【秋アレリポート】従来治療からBUD/FMへの切替 投与直後から臨床効果を認める可能性も
公開日時 2011/11/30 06:01
従来治療でコントロール不十分な喘息患者では、吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬配合剤のブデソニド/ホルモテロール(BUD/FM)への切替を行うことで、投与直後からの臨床効果を認め、その効果が一定期間継続する可能性が示唆された。広島大学分子内科学の中村泉氏は11月11日、第61回日本アレルギー学会秋季学術集会のミニシンポジウム「気管支喘息 吸入療法」で報告した。
中村氏は、喘息予防・管理ガイドライン(JGL2009)では気管支喘息の長期管理薬として吸入ステロイド薬(ICS)が基本となっており、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、ICS/LABA配合剤はステップ2以上の患者に推奨されていると説明した。ただ、従来の長期管理薬では、「早期に効果を実感することができないために、アドヒアランスの低下が問題となることがある」と指摘。喘息患者へのアンケート調査の結果でも、患者は吸入薬に対し、効果の速さを最も重要と考えているという報告があることも紹介した。その上で、ICS/LABA配合剤であるBUD/FMは「吸入1分後から速やかな効果を示し、速効性と持続性を併せ持つという特徴がある」との報告を紹介した。
中村氏らは、従来の治療でコントロール不十分な患者に対し、BUD/FMに変更することでの早期改善効果(初回投与直後の効果)と4週間後の効果について検討した。対象は、ICS単剤あるいはBUD/FM以外のICS/LABA配合剤を4週間以上使用中の気管支喘息患者25例。コントロール状況については、「咳、痰」「喘鳴」「呼吸苦」「発作」「夜間症状」「運動時の症状」「SABAの使用」の7項目からなる問診票で効果不十分と判定した。
対象症例のBUD/FM吸入量は、前治療における吸入ステロイド薬の1日投与量が400μg未満の場合、1日2吸入(3例)、400μg以上800μg未満の場合、1日4吸入(9例)、800μg以上の場合1日8吸入(13例)と定めた。
他の併用薬の状況はテオフィリン製剤20%(5例)、ロイコトリエン受容体拮抗薬56%(14例)、抗アレルギー薬24%(6例)、経口ステロイド薬8%(2例)であった。
平均一秒量(FEV1)は、投与開始前の2.03Lから、投与5分後には2.18L(p<0.01)、15分後2.21L、30分後2.23Lで、投与5分後から有意に改善し(いずれもp<0.01)、BUD/FMの早期効果を示した。
気道抵抗については、全気道抵抗(R5)が切替前の0.40Kpa/L/sから1分後には0.35Kpa/L/s、中枢気道抵抗(R20)0.30Kpa/L/sから0.28Kpa/L/s、末梢気道抵抗(R5-R20)0.11Kpa/L/sから0.07Kpa/L/sへと有意に低下(R20がp<0.05、その他はP<0.01)した。これらいずれの気道抵抗も切替前に比べ、5分後、15分後、30分後でも有意な低下が継続した(p<0.01)。
また、肺の弾性抵抗(X5)は、切替前の-0.19Kpa/L/sから吸入1分後には-0.15Kpa/L/sへと有意に改善(p<0.01)したほか、共振周波数(Fres)も切替前17.13 1/sから1分後に15.59と有意に改善(p<0.05)。ともに30分後まで経時的に有意な改善を認めた。このことから既存治療で効果不十分の患者に対しBUD/FMへ切り替えることで吸入1分後から早期に効果を発現し、その後も効果が持続することが示された。
また、visual analogue scale(VAS)を用いて患者の治療満足度を検討した結果では、25例中11例が吸入1分後から効果の実感が得られたと回答し、25例中17例(68%)が切替から15分後までに効果を実感が見られ始めているとした。BUD/FMは患者の自覚症状をも早期に改善することが示された。
切替から4週後も、平均一秒量が2.16Lと有意に改善(p<0.01)、喘息特異的QOL評価スコアのminiAQLQ、喘息コントロールテスト(ACT)のスコアのいずれも有意に改善していた。
また、早期治療効果と4週間後の治療効果の関係をみたところ、早期に平均一秒量とVASが改善した群では4週間後の平均一秒量も切替前に比較して有意に改善していた。
こうした結果から中村氏は、既存治療からのBUD/FMへの切替は、「投与直後より臨床効果を認め、吸入継続によりその効果は4週間後も持続していた」と結論付け、「コントロール不十分な喘息患者において、BUD/FMは有用な治療の選択肢となりうる」との見解を示した。