厚労省は3月25日、新薬18成分23品目を承認した。この中には既存治療で効果不十分な関節リウマチに対する経口JAK阻害薬ゼルヤンツ錠(ファイザー)や治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん治療薬としてスチバーガ錠(バイエル薬品)が含まれる。5~6月に予定される薬価収載を経て発売となる。
承認された新薬は次のとおり。
▽アーゼラ点滴静注液100mg、同1000mg(一般名:オファツムマブ遺伝子組換え):「再発又は難治性のCD20陽性の慢性リンパ性白血病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。オーファンドラッグ。再審査期間10年。
抗CD20モノクローナル抗体だが、従前の薬剤と作用が異なり、白血病細胞の細胞膜に存在するヒトCD20分子の細胞外にある小ループと大ループの両方に結合し、白血病細胞を破壊することで効果を発揮するという。
国内での治験症例が極めて限られていることから「製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること」との承認条件が付与されされている。
そのため同社としては「造血器悪性腫瘍の治療に対して、十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例のみに行われるよう」対応する。
▽アコファイド錠100mg(成分名・アコチアミド塩酸塩水和物、会社名・ゼリア新薬):「機能性ディスペプシアにおける食後膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。1回1錠を1日3回投与する。
同薬は、消化管運動の亢進に重要な神経伝達物質アセチルコリンの分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼを阻害し、胃運動の低下や胃からの食物排出遅延を改善する。類薬にはガスモチン、ガナトンなどがある。アステラス製薬との共同開発で、共同販売の予定。
▽プラリア皮下注60mgシリンジ(デノスマブ遺伝子組換え、第一三共):「骨粗鬆症」の効能・効果を追加とする新効能・新用量医薬品。海外60カ国以上承認済み。再審査期間は残余(2020年1月17日まで)。6か月に1回皮下注する。
同薬はヒトモノクローナル抗体で、破骨細胞の形成や機能にかかわる蛋白質「RANKリガンド」を標的とする世界初の抗体医薬品。同じ成分の120mg製剤は「ランマーク皮下注120mg」の製品名で12年4月から多発性骨髄腫による骨病変および固形がん骨転移による骨病変の治療で使用されているが、同年9月には同剤による低カルシウム(Ca)血症の「安全性速報」(ブルーレター)で注意喚起が行われた。低Ca血症への治療で使用されるCaおよび天然ビタミンDの医療用医薬品が現時点ではなく、一般用医薬品で代替されていたが、今回、プラリアの承認と合わせて配合剤(デノタス)も承認されている。
▽レグテクト錠333mg(アカンプロサートカルシウム、日本新薬):「アルコール依存症患者における断酒維持の補助」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。1回2錠を1日3回投与する。
エタノール依存で増加したグルタミン酸作動性神経の活動を抑制。類薬の抗酒薬にはジスルフィラム、シアナミドがあるが、中枢神経に作用して飲酒の欲求を抑える国内初の薬剤。10年5月に厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」から開発要請されていた。
▽ボルベン輸液6%(ヒドロキシエチルデンプン130000、フレゼニウスカービジャパン):「循環血液量の維持」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
▽エボルトラ点滴静注20mg(成分名:クロファラビン、ジェンザイム・ジャパン):「再発または難治性の急性リンパ性白血病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。オーファンドラッグ。再審査期間10年。
DNA合成阻害剤で類薬はネララビン。同剤は、厚労省の未承認薬使用問題検討会議で取り上げられ、開発支援品目として助成金を受け開発されたもの。
▽ノーモサング点滴静注250mg(ヘミン、シミックホールディングス):「急性ポルフィリン症患者における急性発作症状の改善」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。オーファンドラッグ。再審査期間10年。
ポルフィリン症は、ヘムの合成経路にかかわる酵素の遺伝子異常に引き起こされる疾患で、1920年から2008年の間に国内351例の報告がある。本来体内に蓄積されないはずのヘムの前駆体やポルフィリン体の過剰産生により、急性ポルフィリン症は、腹痛や便秘、手足のしびれや麻痺といった神経症状を引き起こす。同剤は、ヘムの前駆体やポルフィリン体の過剰産生を抑制し、症状を改善する。海外では、31カ国で肝性ポルフィリン症患者に承認済み。同剤は、厚労省の未承認薬使用問題検討会議で取り上げられ、開発支援品目として助成金を受け開発されたもの。
