厚労省 新薬10成分23品目を承認 武田の多発性骨髄腫薬ニンラーロなど
公開日時 2017/03/31 03:52
厚労省は3月30日、新薬10成分23品目を承認した。この中には武田薬品の経口投与の多発性骨髄腫治療薬ニンラーロカプセルがあるほか、塩野義製薬は▽小児AD/HD治療薬インチュニブ錠▽オピオイド誘発性便秘症治療薬スインプロイク錠――の2つの承認を取得した。
▽ニンラーロカプセル2.3mg、同3mg、同4mg(イキサゾミブクエン酸エステル、武田薬品):「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。薬効分類:429。
経口プロテアソーム阻害薬。免疫調節薬レナリドミド、副腎皮質ホルモン製剤デキサメタゾンの各経口薬と併用して用いる。ニンラーロの承認により、国内初のプロテアソーム阻害薬を含むすべて経口の3剤併用療法が可能となる。類薬にはベルケイドやカイプロリスなどがあり、ニンラーロは再発又は難治性の多発性骨髄腫に対する治療選択肢のひとつとなる。
▽インチュニブ錠1mg、同3mg(グアンファシン塩酸塩、塩野義製薬):「小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。薬効分類:1179。
シナプスに存在する受容体を介してノルアドレナリン作動性神経を活性化することで症状を改善する非中枢神経刺激薬。体重50kg未満の小児は1日1mg、50kg以上では1日2mgから投与を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、体重で規定された維持用量まで増量する。症状により適宜増減する。いずれも1日1回経口投与で使用する。シャイアー・ジャパンと共同販促する。
既承認薬には中枢刺激薬のコンサータ、非中枢刺激薬のストラテラがあり、いずれも第一選択薬に位置づけられている。厚労省の担当官によると、インチュニブもこれら既承認薬と同様に第一選択薬に位置づけられると想定されるとしている。
▽スインプロイク錠0.2mg(一般名:ナルデメジントシル酸塩、塩野義製薬):「オピオイド誘発性便秘症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。薬効分類:235。
末梢性μオピオイド受容体拮抗薬。オピオイド鎮痛薬の鎮痛作用を減弱させることなく、末梢のμオピオイド受容体に結合し、オピオイド鎮痛薬の作用に拮抗することで、副作用である便秘症状を緩和する。用法・用量は、通常、成人には1回0.2mgを1日1回経口投与して用いる、というもの。
オピオイド鎮痛薬はがん疼痛治療をはじめとする中等度から高度の疼痛管理に用いられるが、その作用機序から、便秘症を引き起こす。このオピオイド誘発性便秘症の国内推定患者数は17年度に42~47万人、このうちがん患者が30万人、非がん性慢性疼痛患者が12~17万人とされる。
▽ナルラピド錠1mg、同錠2mg、同錠4mg
▽ナルサス錠2mg、同錠6mg、同錠12mg、同錠24mg
(一般名:ヒドロモルフォン塩酸塩、第一三共プロファーマ)
:「中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。薬効分類:811。
両剤ともμオピオイド受容体作動薬。ナルラピド錠は即放性製剤、ナルサス錠は徐放性製剤。これらヒドロモルフォン製剤は海外で80年以上販売され、WHOのがん疼痛治療のためのガイドラインなどで疼痛管理の標準薬に位置付けられているが、日本では承認されていなかった。
厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発の必要性が高いと判断された薬剤。がん患者のうち、がん性疼痛のある患者の割合は慢性期で30~50%、進行期で70%以上と推定されている。がん性疼痛に対する薬物療法の基本とされるWHO方式がん性疼痛治療法を用いても10~30%の患者で疼痛が消失しないという。
▽ザルトラップ点滴静注100mg、同点滴静注200mg(アフリベルセプト ベータ(遺伝子組換え)、サノフィ):「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。薬効分類:429。
腫瘍への血管新生を阻害し、腫瘍増殖抑制作用を示すVEGF阻害薬。用法・用量は、イリノテカン塩酸塩水和物、レボホリナート及びフルオロウラシルとの併用において、通常、成人には2週間に1回、1回4mg/kg(体重)を60分かけて点滴静注する、というもの。患者の状態により適宜減量する。ヤクルト本社と共同販促する。
対象患者はオキサリプラチンを含む化学療法歴を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん患者。類薬にはアバスチンやサイラムザなどがあり、臨床上の位置付けはセカンドライン以降での治療選択肢のひとつとなる。
