厚生労働省の薬食審医薬品第二部会は3月13日、新薬6製剤の承認の可否を審議し、承認を了承した。この中には既存の経口薬で効果不十分な関節リウマチへの経口JAK阻害薬であるゼルヤンツ錠(申請:ファイザー)、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん治療薬としてスチバーガ錠(バイエル薬品)が含まれる。承認が了承されたのは次のとおり。
【審議品目】
▽沈降インフルエンザワクチンH5N1「生研」1mL(成分名:沈降インフルエンザワクチン(H5N1株)、会社名:デンカ生研):「新型インフルエンザ(H5N1)の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。オーファンドラッグ。再審査期間10年。
発育鶏卵を用いて増殖したパンデミック用の不活化全粒子ワクチン。
▽ゼルヤンツ錠5mg(トファシチニブクエン酸塩、ファイザー):「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。海外承認は米国のみで12年11月に承認された。欧州では審査中。
細胞内のチロシンキナーゼであるJanus Kinase(JAK)ファミリーを阻害する。リンパ球の活性化、機能分化および増殖に重要な役割を果たすシグナル伝達を抑制することで抗リウマチ作用を発揮する。通常5mgを1日2回経口投与する。
MTXを中心とした既存の経口薬で効果不十分な関節リウマチへの新規経口薬としては、注射剤の生物学的製剤が使用されているが、ゼルヤンツ錠が経口薬であることから、審査中には「従来の生物学的製剤と同様に感染症や発がんリスクを伴う、同等の注意喚起が必要」、「経口薬であっても安易な使用は避けるべき」などの点が指摘された。
▽アクテムラ皮下注162mgシリンジ、同皮下注162mgオートインジェクター(トシリズマブ遺伝子組換え、中外製薬):「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」を効能・効果とする新投与経路医薬品。再審査期間6年。海外承認はなく、欧米で12年12月に承認申請された。
既存は点滴静注用製剤。生物学的製剤で、2週間の間隔で皮下注する。
▽アラベル内用剤1.5g(アミノレブリン酸塩酸塩、ノーベルファーマ)、アラグリオ内用剤1.5g(同、SBIファーマ):「悪性神経膠腫の腫瘍摘出術中における腫瘍組織の可視化」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。オーファンドラッグ。再審査期間10年。欧州と韓国で承認済み。
新しい診断薬で、アミノレブリン酸代謝物が腫瘍細胞に蓄積し、青色光線をあてると腫瘍細胞が赤色の蛍光を発するというもの。悪性神経膠腫は悪性度の高い脳腫瘍で、推定国内患者数は2000人程度。手術時の麻酔導入3時間前に経口投与する。
▽スチバーガ錠40mg(レゴラフェニブ水和物、バイエル薬品):「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。米国では結腸・直腸がんの適応で12年9月に承認取得。欧州では審査中。
腫瘍の血管新生や増殖に関与する各種キナーゼのリン酸化を阻害し、腫瘍の増殖を抑制する。通常1日1回160mgを食後に3週間連日投与し、1週間休薬する。バイオマーカーの診断などは伴わないが、手術や他の薬物治療で効果不十分な症例が対象となる。
▽スタリビルド配合錠(エルビテグラビル、コビシスタット、エムトリシタビン、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩、日本たばこ産業):「HIV-1感染症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤。エルビテグラビル、コビシスタットの2成分が新有効成分に該当。オーファンドラッグ。再審査期間10年。米国・カナダで承認済み。1日1回食事中または食直後に1錠服用する。
【報告品目】
▽カンプト点滴静注などイリノテカン塩酸塩水和物(ヤクルト、第一三共、沢井製薬、大鵬薬品工業、ホスピーラ・ジャパン):「小児悪性固形腫瘍の効能・効果を追加とする新効能・新用量医薬品。
▽ネオーラルカプセル10mg、同25mg、同50mg、同内容液10%(シクロスポリン、ノバルティスファーマ)、シクロスポリンカプセル10mg「マイラン」、同25mg、同50mg、同細粒17%(同、マイラン製薬):「その他の非感染性ぶどう膜炎(既存治療で効果不十分であり、視力低下のおそれのある活動性の中間部または後部の非感染性ぶどう膜炎の場合)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
▽注射用エンドキサン100mg、同500mg(シクロホスファミド水和物、塩野義製薬)、ダカルバジン注用100(ダカルバジン、協和発酵キリン)、オンコビン注用(ビンクリスチン流酸塩、日本化薬):「褐色細胞腫」の効能・効果を追加とする新効能・新用量医薬品。
▽ハイドレアカプセル500mg(ヒドロキシカルバミド、ブリストル・マイヤーズ):「本態性血小板血症、真性多血症」の効能・効果を追加する新効能医薬品。
報告品目は全て、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発が求められ、厚労省が当該社に開発要請し、公知申請されていたもの。特例ですでに保険適用されている。