▽ノウリアスト錠20mg(成分名:イストラデフィリン、協和発酵キリン):「レボドバ含有製剤で治療中のパーキンソン病におけるウェアリングオフ現象の改善」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
レボドバ製剤の効果が次第に薄れてくるウェアリングオフ現象を改善するため、この薬剤を併用する。
▽オングリザ錠2.5mg、同5mg(サキサグリプチン水和物、大塚製薬):「2型糖尿病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
現在併用が想定されるすべての既承認の経口血糖降下薬との併用が可能。通常5mgを1日1回投与。国内販売は協和発酵キリンが行う。
▽ネオキシテープ73.5mg(オキシブチニン塩酸塩、久光製薬):「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁」を効能・効果とする新投与経路・新効能医薬品。再審査期間6年。
同成分で経口剤はあるが、貼付剤は初めて。貼付剤によって薬物血中濃度の安定化、副作用の軽減を期待する。1日1枚。
▽メトレレプチン皮下注用11.25mg「シオノギ」(メトレレプチン遺伝子組換え、塩野義製薬):「脂肪委縮症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。オーファンドラッグ。再審査期間10年。
脂肪委縮症は、脂肪組織の消失や著しい減少を特徴とし、それにより脂質や糖代謝の異常などを引き起こす希少疾患。推定国内患者数は100人程度。
▽イノベロン錠100mg、同200mg(ルフィナミド、エーザイ):「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないレノックス・ガストー症候群における強直発作及び脱力発作に対する抗てんかん薬との併用療法」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品・オーファンドラッグ。再審査期間10年。
適応症は、就学前から発症する難治性のてんかんで、推定国内患者数は3600人程度。厚労省が開発が必要と判断し、開発助成が受けられる開発支援品目であった。
▽沈降インフルエンザワクチンH5N1「生研」1mL(成分名:沈降インフルエンザワクチン(H5N1株)、会社名:デンカ生研):「新型インフルエンザ(H5N1)の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。オーファンドラッグ。再審査期間10年。
発育鶏卵を用いて増殖したパンデミック用の不活化全粒子ワクチン。
▽ゼルヤンツ錠5mg(トファシチニブクエン酸塩、ファイザー):「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
細胞内のチロシンキナーゼであるJanus Kinase(JAK)ファミリーを阻害する。リンパ球の活性化、機能分化および増殖に重要な役割を果たすシグナル伝達を抑制することで抗リウマチ作用を発揮する。通常5mgを1日2回経口投与する。
▽アクテムラ皮下注162mgシリンジ、同皮下注162mgオートインジェクター(トシリズマブ遺伝子組換え、中外製薬):「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」を効能・効果とする新投与経路医薬品。再審査期間6年。
既存は点滴静注用製剤。生物学的製剤で、2週間の間隔で皮下注する。
▽アラベル内容剤1.5g(アミノレブリン酸塩酸塩、ノーベルファーマ)、アラグリオ内容剤1.5g(同、SBIファーマ):「悪性神経膠腫の腫瘍摘出術中における腫瘍組織の可視化」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。オーファンドラッグ。再審査期間10年。
新しい診断薬で、アミノレブリン酸代謝物が腫瘍細胞に蓄積し、青色光線をあてると腫瘍細胞が赤色の蛍光を発するというもの。悪性神経膠腫は悪性度の高い脳腫瘍で、推定国内患者数は2000人程度。手術時の麻酔導入3時間前に経口投与する。
▽スチバーガ錠40mg(レゴラフェニブ水和物、バイエル薬品):「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
腫瘍の血管新生や増殖に関与する各種キナーゼのリン酸化を阻害し、腫瘍の増殖を抑制する。通常1日1回160mgを食後に3週間連日投与し、1週間休薬する。バイオマーカーの診断などは伴わないが、手術や他の薬物治療で効果不十分な症例が対象となる。
▽スタリビルド配合錠(エルビテグラビル、コビシスタット、エムトリシタビン、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩、日本たばこ産業):「HIV-1感染症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤。エルビテグラビル、コビシスタットの2成分が新有効成分に該当。オーファンドラッグ。再審査期間10年。