▽コムクロシャンプー0.05%(クロベタゾールプロピオン酸エステル、マルホ):「頭部の尋常性乾癬」を効能・効果とする新剤形医薬品。再審査期間4年。薬効分類:269。
有効成分はストロンゲストクラスのステロイド剤。1日1回、乾燥した頭部に患部を中心に適量を塗布し、約15分後に水またはお湯で泡立てて洗い流す。同成分で他社からローション剤などの剤形の製品があるが、コムクロシャンプーはシャンプーのように用いることができることから、コンプライアンスの向上などを期待して開発された。
▽ムンデシンカプセル100mg(フォロデシン塩酸塩、ムンディファーマ):「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。薬効分類:429。
選択的にリンパ球の増殖を抑制する新規のPNP(Purine Nucleoside Phosphorylase、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ)阻害薬。低分子化合物。
「末梢性T細胞リンパ腫」と「その他および詳細不明のT細胞リンパ腫」の患者数は計2000人以下と報告されており、ムンデシンの効能・効果の「再発又は難治性―」となるとさらに患者数は限定される。類薬はなく、類似の効能・効果を持つ薬剤としてポテリジオ点滴静注やアドセトリス点滴静注がある。
▽ステラーラ点滴静注130mg
▽ステラーラ皮下注45mgシリンジ
(ウステキヌマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ)
:「中等症から重症の活動期クローン病の導入療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」が効能・効果。点滴静注製剤は新投与経路医薬品、皮下注製剤は効能・効果を追加する新効能・新用量医薬品。いずれも再審査期間6年。薬効分類:399。
ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤。中等症から重症の活動期クローン病に対しては、導入療法の初回に、点滴静注製剤で55kg以下の場合は260mg、55kgを超え85kg以下の場合は390mg、85kgを超える場合は520mgを単回点滴静注する。そして、点滴静注製剤を投与8週後に90mgを皮下投与し、以降は12週間隔で90mgを皮下投与して用いる。効果が減弱した場合は投与間隔を8週間に短縮できる。
これまでは皮下注製剤のみで、効能・効果は既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬。
▽シンポニー皮下注50mgシリンジ、同100mgシリンジ(一般名:ゴリムマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の改善及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の効能・効果を追加する新効能・新用量医薬品。100mg製剤が今回新たに追加となった。再審査期間4年。薬効分類:399。
ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤。潰瘍性大腸炎に対する用法・用量は通常、成人に、初回投与時に200mg、初回投与2週間後に100mgを皮下注射する。そして、初回投与6週目以降は100mgを4週に1回、皮下注射で用いる。既存の50mg製剤では利便性が悪いため、新規格として100mg製剤を加える。なお、100mg製剤は、50mg製剤の適応の関節リウマチにも使える。
▽ケイセントラ静注用500、同1000(乾燥濃縮人プロトロンビン複合体、CSLベーリング):「ビタミンK拮抗薬投与中の患者における、急性重篤出血時又は重大な出血が予想される緊急を要する手術・処置の施行時の出血傾向の抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。薬効分類:634。
血栓塞栓症の治療や予防に用いるワーファリン(一般名:ワルファリンカリウム)に代表されるビタミンK拮抗薬の服用患者では、出血時や出血が予測される際の止血管理が重要となる。一般的には休薬やビタミンKの投与で対処するが、出血傾向の是正までに数時間以上かかる。このため、重篤出血時や緊急手術時など抗凝固状態を早急に是正する必要がある場合の十分な対処法がなかった。日本脳卒中学会が早期開発の要望を厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会」に提出し、開発の必要性が認められ、同省の開発要請を受けてCSLベーリングが開発した。
同剤は、▽ABO血液型に従う必要がない▽投与終了までに要する時間が短い(融解不要、投与容量が少ない)▽製造工程に病原体の不活化/除去工程を含むのが特徴。