日本リウマチ学会 経口抗リウマチ薬ゼルヤンツで要望書 安全性を懸念 ファイザーに慎重対応求める
公開日時 2013/04/10 04:01
日本リウマチ学会は、ファイザーが発売を予定している経口タイプの抗リウマチ薬ゼルヤンツ錠(成分名:トファシチニブクエン酸塩)について、安全性に懸念を表明する文書を作成し、同社と厚生労働省に提出していたことを同学会ホームページで公表した。具体的には、▽米国治験で感染症や発がんリスクが示されている▽日本は適応範囲が広い――ことなどから安全性を懸念し、ファイザーに慎重な市場投入を求めた。これに対してファイザーは、同薬の使用施設・医師を限定することなどを文書で回答し、適正使用の徹底に向けて取り組む姿勢を表明した。日本リウマチ学会は、同薬の発売後も適正使用について厳しくモニタリングしていく意向だ。
ゼルヤンツ錠は、関節リウマチに伴う炎症に関与する細胞内のシグナル伝達経路であるヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーを阻害する初のJAK阻害薬で、細胞外でサイトカインに作用する生物学的製剤とは異なる作用機序を有する。3月末に承認され、現在、薬価収載の手続き中。発売後は武田薬品とコ・プロモーションする。
日本リウマチ学会は、ゼルヤンツ錠が審査中の2月にファイザーと厚労省に対して「トファシチニブの関節リウマチにおける承認審査に対する要望」(以下、要望書)を提出した。この要望書に対するファイザーの回答は、薬食審・第二部会で同薬が承認了承された翌日の3月14日に提出された。そして、これらのやり取りを同学会が4月2日に公開した。
◎ファイザー 使用施設と医師を限定する
学会の要望書によると、ゼルヤンツ錠の米国の治験では、感染症リスクや発がんリスクが示されており、生物学的製剤とは異なる副作用が想定される。米国では「メトトレキサートで効果不十分または不耐容で中等度から重度」の適応で2012年11月に承認された。学会は、米国において生物学的製剤の効果不十分な症例に使用されている状況を把握している。
これに対して日本では、治験プロトコルから「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」の効能効果で承認され、米国よりも広い適応となっている。また、同薬が専門医以外でも導入しやすい経口薬であることから、同学会では、慎重な導入および市販後調査の徹底が困難と判断し、要望書の提出に至った。
この要望書に対してファイザーは、ゼルヤンツ錠の使用施設を「全例調査への協力施設」「緊急な副作用処置が実施可能な施設」に限定し、使用医師も「日本リウマチ学会専門医」「日本整形外科学会認定リウマチ医」、「治験参加医師」のいずれかに該当し、生物学的製剤の使用経験が豊富で全例調査への協力、販売会社との面談が可能な医師に限定するとした。また、ゼルヤンツ錠を流通管理品目とし、調剤薬局を含めて納入制限も徹底するとしている。
なお、全例調査では4000例を対象として3年間追跡し、有効性・安全性、承認用量について検証する。さらに悪性腫瘍の有無の確認のために、投与中止例についても追跡するほか、2000例の対照群も設定するという。
このほかファイザーは、添付文書に「警告」を設定し、生物学的製剤と同等以上の注意喚起を行うとした。