厚労省保険局医療課は７月12日付で、10月実施の長期収載品の選定療養に関する疑義解釈（Q＆A）を都道府県等に事務連絡した。新たな選定療養は、長期収載品を処方した医師等が「医療上の必要性」を判断した場合、選定療養の対象外となり、従来通りの保険給付となる。事務連絡では、副作用や相互作用など「安全性の観点等から長期収載品を処方する」と医師等が判断した場合や、「後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができない」など、剤形上の違いで長期収載品を処方すると判断した場合は、「医療上の必要性」に該当すると周知した。ただし、「単に剤形の好みによって長期収載品を選択」するケースは含まれない。

◎「医療上の必要性」　効能効果・治療効果の差異、学会GLなど4項目の判断基準を列挙

疑義解釈では、医師等が長期収載品を処方した際に「医療上の必要性」を判断する基準を明確化した。具体的には、①長期収載品と後発品で効能・効果に差異があり、長期収載品を処方等する医師等が医療上の必要性を判断する場合、②当該患者が後発医薬品を使用した際に、副作用や相互作用、先発医薬品との間で治療効果に差異があったと医師等が判断する場合で、安全性の観点等から長期収載品の処方等を判断する場合、③学会が作成するガイドラインにおいて、長期収載品の使用患者に後発医薬品へ切り替えないことが推奨され、医師等が長期収載品を処方すると判断する場合、④後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上の違いから長期収載品を処方すると判断した場合－の4項目をあげた。ただし、単に剤形の好みによって長期収載品を選択することは含まれない。

◎「基本的には使用感などについては医療上の必要性として想定していない」

このほか「使用感など、有効成分等と直接関係のない理由で、長期収載品の医療上の必要性を認めることは可能か」との問いに対しては、「基本的には使用感などについては医療上の必要性としては想定していない」と解説した。

保険薬局の薬剤師においては、「医療上の必要性について懸念することがあれば、医師等に疑義照会することが考えられる」としながらも、「剤型上の違いから長期収載品を処方する」場合は、医師等への疑義照会は要さず、薬剤師が判断することも考えられると説明。薬剤師は、「この場合においても、調剤した薬剤の銘柄等について、当該調剤に係る処方箋を発行した保険医療機関に情報提供する」と規定した。

一方、薬局における医療上の必要性の判断について、医師等が長期収載品を銘柄名処方し、「変更不可（医療上必要）」欄に「✓」または「×」が記載されていない場合に、薬剤師として長期収載品を調剤する医療上の必要があると考える場合は、従来通りの保険給付が可能となる。同様のケースで医師等が後発品を銘柄名処方した場合についても同じ判断で、当面の間は疑義照会なく変更調剤できるとした。

◎「医療上の必要性」の記録作成・保存は診療報酬請求書等の「摘要」欄に理由を記載

院内処方その他の処方で「医療上の必要性」に関する記録の作成・保存については、診療報酬請求書等の「摘要」欄に理由を選択して記載する。「院内採用品に後発医薬品がない場合は、後発医薬品を提供することが困難な場合に該当すると考えて保険給付してよいか」との問いに対しては、「患者が後発医薬品を選択することが出来ないため、従来通りの保険給付として差し支えない」としながらも、「後発医薬品の使用促進は重要であり、外来後発医薬品使用体制加算等を設けているところ、後発医薬品も院内処方できるようにすることが望ましい」とした。

◎安定供給に支障が生じている品目かどうかで判断するのではない

後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、「後発医薬品を提供することが困難な場合」についての判断基準も提示。出荷停止、出荷調整などの安定供給に支障が生じている品目かどうかで判断するのではなく、あくまで、「現に、当該保険医療機関または保険薬局において、後発医薬品を提供することが困難かどうか」で判断するとした。