国がんとAMED 膵がん早期発見へ 新血液バイオマーカーでの実験的検診を実施、鹿児島で
公開日時 2017/06/27 03:50
国立がん研究センターと日本医療研究開発機構(AMED)は6月26日、膵がんのリスク疾患や早期膵がんを効率的に発見する検診法の開発を目指して、新しい血液バイオマーカーを用いた試験的検診を7月から鹿児島県で行うと発表した。膵がんは早期発見が困難で、他のがんに比べて非常に予後が悪い。今回、採血による効率的な検診法が確立できれば、膵がんの早期発見・早期治療につながり、死亡率の低下が期待できるとしている。
試験的検診は、鹿児島で行われる地域健康診断で実施する。被験者には、血液によるバイオマーカー検査と、バイオマーカー陽性者にはその後の造影CT検査による精密検査をセットで受けてもらう。そして、バイオマーカー陽性者の中から、どれくらいの頻度で膵がんのリスク疾患(慢性膵炎や膵管内乳頭粘液性腫瘍など)や早期膵がんが見つかるのか、その検出率を調べ、バイオマーカーの有用性を評価する。
目標参加者数は50歳以上の男女5000人~1万人。検診実施期間は7月~19年3月で、目標登録数に到達次第、終了する。
■今秋以降 鹿児島以外に拡大も
鹿児島の県民総合保健センター(日本対がん協会鹿児島支部)では精密検査受診率が高いなど検診体制が整っていることから、今回の試験的検診の実施場所に選んだが、「今秋以降、鹿児島県以外にもさらに拡大する予定」としている。
今回の試験的検診の臨床研究は、国立がん研究センター研究所早期診断バイオマーカー開発部門の本田一文ユニット長らの研究チームが実施する。AMEDの革新的がん医療実用化研究事業「血液バイオマーカーを用いた効率的な膵がん検診の実用化」の支援を受け、国がん、日本対がん協会、鹿児島県民総合保健センター、鹿児島大、鹿児島市立病院、出水総合医療センター、横浜市立大、神戸大、金沢大、滋賀医科大がチームを組んで実施する。
このバイオマーカーは、血液中の「アポリポプロテインA2(apoA2)アイソフォーム」というタンパク質。国がんの研究所や米国国立がん研究所(NCI)との共同研究において、膵がんを引き起こす可能性の高い疾患や早期膵がんを検出することの有効性が評価され、検査キットも開発されている。