抗血小板薬 レジスタンス発現で求められる検査の標準化 (2/4)
公開日時 2010/06/03 15:00
―アスピリンについてはいかがでしょうか。
棚橋氏 アスピリンのアテローム血栓症予防に対する有効性を検討したメタ解析では、血栓症の再発をプラセボと比較すると20%のリスク回避しかできないと言われております。アスピリンの抗血小板効果には個人差があることから、たとえコンプライアンスが良好であっても、適切な抗血小板効果が得られていない集団がいると推定されています。
この理由として、アスピリンの体内吸収が十分になされていないことと、アスピリンの作用機序以外での血小板の活性化が起きていることが挙げられます。
不応性の評価方法には、①直接的にCOX-1機能を反映する(血清トロンボキサンB2)②間接的にCOX-1機能を反映する(尿中デヒドロトロンボキサンB2、アラキドン酸惹起血小板機能測定)③COX-1機能に依存しない血小板機能(ADP、ずり応力など)――など様々な測定法があり、症例によっては測定法で数値が大きく異なることが指摘されています。どの項目が臨床上一番重要なのかはっきりと分かっていないために、どの指標を用いるべきか難しいところです。
最近では、国立循環器病研究センターを中心に、「アスピリンレジスタンスの実態ならびにその遺伝子背景に関する研究(ProGEAR study)」が終了し、現在、詳細な解析が行われております。この結果も待たれますね。
―クロピドグレルについてはいかがでしょうか。
棚橋氏 急性冠症候群(ACS)では、クロピドグレルのレジスタンスによりイベントが増加すると指摘されています。ただ、脳血管領域ではレジスタンスとイベント発症との関連性はまだ明確になっていません。ですから、長期的な臨床結果を明らかにすることがまず重要ではないかと思います。
クロピドグレルは、プロドラッグで、肝臓のCYP2C19で代謝されて活性代謝物になります。CYP2C19の遺伝子多型は、代謝に関連すると報告されており、日本人では欧米人よりも多い18~22.5%で機能が欠損していると言われています。その結果、血小板凝集能が抑制されていない症例があることが分かってきました。
評価法としては、VerifyNowなどによる血小板凝集抑制率、VASP(血管拡張薬刺激性リン蛋白質)のリン酸化などの指標がありますが、どの測定法も十分な標準化がなされていないのが現状です。