【esc特別版】脳内出血後の死亡率低下 発症前のスタチン投与が独立因子に
公開日時 2012/06/06 09:50
脳内出血(ICH)後の予後を検討したところ、発症前のスタチン投与が独立因子となり、投与により死亡率が低下する可能性が示唆された。英国St. George’s University of LondonのOdd HU氏らの研究グループが、行った臨床観察研究の結果から分かった。ポルトガル・リスボンで5月22~25日に開催された第21回欧州脳卒中学会議(esc)で23日、ポスターセッションで発表した。
ICHの動物モデルでは、スタチンに神経保護作用がある可能性が示唆されている。スタチンにより内皮の一酸化窒素の分泌が増加することで血管拡張が起こり、脳血液のかん流が改善する可能性や、血小板凝集を抑制する可能性などがメカニズムとして考えられている。しかし、スタチンの使用とICH転帰との関連性を調べたこれまでの観察研究では、一貫した結果は得られていない。
研究は、ICH前のスタチン投与とICH後90日の死亡との関連性を検討することが目的。St. George’s HospitalのICH初発患者512例を対象に、ICH後の死亡との関連因子を解析した。また他試験のデータと組み合わせたメタ解析も実施し、分析結果の妥当性も検討した。
患者はCTスキャンでICHが確定されており、22%の症例では48時間以内に2回目の画像診断(CT 86%、MRI 14%)が実施され、血腫量の変化を観察されていた。
ICH発症までにスタチンを使用していたのは、26%(132例)だった。スタチンが投与されていた患者では、そうでない患者と比べ、平均年齢が有意に高く(73.3歳 vs 68.5歳、p=0.001)、ICHの前に抗血小板薬(60.6% vs 17.7%、p<0.001)、もしくはワルファリン(18.3% vs 8.4%、p=0.002)を投与されている割合や、虚血性心疾患(32.6% vs 8.0%)や心不全(12.1% vs 2.2%)、心房細動(25.8% vs 12.5%)、高血圧(87.2% vs 66.0%)、糖尿病(30.3% vs 10.5%)などの既往症を患っている割合が有意に高かった(既往症各項目は全てp<0.01)。
一方、発作直後の血腫量と、その変化の度合い、また容量が33%以上増大した患者の割合においては、両群間に有意差はなかった。
転帰と関連する交絡変数を調整した多変量解析の結果、スタチンの投与が90日の死亡の独立した予測因子であることがわかった(オッズ比0.48, 95% CI 0.28 – 0.83、p=0.018)。
また、過去の5つのコホート研究を合わせたメタ解析(ICH症例4491例、スタチン使用例1129例)の結果からも、スタチンの使用が90日の死亡リスクの低下と関連していることが確認された。
研究グループは、スタチンの死亡リスク低下効果の背景にある生物学的メカニズムや、ICH後の超急性期で利用した場合のスタチンの役割など、今後さらに詳しい研究で調べる必要があると結論付けた。