RESTORE試験 MRI画像所見の活用 発生時期不明患者の治療立案に有用
公開日時 2011/03/14 04:00
良好な転帰には医療施設の経験も不可欠
いつ発生したか不明確な脳卒中(Unclear Onset Stroke)に対して、MRI所見を活用することで、最適な再灌流療法の実施とアプローチ法を判断することが可能になることが明らかになった。韓国・University of Ulsan College of MedicineのDong-Wha Kang氏らの研究グループが実施した前向き多施設観察研究「RESTORE」の結果から分かった。2月10日に開かれたプレナリーセッションで報告され、優秀な研究者に与えられる国際脳卒中学会委員会からの賞の1つである、救急医療賞を授与された。
いつ発生したか不明な脳卒中は、全虚血性脳卒中の約1/4を占めている。一方で、明確な治療方針は確立されておらず、一般的に、血栓溶解療法の適応から除外されている。
このような状況を受け、研究グループは、MRI所見を基にいつ発生したか不明な脳卒中に対して再灌流療法を施行することが、容認できる有効性と安全性を示すか検討した。
韓国の6大学病院の救急救命室(ER)で、2006年9月~2009年6月に、症状発見から6時間以内に到着した急性虚血性脳卒中患者430例を対象とした。MRIは、拡散強調画像(DWI)、灌流強調画像(PWI)、FLAIR、GRE、MRAの方法で撮影した。
MTTとDWIで示される領域の不一致が>20%で、DWIでの梗塞領域が中大脳動脈の3分の1未満、DWIとFLAIR画像が不一致な症例を対象とした。再灌流療法は、t-PA静注またはウロキナーゼ動脈内投与、機械的除去、またはステント留置とした。
主要評価項目は3カ月後のmodified Rankin Scale(mRS)0[全く症状なし]~2[軽微な障害]とした。
再灌流療法施行例の半数が転帰良好
その結果、全体の19.3%に当たる83例が再灌流療法を受けた。年齢(中央値)は67歳、重症度を示すNIHSS(中央値)は14だった。
最も多く実施された再灌流療法は血管内アプローチ(57例、68.7%)で、ウロキナーゼ動脈内投与は24例、血管形成またはステント留置は13例、ウロキナーゼ投与+ステント留置は20例だった。t-PA静注と血管内アプローチの併用は17例、t-PA静注のみが9例だった。
主要評価項目に達した割合は44.6%で、再灌流療法を受けた約半数が、少なくとも良好な臨床転帰を見せていた。mRS 0~1[何らかの症状はあるが障害はない]の割合も28.9%だった。
一方で症候性頭蓋内出血は6.0%に発生し、このうちNIHSSが4以上だったのは3.6%だった。
予後を悪化させる因子は(mRS 3[中等度の障害]~6[死亡]と定義)、女性(オッズ比8.86、 P値=0.001)、ベースラインのNIHSSが重度(オッズ比1.11、 P値=0.043)、医療施設の経験不足(オッズ比11.25, P値=0.036)だった。
同研究は小規模で、無作為化試験ではなく、また実施された血栓溶解療法が多様である点など、試験の限界があるものの、Kang氏は「MRI画像所見を基に、いつ発生したか不明な脳卒中に対する再灌流療法を実施することの安全性と有効性が、容認できると示唆された」と結論付けた。ただし、「良好な転帰を達成するには、医療施設における十分な経験が不可欠」であることも強調した。