指摘されており、閉経後女性におけるLDL-C管理は有益な効果を与える可能性も指摘されている。
研究グループは、脂質異常のある55歳以上の閉経後女性51例を対象に、①ロスバスタチン(2.5 mg/日)投与群26例②非投与群25例――の2群に無作為に割り付け12カ月間治療した。ベースラインと3カ月後、12カ月後の各時点で上腕足首PWV(baPWV)と頸動脈剛性β、CIMTを実施し、アテローム性動脈硬化の状態を評価した(CIMTはベースラインと12カ月後のみ)。
ベースライン時の患者背景は両群で特に差はなく、平均年齢は66.9歳、平均収縮期血圧値124.4 mmHg、平均拡張期血圧値69.8 mmHg、平均LDL-C 値161.5 mg/dL、平均HDL-C 69.2 mg/dL、平均トリグリセリド(TG) 97.5 mg/dLだった。
ロスバスタチン投与群のbaPWVは、ベースラインの1.56 m/sから3カ月後には1.34 m/sに低下、12カ月後は1.40 m/sだった。非投与群では、ベースラインの1.49 m/s から、 3カ月後1.50 m/s 、12カ月後には 1.51 m/sで、3カ月後、12カ月後のいずれにおいて、ロスバスタチン投与群で低い傾向を示した。
頸動脈剛性β値も同様の傾向が見られ、投与群では15.0 Uから3カ月後に13.3 Uに低下し、12カ月後でも13.4 Uだった。一方で、非投与群ではベースライン時の14.6 U から 15.4 U 、 15.0 Uと大きな変化がみられなかった。
CIMTもロスバスタチン投与群では、ベースライン時の0.89 mmから0.83 mmへと低下しているのに対し、非投与群では0.88 mm から 0.89 mmで大きな変化がみられず、ロスバスタチン投与群で、非投与群より有意に低いことが分かった(p<0.05)。
なお、LDL-C値は、3カ月後ではロスバスタチン投与群が81.4 mg/dLまで低下したのに対し、非投与群では149.9 mg/dLで、ロスバスタチン投与群で有意に低下している(p<0.05)。
また、CIMTの12カ月間での変化に関連する因子について多変量解析を行った結果、hsCRPの3カ月間の変化と有意に相関しており(r=0.534、p=0.003)、hsCRP の3カ月間の変化がCIMTの12カ月間の変化の予測因子である可能性も示唆された。