製薬企業のインターネットによるソーシャルメディア（SNS）の活用が活発化しており、You TubeやFacebookによるコンテンツが製薬企業各社によって大量に生産されている。ただ、映画のアカデミー賞やゴールデングローブ賞などを受賞すればもっと脚光を浴びるのだろうが、その利用者はまだ少ないのが実情だ。とはいえ、医薬品企業のSNSは楽しめたり、ニュース性のある価値あるものもあり注目されている。

一例として、米アムジェンの生物製剤製造のビデオがある。バイオシミラー（バイオ後続品）が今後登場されることが予想されているが、このビデオは、生物製剤についてのアムジェンの専門知識・技術を訴求し、バイオシミラーを発売しようとする競合社に対し、バイオシミラーを作ることがどれだけ大変かを示唆している。

また、医薬品企業によっては、活用するSNSの幅広さを誇っている。ジョンソン・エンド・ジョンソン（J&J）は、グループだけで、2つのYou Tube、４つのTwitter、2つのブログを持っており、おそらく業界一だろう。また、イーライリリーは、1つのブログしか持たず、TwitterやFacebookは、パブリックポリシー、法的関連、企業問題などの記述に集中している。

◎SNSに対するFDAの見方

米食品医薬品局（FDA）がSNSについてのガイダンスを発行すれば様相は変化しそうだ。医薬品企業にとっては、SNS上で医薬品のリスクを伝達すること、第3者とのコミュニケーションのモニタリングをすること、他のサイトへリンクすること－などの問題をどのように取り扱うかが課題となる。

FDAは、2009年11月にSNSの規制について2日間の公聴会を開催した。その後、FDAの官僚は、ガイダンスの作成は差し迫っているといい続けているが未だに作成されていないのが現状だ。

FDAは、製薬企業に文書で、オンライン領域におけるガイダンスによるルールを特定の活動に対して適用すると通知した。この関連で、特に目立つのは、4年前、FDAがインターネット検索エンジンで製薬企業14社が提供した広告で製品のリスク情報を掲載しなかったことに言及し、FDAの関心がどこにあるかを示唆したことだ。企業のSNSを監督するFDAは、サイトは消費者とコネクトするために進化しなければならないと話している。

◎製薬企業各社の試み　今後のFDAの出方に注目も

SNSの別の活用法として注目されたのが2012年のグラクソスミスクライン（GSK）だった。2012年ロンドンオリンピックにおけるアンチドーピングについての公式試験サービスのプロバイダーとして、Facebook、Twitter、You Tube、Flickrを活用した。GSKはその一環として、英国で同社初の医療用医薬品のTVCMを展開した。金メダル受賞者Marlon Devonish選手を出演させた。CMは同選手に、「観衆のみが私の薬だ」と言わせ、アンチドーピングを訴えた。

GSKがYou Tubeにその広告を流してから今日まで6万4000回視聴され、GSKの他のネット上のビデオより多くなった。同社は、2008年8月に初めてYou　Tubeにビデオを流し始め、ブログでは企業トピックや従業員の話を掲載した。2009年1月にFacebookのページを開始、2011年3月にはFlickrに写真を掲載している。

一方、米ファイザーは、臨床試験を実施するための新しい方法を生み出すためにSNSの活用を模索している。同社は、2011年に過活動膀胱治療薬Detrol LA(酒石酸トルテロジン)の「遠隔臨床試験」（被験者が各地に分散）で患者を募集するパイロットプログラムを実施した。しかし、患者登録が不十分なため、2012年6月に中止された。だが、被験者が各地に分散したままで、登録、同意、モニタリングが、試験実施者の場所ではなく、各地に分散したスマートホンやコンピュータ経由で行われた初めての試みとなった。

同プログラムの目的は、試験参加者と関わり、試験を効率的に実施することだった。600例の登録予定だったが、数10しか募集できなかった。しかし、このプログラムの経験は、ネットワークによって試験が実施可能なことを示したので、2013年には別の「遠隔臨床試験」を実施することが有意義かどうか評価する考えだ。

製薬企業各社は様々な試みを行っているが、本格参入についてはまだ慎重なところが多い。ファイザーのBob Libbeydデジタル上級部長は、「我々は実際、ガイダンスがどうなるか様子見をしなければならない」と話している。今後の展開は、FDA次第と言うわけである。

The Pink　Sheet　　2月25日号