肝機能検査異常のある冠動脈疾患患者でも、スタチンは安全かつ心血管イベント削減に有効
公開日時 2011/01/11 03:50
肝機能検査異常がある冠動脈疾患患者で、スタチン療法を実施すると、実施しなかった患者に比べて、心血管イベントの発生率が有意に低下することが分かった。またスタチン療法による効果は、肝機能が正常な患者よりも、異常値を示した患者の方が大きかった。ギリシャ・Aristotle University of Thessaloniki、Hippokration HospitalのVasilios G Athyros氏らの研究グループが、11月24日の「Lancet」オンライン版で発表した。
スタチン療法と肝臓との関連性を追及した研究は、肝臓での有害事象に関するものが多いが、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)により上昇したガンマグルタミントランスペプチダーゼ(GGT)の症例に関する、これまでのいくつかの小規模試験では、安全性を示した上で、肝組織像と肝機能検査を向上させることが示唆されている。
スタチン療法はNAFLDに対する治療戦略の1つであるが、同疾患患者におけるスタチン療法によるリスクとベネフィットは、心血管疾患の転帰に関する試験では、まだ十分に検討されていない。
同研究は、冠動脈疾患患者を対象に、計画的なスタチン療法と通常療法とを検討した、ギリシャのプロスペクティブ試験「GREACE」を事後解析したもの。同試験の被験者群は、①LDLコレステロールの目標値を設定し、達しない場合は投与量を増量させる計画的なスタチン療法を行う被験者群②低脂肪食の導入や減量、運動などを始めとするライフスタイルの改善や薬剤療法を含んだ、通常ケアを行う被験者群――の2群で、各群800例ずつ割り付けられている。
今回実施された解析では、心血管イベント(非致死的心筋梗塞、血管再建術、不安定狭心症、鬱血性心不全)の初発リスクの低下について検討。血清ALTかASTの肝機能検査で中等度の異常が見つかった被験者(437人)を対象に、スタチン療法を受けた被験者(227人)と受けなかった被験者(210人)とを比較し、そのリスク減少率(RRR)を肝機能検査が正常な被験者での比較で導かれたRRRと比べた。
その結果、肝機能検査異常があるスタチン群は、肝機能検査で有意な改善が見られた一方で、非スタチン群は肝酵素濃度がさらに上昇していた。心血管イベントはスタチン群で9.7%、非スタチン群では30%に上り、スタチン群のRRRは68%で有意差を認めた(p<0.0001)。
一方、肝機能が正常なスタチン群の心血管イベント率は14%に対して、非スタチン群では23%、RRRは39%と(p<0.0001)、肝機能検査異常のあるスタチン群での心血管ベネフィットの方が、肝機能が正常なスタチン群でのベネフィットよりも高いことが判明した(p=0.0074)。
肝臓関連の有害事象でスタチン療法を中止したのは、880人中7人(1%未満)であった。
これらの結果から、NAFLDに起因する可能性のある軽度から中等度の肝機能検査異常の患者において、スタチン療法は安全で、且つ肝機能検査を向上し心血管イベントを削減する可能性が示唆されたと言える。